誕生
余記
たいじのゆめ
あれ?
ここはどこだ?
じぶんはだれ?
周りを見ても、
目の前で、手を動かしてみても全く見えない。
ん?手?
一瞬、何かが
何かを思い出しかけた気がしたが、待ってても何も出てこなかった。
とりあえず、手の感覚があったので、自分の手で、もう片方の手を握ってみたり、顔を撫でてみたり、身体中のあちこちを触ってみる。
あぁ。自分はこんな姿をしているんだな、とぼんやり想像できた。
記憶より、
***
この世界には、魔王という存在がいる。
その正体は不明だが、普通の生命体とは違う・・・生命を憎み、滅ぼそうとする存在と言われている。
そして、その存在に対抗するように神から遣わされた、と言われるのが勇者という存在だ。
「おい!なにボーっとしてるんだよ!」
「あぁ。悪い・・・今、ふと何かが過ぎった気がしたんだ。」
「おいおい。頼むよ?これから魔王を退治するというのに、肝心の勇者がぼーっとしてちゃ、勝てるものも勝てなくなるぜ?」
「ああ。分かってるよ。」
こいつは、同じパーティの剣士をしているガーヴィ。
脳みそまで筋肉で出来ているんじゃないか?というくらいの脳筋だが、モンスター退治では頼れる奴だ。
そして、魔法使いのマリンと・・・
「あの、朝から歩き詰めで、勇者さまも皆さまもお疲れなのではありませんか?」
この、よく気が回る女性が、僧侶のシーラ。
僕たちは、この四人で魔王を倒すべく、旅を続けている。
「ちょっとー。私だけ、扱いが
ちゃっかりと、すでにマリンは座り込んでさっさとお弁当を食べている。
「おいおい。俺の分もちゃんと残しておけよ!」
背負っていた荷物を下ろしつつ、そんな事を言うガーヴィに、笑いが起こった。
そんな彼らを見ながら、僕は、このメンバーなら魔王を倒せる、そう思っていたんだ。
***
相変わらず、目の前すら見えない暗闇の中。
・・・あぁ。やっと、思い出した。
僕は勇者。
「ふん。
目の前に移動してきた魔王が、腕を一閃する。
いつの間にか無くなっている右腕。
下を見ると・・・そう。
聖剣を握ったまま、肩から切り落とされて・・・
「うわ・・・うわぁ〜〜〜!」
僕たちは、魔王を倒すべく、旅を続けていたんだ。
「きゃぁ!」
魔法を唱えようとしたところを、殴り倒されるマリン。
斬りかかるガーヴィを、素手で受ける魔王。
「お前は、少しだけ歯ごたえがあるな。」
だが、次の瞬間には、胸に穴が開いていて。
城の奥で、魔王と対面して。
回復魔法をかけようとしたシーラは、片手で投げ飛ばされていた。
まったく、歯が立たないまま、敗れたんだ。
「ごめんなさい。私たちの力不足で。。。」
死に際の僕の隣で、うめくように言うシーラ。
「でも、せめて・・・あなただけは。勇者という希望を次につなげて・・・」
血まみれの手が僕の胸に添えられる。
と、ぼぅっ、と手が
あぁ、そうか。
僕たちは・・・いや、僕は、魔王に負けて、転生するところだったのか。
悪夢の終わり。
そして、僕は生まれ変わるのだ。
魔王への憎しみと、今度は絶対に退治してやる、という決意を
「
誕生 余記 @yookee
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