琉球から船が帰って来た

 妻木殿のところで窯作りが終わった頃、琉球に派遣していた船が帰って来たとの連絡が、津島から届いた。

 大橋殿はかなり急いで知らせてくれたようで、わしも供を連れて、急いで津島へ向かう。

 大橋殿は、既に蟹江へ向かったようなので、わしらも蟹江へ移動した。

 蟹江に着いたら、弾正忠が既に到着していた。弾正忠は平手五郎左衛門殿と話している。

 わしに気付いた馬路宮内が帰って来た旨を報告してくる。簡易的な報告だったので、詳しくは美濃に帰ってから聞くことにする。


 その後、弾正忠、大橋殿と、今回の琉球までの交易について話をすることとなり、蟹江城に入ることとなった。

 話し合いをすることは分かったのだが、何故か佐治対馬守殿もいる。

 弾正忠に何故いるのか、こっそり聞くと、関銭の関係でいくら払うかを話し合わなければならないらしい。

 要は、積んでる荷で価格が決まるということで、伊勢湾の海上交通を支配する佐治家に嘘を吐く訳にはいかないのだそうだ。


 弾正忠、平手殿、佐治殿、大橋殿と随行した商人、わし、黒田下野守、平井宮内卿、馬路宮内の参加者で話し合いが始まる。

 雑賀の湊衆は自分のところの交易船は、雑賀に帰してしまったので参加しない。

 まずは、今回の交易品の目録と、津島の相場の概算の金額について報告を受ける。かなりの金額なので、みんなでビックリすることとなった。

 そこから、弾正忠家・大橋家と佐治家の関銭バトルが始まることとなった。

関銭は、ウチと弾正忠家の折半なのだが、交易品の金額が莫大なので、弾正忠家に立て替えてもらうしかないため、バトルには参加しない。

 何とか、お互いに妥協出来る金額になったようで、後日、大橋家から払われるようだ。


 関銭の金額について話し合いが終わると、佐治殿には、お引き取り願った。佐治殿、関料はちゃんと払うんだから、そんな恨めしい顔をしないで貰いたい。


 次は、交易品の分配についてである。

 それぞれが出資した額と、用意した品の売却額と胡椒、蘇木、象牙、香木、砂糖、薬種、明の製品の購入額などから、大橋殿が計算してくれるらしい。

 ウチとしては、どうせ美濃に堂々と持ち帰れないので、大橋家に売るつもりだが、各地に贈り物で贈る分は手に入れたい。ウチで使うのは胡椒と砂糖ぐらいかな。


 伊勢神宮への寄進と献上品は、ウチと弾正忠家の合同で出すことで決まり、両家が必要とする品々を、平手殿、黒田下野守、大橋で決めてもらった。

 何処に何を贈るかは、各家の家老・家宰が掌握済みなので、大橋殿に、価値などを確認してもらう。


 その間、わしは弾正忠と話をしていた。送り役の平手殿が帰って来たので、いよいよ、弾正忠家との婚姻を結ぶこととなる。

 日取りは既に決めていたので、予定通りの日取りになりそうだ。また、婚姻によって同盟を結ぶことを再確認する。

 そこで、わしは志摩を攻めたいことを話し、伊勢神宮の承諾を得ているので協力してくれる様に頼んだ。

最初は驚いていたが、伊勢神宮が承諾しているならと渋々承諾してくれたが、佐治水軍とも話し合わなければならないらしく、後日に改めて話し合うこととなった。

 そして、南蛮についても問い詰められることとなった。


 「庄五郎、御主は南蛮まで手を伸ばすつもりか?」


 「先程、馬路宮内から報告を受けたが、琉球でバレてしまったようだな。

 その通りよ。南蛮と交易したいのだ」


 本当は南蛮との交易が目的では無いけどな。


 「足利家や細川家にバレると厄介だぞ」


 「日ノ本が国交を結んでいる国ならいざ知らず、国交を結んでいない国と交易をしたら問題なのか?」


 「・・・・。」


 弾正忠は言葉に詰まってしまったようだ。


 「毒を食らわば皿までよ。わしも噛ませろ」


 弾正忠も乗っかろうとするとは意外だったな。

 弾正忠も共犯にすれば、途中で裏切ろうとはするまい。仕方ないから混ぜてやるとするか。

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