ニッチ 〜美味しい朝ごはん〜

とし

美味しい朝ごはん

日曜日の少し遅めの朝。


キッチンからは包丁を動かすリズミカルな音が響き、ほのかな味噌汁の匂いと肉が焼ける香ばしい香りが漂ってくる。

まだ眠っている僕の脳と体よりもいち早く僕の鼻は大好物の肉の匂いを嗅ぎつけ鼻腔を膨らました。

夢心地のまま幸せな気持ちになっていく。


(今日は最高の目覚めだ )


僕は機嫌良く起き出し鼻唄を歌いながら着替えると部屋を出て身仕度を整えるとキッチンへと向かう。


「おはよう 」


そう言って妻のユーちゃんのおデコにキスして僕も朝食の準備を手伝う。

ユーちゃんはくすくす笑って僕の頰にキスを返しながら言った。


「食いしん坊さん、やっぱり大好物の匂いに誘われて早起きしてきたわね 」


「ははは、出来れば毎週そうしてくれると僕は早起きして来るんだけどなぁ 」


「早起きはして欲しいけど、お肉高いのよねー 」


ユーちゃんはフライパンでジュージュー焼けているお肉の焼け具合を確認するとワイン入りのデミグラスソースと野菜をそこに投入して更に蒸し焼きを始めた。

ユーちゃん手作りのこの蒸し焼きはママが作るものより断然美味しくて、僕を更に幸福にしてくれた。


「ユーちゃんと結婚して良かった 」


僕はまたユーちゃんのおデコにキスをする。


「じゃあ、あなたもいっぱいお金を稼いで毎週このアース産のお肉が食べられるように出世してね 」


ユーちゃんが痛い所を突いてくる。僕の安月給では高級なアース産肉はたまにしか手が出せない代物だ。


「わかった、頑張るよ 」


出世すれば高いアース産肉が毎日でも食べられると思い直し、いそいそと僕はテーブルについた。



僕達はアース産肉に舌鼓をうちながら遠く離れたアース=地球で今もその肉の仕入れに奮闘してくれている我が同士に感謝する。


「仕入れには勧誘が大切なんですって 」


ユーちゃんが肉を頬張りながら笑う。実はユーちゃんもこの肉が大好物なのだ。


「人間で溢れている地球から、冷凍睡眠装置付きの惑星間航法船に乗るようにまずは勧誘するんだって。

強制じゃ無いのよ。そこが大事なんだって 」


「ああ、わかるよ。地球との間でトラブルにならないためなんだろ。将来的には詐欺と言われても仕方がない事を我々はしてるんだけどね 」


「えー、一体そんな日がいつ来るの? 地球人の能力では冷凍のカプセルを作るのがせいぜいだって言われてるじゃない。

どんな事をしても生きて私達の惑星には辿り着けないわ。

騙されてたなんて地球滅亡の日まで気付かないわよ 」


「まあね。地球人と我々の能力の差はあまりにも大きい。アリと象くらいにね 」


「トラブルなんか起こりっこない。

地球人は何も知らないまま、多分ずっとこの調子で・・・」


ユーちゃんはじっと肉片を眺めた後、思いっきり良く肉にかじりついていく。

僕はそんな彼女を見て笑うと一緒になって肉に食らいついた。


こんな美味しい肉を手放す気持ちは我々にはなかった。僕達にとってこれは単に肉であって食べ物でしか無い。

たとえそれが地球人と呼ばれ、言葉を話し、冷凍カプセルを作る技術を持つ高等生物であっても。

何故なら地球人は我々の足元にも及ばない矮小な生物であり、食われる存在で充分だと判断されたからだった。



☆☆☆☆☆



キャッチコピーは


—【地球外惑星で最高の目覚めを 〜新たな惑星で全く新しい人生をスタートしてみませんか?〜 】—


その言葉に急かされるように惑星間航法船に乗って未知の惑星へ向かおうという人々が殺到した。

多くは貧民であり失業者であり、中には酔狂な金持ちもいたが、まだ未開の、それも30億光年も離れた惑星へ行こうとする人々は何らかの形で地球に見切りをつけたがっている人達だった。


