志摩侵攻
とうとう、雑賀衆の船が蟹江に到着した。
雑賀衆が到着するまでの間、我々も100の常備兵を蟹江に置き、商人の船に乗せるなどして、船に乗る訓練をさせていた。
常備兵の殆どが美濃出身のため、船酔いする者もいたが、何とかなりそうではある。
常備兵の指揮は、平井宮内卿が軍奉行として率い、30名ずつを大島甚六、楠木十郎、神代勝利が小隊長として率いている。
神代勝利は大島甚六から影響を受けたのか、仕官を申し出ていた。すぐに頭角を表すとともに、人望もあるので、小隊長として扱っている。
当家の常備兵は雑賀衆とともに、湊衆の船に乗り込む。
弾正忠家の兵は、佐治水軍の船に乗り込んだ。弾正忠自ら率いておる。
西村・雑賀・織田・佐治連合軍は鳥羽湊へ船を進めた。
鳥羽湊が見えてくると、鳥羽湊は大騒ぎになっていた。橘家の船が止まるように指示してくるが、無視をする。橘家の船は、兵を乗せていない佐治水軍が相手をしてくれる。
鳥羽湊に接岸した我々は、急ぎ船を降りる。平手宮内卿は、常備兵と雑賀衆を集めると、橘家が本拠を構えている取手山砦へと兵を進めた。
弾正忠家の兵は、鳥羽湊及び鳥羽城を占拠する。鳥羽湊の町並みでは怒号が響くが、弾正忠家の兵が鎮圧していく。
取手山砦へ進軍した平井宮内卿は、砦を包囲していた。砦は徹底抗戦の様子を見せてはいるものの、我々の急襲に、明らかに動揺している。
兵たちに降伏を促す言葉を斉唱させる。命と私有財産は保護すると言った内容だ。橘家の財産などたかが知れているから、興味はない。
すると、取手山砦の櫓に、橘家当主の橘監物成忠が現れた。
「どこの軍勢かは知らぬが、鳥羽を襲うとは、ただでは済まぬぞ!北畠や神宮が黙っておらぬからな!」
北畠と神宮の威を借り始めて、小物臭がプンプンする。神宮から許可は貰ってるし、北畠はウチの妻の養子先の分家の分家なのですけど。
「たわけ者が!神宮から其方たちの討伐の許可は得ておる!
神宮は其方等が献納せんことにお怒りゆえ、我等を志摩国の代官に任ぜられた。神宮の代官に対して、北畠がしゃしゃり出てこれるのか?
命惜しくば、降伏せよ!今なら、命と銭等の財は助けてやろう」
取り敢えず、神宮から志摩国の代官の許可を貰ってるんだぞと改めて降伏勧告をする。
志摩国の代官として認められていると聞くと、明らかに橘家の連中は動揺していた。
鳥羽湊を粗方制圧したのか、弾正忠が後詰めとして来てくれると、観念したのか、橘監物は降伏したのであった。
鳥羽における戦は終結し、志摩国の地頭たちの盟主である橘家は滅びることとなった。橘監物以下の水軍衆は、取手山砦にて拘束している。
同盟軍も乱妨取りなど行わなかったようで、住民への被害は少ないようだ。
翌日には、鳥羽湊一帯を弾正忠に任せ、志摩で勢力を増している九鬼氏の拠点である波切城へ進軍する予定だ。
鳥羽城において、平井宮内卿から作戦の説明がなされる。
西村・雑賀衆で陸を包囲し、佐治水軍で海上封鎖をするのだ。鳥羽の戦での損耗も報告され、当家の常備兵は怪我はあったものの死者は出ていなかった。
雑賀衆は数名の死者が出ているので、その分は報いるとしよう。
翌日、早朝に我々は雑賀衆の船に乗船し、佐治水軍とともに波切城へと向かう。
九鬼の水軍の船が少数、警戒に出ていたが、我々の船を観ると、慌てて波切城へ戻っていった。
然したる抵抗を受けることもなく、陸上部隊は上陸を終え、波切城を包囲する。佐治水軍もまた海上から包囲した。
包囲し、降伏を呼び掛けると、九鬼家の当主である九鬼泰隆は素直に降伏に応じた。
もっと徹底抗戦するかと思ったが、理由を聞くと、鳥羽が襲撃されたのは知っていたが、波切に来るまで時間がかかると思い、その間に準備をしようと思っていたのが、鳥羽陥落の翌日に攻めてくるとは思わなかったらしい。
勝ち目もないから、潔く降伏したとのことであった。
こうして、志摩国の雄である橘家と九鬼家を急襲して降伏させることが出来た。
志摩国の盟主である橘家を失ったことで、志摩国の地頭たちが結束する可能性は下がった。
この後は、それぞれの地頭を各個撃破していくこととなる。
大島甚六の小隊は、負傷者と志摩の水軍衆を連れて美濃へ戻ってもらうこととなった。
志摩の水軍は、わしに服従しているとは言い切れないので、海軍創設のためにも、再教育が必要となる。
そのため、志摩の水軍衆には、逐次美濃へ送り、再教育を受けてもらうのだ。海では比類なき水軍衆も、海のない山奥では好き勝手出来まい。
大島甚六と水軍衆を美濃へ送るとともに、平井宮内卿に志摩国の制圧を命じるのであった。
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