第2話前編 そうやって彼は物語を再開する


「失礼しました」

 放課後、夕日も沈みだし、周りがだんだんと暗くなってくる時間帯。生徒指導室からやっと解放された俺はため息をつく。

「はあ……」

 なぜかというと、昨日の無断欠席の指導をくらっていたのだ。

「おうおう、お疲れのようだな」

 後ろから声が聞こえてくる。

「お前の顔を見たらなおさらな」

 そういって声をかけてきた人物、笹瀬健斗のほうを向く。

 無駄に整った顔の健斗は微笑みながら答える。

「ひどい言い草だな、おい。一緒に帰ろうと思って待ってたのによ」

「そうですか。暇だね、お前」

「いやいや、俺だけじゃねーよ?陽菜も涼香ちゃんも教室で待ってんぜ」

「ほんとにお前ら暇だな……」

 今健斗があげたやつらは俺が高校に入ってよく一緒にいる連中の名前だ。朱里の主治医だった笹瀬先生の息子の健斗とは交流があり、高校に入ってからはよく一緒にいる。そのおかげで、健斗と仲のいい二人とも一緒にいるようになったのだ。

 正直、朱里のことで落ち込み、中学の時にまともに友達を作っていなかったので、実は健斗には感謝をしている。

 俺は健斗と話しながら自分の教室に向かう。

「あ、やっと帰ってきた~!」

「遅かったね~」

 教室に入ると二人の女生徒が話しかけてくる。

 先に話しかけてきたのが川西陽菜。背丈は普通で見た目はなかなかかわいい。髪型は茶髪が混ざった黒髪ショート、明るい性格でリーダーシップのあるやつだ。そして健斗と中学から付き合っている。いまだ冷めぬアツアツカップルだ。

 そしてあとから話しかけてきたのが平岡涼香。背丈は陽菜よりは小さく、顔はぶっちゃけかなり美人だ。ファンクラブがあるくらいに美人。髪は黒髪のショートポニー。性格はおっとりしていて優しい性格だ。

「いや、説教がやけにながくてな……。ってか、おなじこと何回も何回も言うんだよなあ……。さすがに疲れたぜ……」

 俺は死んだ魚のような目で答える。

 ほんとに同じことを何回も何回も言われた。しかもどれもきれいごとばっかりで心に響かないものばっかりだ。

 俺が心の中で文句を言っていると涼香が苦笑いをしていた。

「あの先生は確かに話長いよね~。集会でもおんなじこと何回も言ったり、その場でいえばいいのにわざわざ時間無駄にしてほかの場所で、結局どうでもいい話したりするし」

「だよな!」

 俺は涼香の言葉に激しく同意する。うんうん、わかっている。

 俺がうれしくうなずいていると陽菜が話しかけてくる。

「というかさ、なんで智樹は昨日学校さぼったの?」

「あ、俺もそれ知りたい!」

「私も気になる」

 陽菜の言葉にその場の全員が興味を示す。

 理由と言われても、昔の楽しかった思い出を思い出して軽く死にたくなったとも言えない。

 でも心配してくれている友人に嘘をつくのも悪い気がする。

「いや、ちょっと昔のことを思い出して、学校行くのがめんどくさくなったんだよ」

 うん、まあ嘘はついていないさ。

「昔のことか……」

 健斗が心配そうに呟く。

 こいつは俺の昔のこと、朱里のことを知っているから。

「そう言えば智樹って昔のこととか全然話さないよね」

「たしかに、智樹君って昔のことを話さないね」

 陽菜と涼香も興味ありそうな反応をする。

 そりゃそうだ、俺の中学時代どころか学校自体にまともな中身があったことなんてほとんどないだろう。俺にとって朱里と過ごした日々だけが大切な時間だった、中身のある時間だったのだから。それに、中学の話になったら健斗たちのアツアツ話聞かされて終わるからな。