かつての青い水で溢れた地球の姿は今や何処にもない。人類が台等した20世紀前後は幻の世紀と言われ、その頃から地球環境は悪化の一途をたどり始めた。石コロにも等しいまでに渇き続けるかつての海。海の後退は大気の大幅な縮小を招く。海と空。この二つが密接な相互作用があるという当然の事を地球人は早くから気付いていたはずなのに地球人は目先の欲望にかられ対策を講じなかった。憐れな人類は今や息を潜めて母星の回復を祈るしか何も手立てを持たなかった。


そんな絶望の中で未知の惑星での全く新しい人生は夢への切符のように思えたのだ。


僕らはそれを上手く利用したに過ぎない。

船でコールドスリープ=冷凍された人間は眠ったまま僕らの惑星に誘導され、一度も目覚める事無く食卓へ並べられる。


僕らは宇宙に漂う奇妙な物体=惑星間航法船を初めて見つけた時に中身が何なのか非常に興味深く観察した。

そして、拾った缶詰めを興味深く眺め回した後、匂いを嗅いでそうするように一口味見をしたのだった。


食える。

不味くはない、むしろ美味い。


僕らは人間の味を覚えてしまった。


そうすると次も欲しくなって人間の居どころを探した。広い宇宙のはじっこに人間がいることを発見した後はどうやって人間を手に入れられるか考えた。


以外に簡単だった。


「移住」という地球をあげてのプロジェクトはこの時にあって何という素晴らしい幸運だったろうか。労せずして人間を手に入れられる。

冷凍カプセルに人間を詰め込み船を出してくれるまでは人間自身がやってくれるではないか。

後は船を自分達の惑星に引っ張ってきて地球には偽物の情報を流せば良い。


「 無事につきました。

楽しく過ごしています」


実際そんな嘘に地球人はころりと騙され鵜呑みにしてくれた。無理もない。30億光年も離れていると船がたどり着く頃には一人の人間の寿命が尽きて世代交代が起き、誰も無関心だったのだから。


そんな調子で地球人は僕らのためにタダで供給される肉の放牧場となっているとは知らずに長い長い年月が過ぎていったのだった。



☆☆☆☆☆



地球の生物研究所の若き研究員コウは、ふとした事から長く芸能界で活躍する女優 イショークト と親しくなった。

コウは彼女が惑星間航法船に乗る事を熱心に進める広告塔のような役割を果たしている事に気がついていた。

地球政府が外惑星への移住を勧めているのだから、彼女のような有名人が宣伝に引っ張り出されるのは至極当たり前のように思えた。


けれどコウは何か腑に落ちなかった。


まず、医療技術がすすんだとはいえ彼女がいつまでも若々しいままなのは異常だと思っていた。

さらに、イショークトは妙に地球の生物に興味があって(生物学者のコウとはそれが理由で親しくなったのだが) どれが食べられるかと必ず聞いてくるのにコウは少なからず驚かされた。

象やキリンまで食べられるかと聞くのはあまりにも非常識、無知なのかと疑うほど意外過ぎた。

不思議だとは思いながらもコウは熱心に地球生物の話を延々と語ってあげた。


「今の地球は外と内があるんだ。外は人間が住めない所。大気に有毒物質が含まれててね、危険なんだ。それで完全密閉の基地を作って人間はそこに住んでいる。

ゾウもキリンも映像の中でしか見られないんだ。ずっと昔に絶滅してしまったからね」


「嘘でしょ? あんなに美味しそうなのに・・・一度も食べられないままなんて・・・」


コウは大笑いする。


「食欲旺盛だね、イショークトは・・・ダメだよ、ゾウもキリンも食べる生物じゃない。彼らの末裔が生き延びているけど、やっぱり有毒物質を体内に吸収している可能性がある。今の地球にいる生物は全て汚れているんだ。哺乳類も魚も昆虫も植物も。

