モフモフは心の栄養分

 今日は、津島に来ている。大橋家に以前から猫が飼いたいから、猫を飼っている家を教えて欲しいと言っていたのだ。

 すると、津島で猫を飼っている商家があるそうなので、仔猫が生まれたら、連絡をくれることになっていた。

 先日、仔猫が生まれたらしく、乳離れが終わったと言うことで、貰いに行くことにしたのだ。

 その商家に行くため、大橋家を訪れると、何故か弾正忠もいる。暇なのだろうか?

 一緒に猫を観に行くらしい。前世から猫至上主義者なので、猫の素晴らしさを弾正忠に熱く語っていたら、弾正忠のヤツがドン引きしておる。何かおかしいこと言っただろうか?


 仔猫は五匹おり、その内二匹はその家で飼うようだ。

 残りの三匹を観ると、三毛猫の雌と、黒猫に見えるが口元が白く髭のようになっている雄、茶白の雌がいる。

 わしは、三毛猫の雌と黒い雄を譲り受けることにした。

 茶白の雌だけが余ることとなってしまったが、側にいる弾正忠が貰うと言い始めた。わしの布教の成果かな?

 譲ってくれた商家に礼金を払い、大橋家に戻ることにした。大橋殿に、他の家で仔猫が生まれたら、譲って貰えるようお願いする。


 「そんなに猫を飼ってどうするのだ?」


 弾正忠が茶白の仔猫を抱えながら尋ねてくる。


 「船に乗せるのだ。船に潜む鼠退治に使うのよ」


 「船に乗せるだと?鼠退治に猫を乗せるなど、勿体無いことするのか?」


 この時代の猫は、金持ちの愛玩動物だから、領主には鼠退治をさせるなんて発想が無いのだろう。

 弾正忠家は遠洋航海するような船は持ってないしな。遠洋航海における鼠の恐ろしさを伝えるとともに、猫の有用性を語ると、一応の納得はしていた。

 因みに、外地で逃げて繁殖し、生態系を破壊することがないよう、雄猫しか乗せてはいけない規則にしないといけないな。


 中井戸村に帰り、仔猫たちに名前を付けることにした。

 三毛猫の雌は「タマ」にしよう。黒い雄は、口元の白がカイゼル髭のように見えるから、「カイゼル」だな。

 取り敢えず、餌は茹でた肉を解して粥に混ぜてあげた。

 大島甚六や多羅尾光俊は、珍しそうに猫を眺めている。平井宮内卿と黒田下野守が、紐を着けて籠に入れて飼わないのか?と言ってくるが、紐を着けたら鼠取りが出来ないだろ。

 取り敢えず、箱を作って、余った毛皮を敷いてやると、二匹はそこで寝ていた。トイレはその内、そこら辺でするだろ。

 日本家屋だと外に出るのを防ぐことは無理だろうから、自由にさせておく。


 美濃柴犬を猟犬で二匹飼っているが、「松」と「竹」はすっかり猟犬になってしまったので、従順で大人しい。大島甚六や川俣十郎と狩りに行くときに連れている。

 しかし、猟犬になってしまったので、愛玩動物らしさが全く無い。

 なので、雌の淡赤の美濃柴犬を譲り受け、「梅」と名付けることにした。「梅」は愛玩犬として育てることにしよう。


 先年、猪、鹿、羚羊の子供を捕まえて、牧場を作ったのは良いものの、冬が迫り、餌が無くなると、大食いの猪の餌が無くなってしまうので、さっさと冬の食料にしてしまった。

 鹿と羚羊は、樹皮や落ち葉でも生きていけるので、そのまま飼おうと思ったのだが、両方を飼うほどの落ち葉を確保しなかったので、毛を活用出来そうな羚羊を残すことにし、鹿にも冬の糧となってもらった。

 そんな羚羊の世話をしているが、毛がモフモフしていて気持ちいい。断じてモフモフしたいから残した訳ではない。

 櫛でブラッシングして抜けた羚羊の毛は、一応貯めてある。貯まったら、フェルトにしたいのだが、そのためには石鹸を作らないといけないので、暫くは貯めておくだけになりそうだ。

 ジビエ牧場は、猪と鹿の子供をある程度大きくするのは有用かもしれないな。

 羚羊は毛を取るために、数を増やしても言いかもしれない。


 取り敢えず、わしの周りにモフモフが増えて、とても幸せな気分である。

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