「昔の俺の話なんて何にも楽しくないよ。ただの根暗ぼっちさ」

 俺は笑いながら答えた。実際そうだったし。

「意外だな~。智樹君ならなんだかんだで誰か一緒にいると思ってた」

「あ~、でも確かに智樹、付き合悪いとき結構あるよね。それで浮いてたんじゃない?」

 涼香と陽菜はそれぞれ思ったことを口にした。一人、遠慮のかけらもなかった気がしたような……。

「わるかったな、陽菜。付き合い悪くて」

 俺は陽菜を半目でにらむ。俺ににらまれた陽菜は顔をそらしてにやついていた。

 しかし、陽菜の言うことはもっともだと思う。

 あのころから俺は欲をあまり欲しない。心のどこかで、不甲斐無かった自分に罰を与えているとでも思っているのだろうか。

 非常にくだらなく、無駄で、自己中心的なことだと思う。

 けれど、それを快く受け入れている自分がいるのだ。

 だが、これでも立ち直っているほうだと思う。中学の時はひたすら後悔ばかりで、かなりひどかったのだから。いつまでもしつこく気持ち悪いことはわかっている。でも、時たま朱里との最後の会話を思い出し、落ち込んでしまうのだ。そして俺は生きていて、幸せを感じること苦痛を感じてしまうのだ。