地球人が食べるものといったら工場の中で完全管理して育てた『元のものによく似たまがい物』なんだよ」


「それじゃあ内にいる人間もまがい物?」


コウはクスリと笑う。


「そうかもしれない。人間もまがい物だよね。

僕達は地球という大きな生命体で生きていくというそのルールを無視してしまった。今や盤上からはじかれてこんな狭い基地の中でしか生きていけない。

切迫詰まった挙句が30億光年も離れた所に新しい生活圏を求める羽目になる。ここにどこにもないものがあったのに・・・」


コウの遠くを見つめる目はきっと外の地球を見ていた。何百年も過去の美しい地球を。


「この狭い地下基地では生存の長期化には限界がある。

でも、幸運だった。

僕達は遠く離れた場所に新天地を見つけられたんだから」


その言葉にイショークトの表情が強張ったのをコウは見逃してしまった。


コウは何も知らないままだった。なにより時々遊びに来るイショークトはとても美しく、コウを幸せな気持ちにしてくれたので彼には彼女を拒絶する理由はどこにも無かった。

そして、コウは彼女が勧めるまま惑星間航法船に乗る決意をしたのだった。

決め手はイショークトも一緒に行くからと、移住先の惑星に着いたら結婚しようと約束してくれたからだった。

コウは幸せなまま永遠の眠りについても悪くは無いなと思っていた。



たとえ、だまされていようとも・・・。



☆☆☆☆☆



コウとイショークトが惑星間航法船に乗って遥か彼方の惑星へといよいよ出発する日が来ていた。


数日に渡る移住希望者の全てを冷凍し終わろうとした時だった。

急遽、イショークトの入るはずの冷凍カプセルに故障が発見され彼女は船を降りることとなった。船の出発は予定通り明後日の朝だ。


「イショークトさんは船を降りられるんですか? 婚約者のコウさんが乗ったままですからコウさんも降ろしますね」


冷凍カプセルの作業員が申し訳なさそうに何度も頭を下げていた。

突然のアクシデントにも地球一の美人女優イショークトはうろたえること無く平然としていた。それもそのはず。この故障は最初から彼女達が予定していたものだったから慌てるわけはない。


「いいえ、コウは降ろさなくても大丈夫よ。夢の世界へ行くことを楽しみにしていたから」


「でも・・・目覚めた時に隣りにイショークトさんがいなかったらすごく驚かれて悲しまれますよ」


「いいのよ、それで。私やっぱりコウとは一緒に行かないことにしたから」


「えーそんなぁ、かわいそうすぎます」


その場にいた作業員全員がイショークトの発言に引いてしまう。世間を騒がせた世界一の美人女優と学者の婚約の話が今まさに破棄されようとしていた。

その時、後ろから聞こえた声にイショークトはビクッと身を縮めた。


「やっぱり君は行かないんだね、イショークト。残念だよ」


その場にいた全員の目がエアチューブから降りた当のコウ本人に注がれる。イショークトは余りにも予想外のコウの登場に驚きを隠せなかった。


「コウ?……あなた、何故?」


「何故? 僕の使う冷凍カプセルは絶対故障しないってわかってたような言い方だね。そう、僕は一人で永遠の眠りにつくはずだったんだよね?イショークトの作った筋書き通りにいかなくて悪いね。

それよりも自分の身を心配したほうがいい」


「えっ?……」


驚いてイショークトが振り向くと、さっきまでただの作業員だった彼らの手には月面の特殊戦隊員だけが持つファイター・ソードが光っていた。

そして、次から次へと百名以上もの戦隊員が走り出て来てあっと言う間にイショークトを取り囲む。


「これは・・・何? 何のつもりなの?」


イショークトがブルブル震える声で叫んだ。


「それは、お前が一番わかっているだろう」


イショークトの手にガチリと手錠をはめた戦隊長が鋭い目付きのまま彼女をにらみすえる。彼の指示で大きな鳥カゴにも似た即席の牢屋がイショークトの体にかぶせられた。超合金製の鉄格子は見かけ以上に頑丈で、イショークトが渾身の力を込めても曲がらなかった。


