第七話 理想の在処
「ふぅんっ!」
皮の
「
横に転じ、脇に構えた
「ぬぉん!」
「チッ……!」
「おっと危ないなあ!」
一刀斎の腰めがけて、
体の重心とは
だがしかと
「いやあ、ほんと
「その
「
剣客なんか。そういうとおり、牛童子は
だが、その理由も分かる。なにせ、
一刀斎を越すほど恵まれた体格に体運びの
「なにせ
牛童子が身を大きく
だがしかし一刀斎は知っている。牛よりなおも恐ろしい、人馬一体の男の突撃を。
「とぉおう!」
一刀斎は転じて
「なぁんの!」
牛童子は腕を引っ込めて甕割を避ければ、勢いそのまま
だが。
「
「ぐむ……!?」
白黒させている目のど真ん中に、甕割を突き出した。しかし奥歯を噛み締めて
また、腕が飛んでくる。一刀斎はさっと牛童子の足を蹴り抜き、後方に飛んだ。
だが。
「ぐ、ん、えええええい!」
「ん、に……!」
するとあろうことか、牛童子は小指一本、第一関節の先のわずかな部分。そのむやみやたらとデカい巨体の内、
「くっ!」
牛童子を見れば頭を揺すって、こちらにゆっくり向き直った。
恐ろしい
それ
「大した腕前だな。相当な修行を積んだのだろう」
「当然だよ。君らみたいに武器を使う
だがしかし、感じ取れる感情は、不自然なまでにごく
目を
この牛童子には、「自」が感じ取れない。牛童子だけではない。思い起こせば、昨日の武芸者達もそうであった。あの狂気には、己を
「だけどまあ、君は少しぐらいやるってのは認めてあげるよ。他の連中はまるで手応えがなかったし」
一瞬見せた
「他の……?」
「ああ、ぼくに群がってた
牛童子が、腕を振るう。巻き込まれた空気が
確かに、あの男たちは弱かった。その
だが、今はそれよりも。
「……博士?」
気に掛かる言葉であった。手を加えてもらったとは、どういう意味だ。
「博士はスゴい
博士、シキガミ。もはや、人の
なるほど。昨日の奴儕の実力に見合わぬ力と、並大抵の傷では動じないほど
牛童子もまた、その「博士」に力を与えられたのだと。……
「つまらん男だ」
「えぇ……?」
溜め息混じりに放った言葉に、牛童子が真っ黒い瞳をこちらにギョロリと向けた。
一刀斎は甕割を
「シキガミだの力をくれただの。気付かないか。お前は力を
「君は、なにを」
「お前はなにを
その
「……なにをって……そりゃあ君たちみたいに武器を我が物顔で振るって、強い気になった武芸者たちを
「強い気になっているのは、今のお前も同じだろうが」
「────っ」
牛童子の肩が、ピクリと跳ねた。
「確かに人の身とは別に
だがな、と一刀斎は言葉を続ける。
「武器に込めて振るうのは、
「お、前…………!」
――
誰かが人の身を外れた力を与える引き替えに、肉の内側、気が遠くなるほど
「……本当に! イヤな奴だなあ!! その減らず口、聞けないようにしてやる!!!」
吐き出された
だがしかし一刀斎は、この
「なにを笑ってるんだよお!!」
だがどうやら、当の本人は振り切ったことにも気付かぬようで。力を込めてその肉体を、より
なにを笑っているのか? 当然、決まっている。
「戦いとは、こうではなくてはならないからだろうよ──!」
戦いとは、熱と熱のぶつかり合いでなくてはならない。
邪魔物を斬る作業染みた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます