可燃ごみの日

ひつじのまくら

可もなく不可もなく

今日は確か、可燃ごみの日だった気がする。


携帯のアラームは規則的にリズムを刻んで、耳元で鳴り続けている。

いつもと同じ朝

いや、少し違うか。

ダブルベッドの大きく空いたスペースに手をあててみる。

ひんやりと冷たいそのシーツは、わたしの手の熱を吸い取って、離してくれない。


1ヶ月前に買ったばかりなのにな


そう考えながらなまぬるくなったシーツとわたしの手はお別れを告げた


まだ冷たい空気がピリリと肌を突き刺してくる3月上旬。

今年の冬は長いなあ

なんてくだらないことを考えながらとっくに止めた携帯電話の画面を覗き込む。

6時45分。うん、いつも通り

重たい体を起こしながらなんとなく、朝の清々しい空気と空虚な部屋のいりまじった微妙な違和感を鼻から吸う。

そしてまた、わたしの体の中にもある違和感を、吸った朝の空気と一緒に口から吐き出す。

部屋とわたしの中にある違和感は、どちらとも見分けがつかないほど同じものだった。


昨日の夜、彼と喧嘩をした。

最初はほんとに些細なことだったと思う。

けれど互いの熱が引くことはなく、気がつけば口喧嘩はとても大袈裟なものになっていた。

勢いで出て行こうとしたわたしを彼が引き止め、その場はなんとか落ち着いたが、

2人の間に亀裂が走るとはこういうことなのかと感じるほど、

寒い夜の透き通った黒より絶望的に真っ黒なものがわたしたちを取り囲んでいた。


先にベッドに入り、眠りにつこうとしていたわたしに


明日のゴミ出しの分、今から行っても大丈夫かな


と彼は聞いた気がする

夢うつつなわたしは返事をせずに、そのまま夜の夢の真っ暗な闇に体をうずめた。


玄関先に置いていた可燃ごみをまとめた袋は最初から何もなかったかのようにそこから消えている。


彼はもう、可燃ごみと一緒にわたしを燃やしてしまっただろうか。


いつもの朝と違うのは、部屋とわたしの中に違和感があるのは、わたしが起きるより先にごみ袋がそこから消えているのは全部、


全部、彼がいないからだ。


戻ってこようとこまいと、一度わたしは燃やされた。

どんなに綺麗な言葉を並べようと、きみには少し目を瞑っていてほしい。


そして次、目を開けた時

燃やしたはずのわたしが不燃物であったことを知り、自分の方が実は可燃物であることに

気がついてほしい。


そんなことを考えながらシーツに奪われた熱をまた取り戻しつつ、涙で濡れてくしゃくしゃに丸まったティッシュを空になったゴミ箱へ入れた。


静かに音を立て、ぽつんと捨てられたひとりぼっちのごみは次捨てられてくるごみを密かにそこで待ち望んでいるのだ。

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可燃ごみの日 ひつじのまくら @Rusanchiman

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