それを確認すると戦隊長はニヤリと口元を上げる。


「そいつは頑丈だろ? 俺たち地球人も馬鹿じゃないんだよ。 あんたやあんたの惑星を調べて無いとでも思っていたのか? 今度の航法船に乗ったのは全員が戦隊員だ。そして、お前達の惑星を破壊出来る原子爆弾を積んでいる」


「何を言ってるのかわからないんだけど・・・」


「すぐわかるよ」


「隊長・・・」


一人の隊員が耳元のインカムを指差して通話内容を聴くよう促している。

しばらく隊長がその内容を聴いていたが、すぐに彼の口元に笑みが浮かぶ。


「了解だ。

イショークトさん、たった今あなたの仲間を全員捕獲したと報告があった。 あんたのようになかなか尻尾をつかませない相手にはこうやってはめるのが一番だ」


「はめ・・・る?」


思わずイショークトは泣きそうな顔をして突っ立つコウの姿を足元から上へと眺めまわす。


「コウ・・・・ あなた、まさか知ってたの? 私が何者なのか? いったいいつから知ってたの? 」


「一番最初から・・・」


泣きそうなくらいに弱々しいコウの声にイショークトは彼がどんな気持ちで今日の日を迎えたのかわかる気がした。


(素直で私をいつも気づかってくれる優しい人。

だまされているとわかっていて・・・万が一でも嘘が嘘であってほしいと願っていたんだと思う・・・たった今まで)


「イショークト・・・僕は君に出会う前に地球保全機構からそれらしき人物から接触があるかもしれないと言われていた。理由は聞かされていなかった。ただ、その人物は危険であること、その人物の勧誘に乗る振りをすること、そして、その人物の仲間を一人でも多く探ること。

僕は彼らの指示に従っただけだ。地球のために」


コウの言葉にイショークトは優しい笑みを浮かべて、ふふふっと笑い声をあげる。


「すっかりだまされたわけね、私・・・・・。コウのが役者が一枚上手だったってことなんだ、ふふふ」


「イショークト・・・・」


コウが捕縛牢に近寄ろうとするのを制止して戦隊長がイショークトをさっさと収容するように戦隊員に命じる。


「おまえらの仲間を一網打尽にするには少々時間がかかりすぎた。地球人がどれほど犠牲になったかしれない。

しかし、それは尊い犠牲だ。おまえ達の惑星を探索し、生体を観測して、ようやく結論が出た」


「私達の惑星を破壊するつもりなのね? なんて愚かな・・・」


「破壊は最終手段だ。抵抗さえしなければおまえ達の惑星を傷つけたりはしない。

なにより地球では手に入らない美味い肉が手に入るんだ。それを破壊するような真似はしない」


「肉・・・?」


イショークトは唖然と立ち尽くす。悪い考えが頭の中を駆け巡る。地球人の肉を食べてきた我々が今度は逆に自分達が食べられる・・・。

今まで自分達が圧倒的に優秀だと思ってきたことが一瞬で逆転される。


(私達の失態のせいで・・・アース産肉を失うどころではない。わが星が・・・)