 死ねば、楽になると思う。だが、楽になってはいけないのだ。

 生き続け、罪の意識を持ち続けることがせめてもの、最低限の罰だと思うから。

「さあさあ、ここで話しちゃいなよ!」

「私、気になります!」

 なんか色々面倒なことになってきた。

「いや、しないしなんもないよ……」

 俺が陽菜たちの対応に困っていると健斗が思い出したかのように話し出した。

「そう言えば!学校の近くに鉄板焼きの店ができたらしいぞ!」

 俺に気を使ってくれたのだろう。いい奴だ。

「あ、そうなの?いこ!」

 陽菜はあっさり俺への興味をなくし、鉄板焼き屋の話に食いついた。しかし、意外なことに涼香はそう簡単にはあきらめなかった。

「鉄板焼きよりも智樹君の話ですよ!」

「何言ってんだよ……おごっちゃうぞ☆今なら」

 そこまでして無理に変えてくるのか。正直、言い方は気持ち悪いが、ありがたい。

「どんだけ行きたいの……」

 流石に陽菜も若干引いている。

「おごりなら、行かない手はないな!」

「そうこなくっちゃ!」

 俺が乗り、健斗がハイテンションで返答する。

「仕方ないなぁ、そんなに行きたいならいこうか。健斗のおごりで」

「うぅ……、それなら行きますか」

 俺の意志が固いとわかったのか、涼香はしぶしぶ健斗の案に乗った。

 俺達は支度をして鉄板焼きの店に向かった。

 若干、健斗の目には涙が浮かんでいた。



 鉄板焼きの店を出て少し歩いたところで健斗と陽菜と別れる。二人は同じ中学で俺と涼香は違う校区だからだ。

 俺と涼香も校区は違うけど方向が一緒だから家まで送っている。

 ちなみに、店を出た後、健斗に半分お金を出した。俺のために言ってくれたのだ。それぐらいはしておかないと。

 二人と別れた後、俺と涼香はお互い無言のまま帰宅していた。

 涼香の家まで半分ぐらいのところで、涼香が口を開いた。

「昔、何もなかったんじゃなくて、なにか、悲しいことがあったんでしょ?智樹君」

 思わず涼香のほうを目を見開いてみてしまった。

「なんで……そう思うんだ?」

 その問いかけに、涼香は悲しそうに笑って答えた。

「やっぱり覚えてないのかぁ……。いや、私も悪いのかな?」

「いったい何のことを……?」

 全く心当たりにない。涼香と知り合ったのは高校からのはずだ。

「広瀬町小学校」

 聞き覚えのある名前。

「俺の母校……?」

「私の母校でもあるんだけどね」

「え!?」

 衝撃の事実だ。

「何回か一緒のクラスにもなったこともあるんだけど……、やっぱり覚えてくれてないんだね」

 さっきの表情にも納得がいく。というか、これは俺がひどい。おなじクラスにもなったこともある人のことを完全に忘れているなんて……。

「すまない……。あの時は色々あって……」

 学校ではほとんど女子とはかかわっていなかったので、あまり記憶に残っていない。

「てか、中学一緒じゃなかったよな?校区も違うし……」

「うん。だって私、中学上がる時に引っ越したからね」

「そうだったのか……」

「結構有名な話だったけどね」

 呆れた風にこちらを見ながら言う。本当に申し訳ない。

「まあ、あんまり話したことなかったし、高校で会った時に覚えてなかったみたいだったから期待はしてなかったけどね」

「本当にごめんなさい……」

 何度も言うようだが、非常に申し訳ない……。

「私さ、小学校の時、ずっと気になってたんだ。いや、今もだね」

 俺の顔を覗き込むようにして、涼香が問いかけてくる。その可愛い顔がまじかに来て少しどきりとする。

「学校外で、何をしてるのかなって」

「なにって……」

 依然、まっすぐ見つめてくる。

「……しってるのか?」

 絞り出たのは、そんな言葉だった。

「何も知らないから、気になってるんだし、聞いてるんだよ」

 まっすぐ俺の目を見て、言葉をつなげる。

「六年生になってすぐに智樹君は別人みたいに落ち込んでた」

 朱里と最後の電話をした後のことだろう。あのころは、特にひどく落ち込んでいた。

「何かとても悲しいことがあったんだろうって。本当は聞きたいって、少しでも力になれたらいいなって思ってたんだけど、聞けそうな雰囲気じゃなかったし、私は全然仲良くもなかったし……」

 その声は後半に行くにつれて小さくなっていく。

「どうしてそんな風に思ってくれたんだ?」

 力になりたいと、気にかけてくれていると知り、疑問に思ってしまった。

 言い方は悪いが、俺と涼香は仲が良かったわけでもない。なのに、なんで……?

「それはっ……どうでもいいでしょ」

 涼香は顔を真っ赤にしてぶっきらぼうに答える。

「そうか?まあ、涼香がそういうならいいけど……」

「で、話してくれるの?」

 涼香が話を戻し、返事を催促する。

 俺は最初から返す言葉は決まっている。

「悪いが、言わない……。言いたくない」

 少し、言ってしまおうかと思った。でも、まだ言うつもりはない。言うにしても、今じゃない。

「そっか……。なら仕方ないね!」

 涼香はそう笑いながら言った。

 意外にあっさりあきらめて、少し拍子抜けの気分だ。もっとしつこく聞いてくるのだと思っていたから。

「でも、まだってことはいつか話してくれるんだよね?」

「ああ、いつか、必ず話すよ。約束する」

「やった!絶対だよ?」

 そう言いながら小指をこちらに差し出して来た。

 俺も小指を差し出し、お互い絡める。そして、

「ああ、絶対だ」

 そう、言い放った。




 少しして、涼香の家の前についた。

「智樹君、送ってくれてありがとう」

「お礼なんていらないよ。いつものことだし、家もこっちだから」

 いつも似たような会話をしている。涼香は優しいから、慣れて、当たり前のことになってもお礼を言ってくる。だから、そんな彼女だから、きっと俺のことを気にかけてくれていたのだろう。気付いてしまったことには。それが、相手が傷ついていることなのなら特に……。

