第5話

噴水広場へ向かうと、周りに人だかりができていた。

何をしているのか、何があるのか不思議に思い覗いてみると、ヘルドを含めた4人の男女がいた。

名前を見ると、ヘルド、カナ、シーナ、ランスロットであった。

何やら、ランスロットとその他3人で言い争いをしているようだった。


「ですから!僕のパーティーに入れば、レべリングが効率良く出来るのです!」


「嫌です!私達は私達でレべリングするので構わないで下さい!」


ランスロットの言葉に、カナが反論する。

次第にランスロットの顔には怒りの表情が浮かび、一触即発の雰囲気であった。

そして、遂にランスロットの怒りが限界に達し、武器を掲げて、


「そこまで言うならPVPです!4vs4でやって決めましょう」


と言った。

しかし、3人は呆れた様に、


「「「なんでそんな事しなくちゃいけないんだ?(の)(のかな〜)」」」


と言う。アレスは、


(なんて話を聞けない人なのでしょう。どうみてもランスロットが悪いのが分かりますね。)


と思いつつ、話しかけるのが面倒なのでこっそりと

《中々面白くなってますけど、これはどういう状況ですか。早く用件を済ませて下さい。》

というメッセージをヘルドに送り、様子を伺っていた。

するとヘルドはメッセージに気がつき、周りを見渡してアレスを見つける。

ヘルドが意地悪な笑みを浮かべたので、嫌な予感がして逃げようとしたが、一足遅かった。


「分かった。PVPをしようじゃないか。ただし…。」


と言われて一拍開け、アレスの首根っこを掴む。

皆の視線がアレスへと向く。


(あ…これオワタ。)


アレスは諦めた。

そして口を開き、


「俺らはコイツを加える。4vs4だから何も問題ないよな?」


ランスロットがニヤリと笑い、


「ええ、何も問題ありませんよ。(明らかに初心者じゃないか。これなら勝てるな。)お前ら、来い!」


そう、号令をかけると野次馬の中から人相の悪そうな男が3人出てきた。

イチロー、ジロー、サブローの3人である。

ありふれた名前すぎて、アレスは思わず吹いてしまった。

3人から睨まれて慌てて顔を繕い、カナとシーナを見ると2人とも口を押さえて小刻みに震えていた。

その様子を見たランスロットが再び額に青筋を立て、しかし怒りを押さえる。


「早く始めたいのですが。」


「ああ、悪い。」


一言、言葉を返しヘルドがこちらに振り返る。

少し身を寄せて4人で集まる。


「アレス。分かってると思うが、香奈美ことカナと、 ご存知お前の姉のシーナさんだ。」


「ええ、分かってます。それで、どうしますか?まあ、僕は貴方のせいで巻き込まれたんですけど。」


「まあまあ、といっても正直なところ負ける気がしないがな。βテスター2人にチート姉弟だからな。とりあえずは2人の戦闘能力と役割を把握したい。てことで役割とジョブとスキル、後種族を一通り教えてくれ。まずはシーナさん、お願いします。」


「はいは〜い。役割はサポーター、ジョブは呪術士、スキルは〈呪術Lv.1〉〈薬製作Lv.1〉〈状態異常効果上昇Lv.1〉〈短剣Lv.1〉〈隠密Lv.1〉〈並行詠唱Lv.1〉だよ〜。種族はシャーマンだよ。」


「なるほど、近接も一応できるのですね。なら、近接戦闘をしながら相手に呪いをかけたり、サポートもできますね。」


「もちろん!はい、次はアー君だよ。」


「ふふ、僕は秘密で。一応言っておくと攻撃役ですね。(アー君って…。)」


「じゃあアレスは、ランスロットとイチロー。シーナさんは、ジローとサブローで。俺とカナは一先ず様子見だな。」


「「「了解。」」」


「お〜い。準備出来たぞ〜。」


「分かりました。それでは始めましょう!」


ランスロットが半透明のパネルを触ると、ステージが入れ替わり、闘技場が広がっていた。

闘技場は直径200m程で、周りに障害物が無かった。

各々が武器を構えて準備が出来たところで、闘技場の中央に砂時計と妖精の様な姿をしたNPCが出現した。


「は〜い☆PVP専用AIのピクシーことピィだよ〜☆よろしくね〜☆ルールは4vs4のデスマッチ、ランスロットチームが勝利したら、ヘルドチームが一時的にパーティーに入る。ヘルドチームが勝利したら何を要求する?」


「俺らとは関わらないという事を要求する。」


「了解〜☆制限時間は、砂時計の砂が全て落ちきったら終了。フレンドリーファイアは有りで始めるけどいいよね?良かったら始めるよ〜☆」


両チームが同意し、PVPが始まった。

アレスは獣が檻から解き放たれたかのように、ランスロット達を目指して突進した。

4人がアレスを迎え撃とうと武器を構えて、各々の武器を振り下ろそうとした瞬間、ジローとサブローに異変が起こった。身体が全く動かないのだ。それどころか操られている様にも感じる。次の瞬間、ジローとサブローは同士討ちを始め、お互いの首を短剣で突き刺し、退場した。






ーーto be continued ーー

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