ムグォ・・・


捕縛牢がぐにゃりとひしゃげる。イショークトのか細かった腕は面影もなく今やイカのような吸盤を持つ長いモノが

捕縛牢を曲げた。もはや人間の姿をとどめないそれは出口を求めて戦隊員の頭上を長い手足を伸ばして走り去る。

戦隊員達もファイター・ソードでその長いモノに斬りかかろうとするが、それの動きは恐ろしく速すぎた。そしてあろうことか生物学者のコウをその長い腕に巻きつけていた。


「くそっ、人質を取られたっ!」


「その人を離せ、イショークト! この辺り一帯は完全封鎖されている。ネズミ一匹出られやしないぞっ!」


「グォ・・・オオ・・・」


イカにも似たイショークトの細長い体から無念とも取れる呻き声がもれる。


「右だ、イショークト。右に行け、早くっ!」


その声に反応してイショークトは群がる戦隊員の頭上を踏み台にするように飛び跳ね数歩で扉の前にたどり着く。

扉の顔認証システムにコウは顔を近づけ、あっと言う間に通路へと飛び出す。


「コウ・・・あなた・・・」


「油断するな、イショークト。このまま君たちが隠している宇宙船まで行くんだ。

きっと、君みたいに逃げ延びた仲間もいる。その人と一緒に逃げろっ」


「コウ・・・」


二人の後ろにはぞろぞろと戦隊員が迫っていた。異常事態に対応して通路からも戦隊員が出てきては、ファイター・ソードで切りかかってくる。イショークトは傷だらけになりながらもコウの助けを得て外へと出る最後の扉の前にたどり着いた。


戦隊員達の目の前でイショークトの大きな口が生物学者を丸呑みしたように見えた。


「先生————!」


戦隊員達の悲鳴が響く中、標的は最後の扉をすり抜けて外へと出て行った。



地球の地下基地から逃げ延びたイショークトがしずしずと灰色の大地を歩いていく。

人間の姿をとどめない白っぽく光沢を帯びてうねるように歩く生き物をコウは基地の窓から見送った。


「食べられるかと思った・・・覚悟はしていたのに・・・」


最後はまるで甘がみのようにその口で自分を抱きしめてから行ってしまった。


「君になら・・・」


食べられても良かった。そう思うくらい好きだった。


「先生、大丈夫ですか? なんか唾液でねとついてますが・・・。 危なかったですね」


戦隊員達が追いついてきてコウの何とも言えぬ異様な色の粘液を被った頭を敬遠しながら声をかけた。


「危険な生物でしたね、先生。本当に宇宙には我々が想像も出来ない生き物がいる。ましてそれが敵になろうとは・・・」


「敵というのはこの場合少し違いますね。僕たち生物学者から言わせれば彼らは捕食者です。自然の摂理に彼らも従ったまでです。

宇宙へ我々地球人も手を伸ばすのは生き延びるためです。食べるためです。

彼らと地球人は見た目は随分と違います。

お互いに知性がある生き物と気づく前に彼らとは不幸な出会いになってしまった。本当に・・・残念でならない」


コウは基地の外から目を離さずにいた。


灰色の大地が続く先にイショークトの姿が見えていた。もう二度と会うことはないだろう。ただ・・・イショークトの惑星を見て見たかった。一緒に見て見たかった。そう思っていた。



「もうアース産肉は食べられない・・・故郷の皆んなには申し訳ないけど・・・正体を見破られたらもうこの地球にはいられない。

幸いにも彼らの能力では偽物の飛行ルートを摑まされているとも知らずに宇宙で迷子をなるのがオチ。我々の母星には指一本触れられやしない」


イショークトと数名を乗せた船は灰色とも青とも赤錆色ともつかない荒れ果てた地球を遥か遠くに見てこの空域を離れた。地球には多くの生物がいる。どれも美味しそうに見えても環境汚染で侵食された生物は自分達の体内汚染を招くことになると危惧して手を出さなかった。生物学者のコウの言う通りにして・・・・・。


「でも、どこまでが本当だったかしら? コウ・・・」


コウの言う通りに生物は汚染されていたのだろうか?今更ながら疑問がわいてくる。最初から自分達の目的がわかっていたコウなら嘘をついていたかもしれない。

人間が食べられるなら、他の生物も・・・。そう思っていた。生物学者のコウに近づいたのはそれを探るためだった。地球の生物が汚染されていない。そう確信が得られたら地球全体を食民地にするはずだった。

コウもただの美味しい「肉」だと思っていた。それなのに・・・・・


イショークトは灰色の地球に向かって笑いかけた。

コウとはこんな形で出会いたくなかった。お互いの守るものの為にだましあって・・・

それがなかったら、私たちはずっと仲良しのままでいられたはず。


イショークトの隣りで、そのアース産肉をあきらめきれない仲間が次からはどうやって人間をさらうか相談していた。


イショークトは次の勧誘の仕事をする気にはなれなかった。


☆ おわり ☆







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