 別れ際、涼香は俺に問いかける。

「ねえ、智樹君。私達若者って、何者にもなれるってよくいわれてるよね」

「唐突だな……。たしかに、よく聞くな」

 俺は涼香の言葉をしっかりと目を見つめて聞く。これは、彼女なりの、閉ざしている俺に対するせめてもの励ましなのだろうから。

「私がさ、今から医者を目指すって言ったら、無理だっていう?」

「言わないさ。お前は文理選択で文系を選んではいるけど、無理だとは思はない。浪人したり、自分学べば何とかなると思う」

 俺の答えに涼香はちょっと嬉しそうな表情を浮かべる。

「すごく現実的な意見だね。じゃあ、声優になるって言ったら?画家になるって言ったら?ピアニストになるって言ったら?」

「努力をすればなれるかもしれない。可能性はゼロなんかじゃないと思うよ」

「そうだね、可能性はゼロじゃないもんね。なれるかもしれないよね。つまり、私達は何者にもなれるってことだよね」

「そういうことになるな」

 涼香が何を言いたいのかがよくわからない。可能性だけの話だったら、なんだってあり得ることじゃないのか?

「何が言いたいんだ?涼香……」

「私達は何者にもなれる。そう、何者にも……」

「……」

 俺は黙って涼香を見つめる。彼女はなにか俺にとって大切な何かを言おうとしている気がするからだ。

「でもね、私達は自分自身になることができないんだよ。いや、一番難しいってだけかな……」

「自分自身になること?」

「そうだよ。まあ、私個人の考えだから、くだらないと思ったら忘れてね」

 涼香は笑って俺にそう言う。

 自分自身になることが一番難しい?どういう意味なのかさっぱり分からない。俺は常に俺で俺以外の何物でもないし、何物になっても俺は俺だ。それに、何者にもなれるということは職業のことじゃないのか?

