第11話カフェオレでなくとも甘いものは甘い


私は、平静を装って言って見た。


上念さんからおごってもらい続けてきたブラックコーヒーについて文句を言って、恥じしらずのついでに告白までしちゃいますよ、というような、よくわからない理由づけを自分の中でしてから、言ったんだ。


味覚の異なる私たちは、同じブラックコーヒーを同じように美味しいとは思えないけど、だからといって分かり合えないなんて決めつけちゃいけない。


分かり合うために努力することはできるもんね。



上念さんは、耳たぶまで真っ赤になった。



「なんか、立場、逆転みたいだね……。」


そう言って笑う彼。


「僕の奥さんになってくれた時のために、本当に好きな飲み物、教えてくれる?」



私は彼に幸せいっぱいの心を届ける。


「本当は私、砂糖とミルクたっぷりの、あったかいカフェオレが好きです。」



「そっか。わかった。これからは、それにするな。」



そう言って私たちは屋上の欄干にもたれ、二人で肩が触れ合うくらいにちょっとだけ寄り添って、二つおそろいに冷めかけたブラックコーヒーをすすった。



砂糖もミルクも入っていないのに、その時飲んだコーヒーは、ほんのりと甘くておいしかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブラックコーヒーと甘いカフェオレ おしゃれ泥棒 @umum

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