志摩統治の始まり

 波切城を制圧した我々は、波切城に最低限の兵を置き、九鬼家の水軍衆の家族を引き連れ、鳥羽湊へ戻った。水軍衆の家族は鳥羽で生活させ、人質とする。

 同盟軍の多少の狼藉は起こっていたようだが、乱妨取りは許可していなかったので、鳥羽湊も落ち着き、住民たちは表面上は従っている。


 わしは、鳥羽城に志摩統治の政庁を置くこととし、平井宮内卿は鳥羽周辺の勢力から制圧していく様だ。

 平井宮内卿を軍政官として志摩国統治を任せようと思っているが、志摩国制圧までは、わしが統治することにする。


 志摩国の開発は、伊勢神宮の御料地を除く、全住民を動員しての開発計画を導入する。

 伊勢神宮の神饌は御料地で作っていただくことにする。


 志摩の開発として、海産物は干物作り、海苔作り、塩作りを計画している。美濃は海産物が取れないので、周辺の領主たちが買ってくれるだろう。

 農産物としては、茶、蜜柑、サトウキビを育てようと考えている。

 茶は宇治の茶農家で、借金持ちの借金を肩代わりして確保してある。

 蜜柑の苗木は島津、サトウキビの苗は琉球に用意してもらえるよう頼んでいた。

 出来れば、オリーブも育てたいが、手に入るだろうか?

 米が取れるところが少ないので、米が作れるところは引き続き作ってもらう。


 そして、鵜飼孫六には、御倉衆を連れてきて貰っていた。

 御倉衆も人が増えているが、もっと人員が欲しいくらいである。

 今回は、甲賀衆の女性などにも来てもらっている。

 御倉衆に新たな重要任務を与えるのだ。鳥羽城の側に、相島なる小さな島がある。そこに鳥羽の御倉所を設置し、真珠の養殖をさせるつもりだ。

 志摩の海女たちに、アコヤ貝、クロチョウ貝、シロチョウ貝などの真珠貝を捕まえさせていた。

 そこに、関の刀工に作らせていたメスやピンセットを使い、2㎜ほどの外套膜片と核となるドブガイの球を、外套膜片、核の順番に貝の生殖巣に挿入する。

 核については、以前から、伊勢のドブ貝を集め、真珠層を丸く球状にした物を、津島などの職人たちに作らせていたのだった。

 口で言うのは簡単だが、やってみると難しい。

 外套膜片を切り取るために処理した貝で、貝の構造を説明する。まぁ、何となく分かってくれたようだが、実際に核入れの作業をしてみると難しい。

 貝の口を開けて固定する器具が必要だな。何とか入れられたが、上手くいくかどうか。

 御倉衆では、登用した女性たちが割合上手に出来ていた。

 核入れをした際に出来た切開傷を回復させるため、海中の籠に入れて2~3週間養生させる。その後、潮の流れが良い沖に出し、筏に吊るして真珠を育てさせる。その間、貝殻についたフジツボや海藻を掃除したり、水温が下がったら、温かい水域まで筏を移動したりしながら浜揚げの時期まで育てるのだ。

 御倉衆には色々なやり方で試してもらうつもりだ。ドブ貝の球加工も御倉衆にさせることとしよう。

 真珠の核入れの作業に必要な器具も、現場の意見を取り入れて作成せねばならないな。


 鳥羽湊も襲撃後の混乱も収まりはじめ、商人などを集めて、神宮の統治下に入ったことを説明する。

 橘家の水軍衆は美濃へ移送されたため、鳥羽湊一帯の警戒等は、佐治水軍が行っている。

 佐治水軍の鳥羽湊での拠点を作り、委託した業務を円滑に遂行してもらう。


 早く志摩国全域を統治下に置き、志摩国を発展させたいものだ。

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