「俺にはよく意味が分からないな。説明してもらえるか?」

「うん、いいよ」

 俺の問いに涼香は楽しそうに、笑顔で答える。

「私達は生きていく上で何かに縛られて生きているし、いつも何かを気にしているよね?」

 確かに、涼香の言っていることはあっていると思う。俺たちは生きていくうえで常に何かを気にして生きているといっても過言じゃないだろう。

 それは誰かの目だったり、意見だったり、評価だったりする。

 俺も、常に朱里のことを考えて、朱里のことを気にして生きてきた。

 そう考えれば、縛られていたのかもしれない。

 だけれども、少しも縛られているとか、嫌だとか、そんな風には考えたことはないし、これからもそうは思わない。

「そして、自分を偽って生活している。それって、自分らしく生きていることにならないと思うの」

 俺がどう思おうと、俺は自分らしく生きていないように見えるのだろうか……。

 周りからも……。朱里からも……。

 だから、あんなことになったのだろうか……。

 最後の電話の時、自分らしさを失ってしまったから。

 今まで、朱里のことをかんがえて行動してきたのに、最後の最後で自分のことしか考えてなかった。

 朱里のことを考えているつもりで、思っているつもりで、その実は自分のことしか考えてなかった。

 朱里が本当はかけてほしかった言葉が薄々わかっていたのに……。

「私たちが自分らしく生きていくためには本当の自分をしっかりと知って、自分の心に嘘をつかずに生きていくことだと思うんだ。でも、それはとても難しいことだと思うの」

「そうだな……」

 涼香の言葉に思わず同感してしまう。俺は、あの時から、完全に自分らしさを失っていたのだと思う。

 いつも朱里のことを一番に考え、大切にしていたのに、自分に対する罪悪感とばかり戦って、全く朱里に向き合っていなかった。

 まだ、いや、今すぐにでもできることがあっただろうに。

 涼香はしっかりと俺の目を見て、優しく問いかけてくる。

「智樹君は自分らしく、自分自身でいられてる?」

「……」

 俺は何も答える事ができなかった。それは、俺の強がりなのか、過去の公開を思い出し、口を開くと泣いてしまいそうだからかもしれない。

「私の感なんだけど、智樹君の悩みは、自分らしくすれば、解決するんじゃないかな?」

 控えめだけど、その言葉には確かな強みが感じられた。きっと、涼香は俺が俺らしくなることが必要なのだと確信しているのだろう。

 彼女は本当の俺を知らない。

 それでもそんなことを思ってしまうのはきっと、いつもの俺が自分自身になれずに、必死に醜くもがいているからなのだろうか。

「なるほど、ありがとな、涼香」

 俺は泣きそうな顔をこれ以上涼香に見せられないので振り返り、お礼を告げる。その声は震えていて、きっと涼香に俺の状態を悟られているだろう。

「どういたしまして。じゃあ、気を付けてね」

「ああ、じゃあ、また明日」

 そう言って、俺達はわかれる。この時、俺は涼香の顔を見ることはできなかったが、きっと満足した顔をしているのだろう。



 智樹君と別れて、自分の部屋に入って一息つく。少し、自分らしくないことをしてしまったと恥ずかしく思ってしまう。しかし、それも無理はないことだ。私にとって、彼は特別なのだ。

 きっと、彼は覚えていないのだろう。彼にとって、それはあまりにも当たり前のことで、私にとっては劇的なこと。

私の父はいわゆる転勤族というやつだった。だからなのだろうか、私は友達とか、好きな人とか作る気もなかった。大体一年くらいしかその土地にいないのだ。作っても無駄というものだし、忘れないという約束など、あの年の子供には無駄なものだ。すぐに楽しいことがあらわれ、激流のように過ぎていく日々は私などという途中に見えた石のようなものだ。すぐに忘れ去られる。だから、私にとって一人ぼっちというものは何も怖くもないし、つらくもないことだった。だから、上辺だけの付き合いだけをして、張り付けたように笑う。そんな子供だった。そんな中、父の転勤が終わりをつげ、今の土地に定住することになったのは、小学校三年の時だった。

 正直、私は戸惑った。いなくならない友達。ずっと仲良くしていくことになる人々。短い付き合いだけの、上辺だけの付き合いをしていた私にはその環境がどうしてもなじめる者にはならなかった。ただ、普通に仲良くなって、楽しく笑うだけ、それだけでよかったのに、私にはできなかった。

 転校してきていろいろな人が話しかけてくれたけど、なかなかなじめずに私は孤立していった。でも、それだけならよかったのだ。ただ、一人ぼっちだったのなら、私はいつも通りいられた。でも、それだけにはならなかった。

 私はいじめられ始めたのだ。

 理由なんてものは本当にくだらないもので、お高く留まっている生意気な転校生だった。私は自分で言うのもあれだったが他の人と比べて容姿は整っていた。だからこそ、男子は気を引くため、女子は妬ましく思って、いじめられていくようになったのだ。

 初めて味わういじめという孤独と辛さ。これは当時の私にとって耐えがたいものだった。毎日が苦痛で、学校に行くことが嫌になっていた。そんな中、彼、智樹君があらわれたのだ。クラスでも学年でも人気のあった彼が、二クラス合同のイベントの時に私を救い出してくれたのだ。救い出すといってもなんて事のない。ただ、一緒のグループに誘ってくれて、両クラスの仲間の輪に入れてくれただけ。ただそれだけなのに、いじめはぱったりとなくなった。それどころか徐々に仲間の輪に入れてくれるようになったのだ。

 小学生のいじめなんて始まりはどうしようもなくくだらないもので、終わりもまた同じなのだということが分かった。ただ、人気者が声をかけて仲間の輪に入れる。ただそれだけで終わること。ただ当たり前に、何も気にすることもなく、いじめに気付いていたわけでもなく、ただ当たり前に誘った。それだけで、私を救い出してくれたのだ。

 そんな彼に私は人生で初めての感情が芽生えたのだった。どうしようもないほどの、熱く、温かい思い。初恋を、彼に感じたのだった。

「いつかきっと伝えたいな……」

 そう言って私はコルクボードに貼られた写真を見る。ニクラス合同の集合写真。それに映る、元気に、明るく笑う彼と、その隣で顔を赤くして笑う、私の写真を。



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