詩・夏が来るなら
矢野昴・飴也通重松
第1話
[蛍石]
草臥れた
紫鼠のソフト帽
夏めく風が 吹き込んだ
一朶の貰った紫陽花を
アイスクリンのように
そっと載せてみた
夜半に煌めく
甘い毒
・
[碧色のびいだま]
乾ききった横断歩道を
君と二人
上履きのまま駆け抜ける
もっともっと走るんだ
東へゆけば間に合うかもしれん
夏はまだ胡座をかいて
そこに座っているかもしれん
・
[嗚呼、アンタレス]
夏雲色の恋文を
犬歯で千切って飲み込んだ
明日にはきっと消えるだろう
蠍の周りをぐるぐる回る
星の子供になるだろう
昨日のお空は あなたの瞳
真昼の夢の藍風鈴
泳ぐ魚は琥珀のインク
便箋泳ぐ想いの魚
星の子供が走るのは
赤いお星がほしいから
彼の心臓が欲しいから
つるつる
くるくる
走るのだ
・
[感動の唄]
モルヒネの瓶を見てゐる
見てるだけ
手に取ろうとは思わない
離れる気だって起こらない
そのうち小さな褐色の
玻璃の小瓶が独りでに
つるり
ころころ
転がって
ぴしゃん
と
そのまま割れるだけ
それを黙ってただ見てる
茶色の小瓶はどこから落ちて
一体何処へ還るのか
只々
きらきら
睡るだけ
詩・夏が来るなら 矢野昴・飴也通重松 @10akam13fri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます