例えば僕があなたに「助けて」と言えば、あなたは助けてくれたのだろうか。
夜晴 -ヨバレ-
例えば僕があなたに「助けて」と言えば、あなたは助けてくれただろうか。
目を閉じても
「あんたなんか生まれて来なければよかったのに……ッ!」
振り上げられた手は
当然、小学生に上がりたての僕に、その
「ごめんなさい」
僕はとにかく
謝りさえすれば、自分の
「ごめん、なさい……」
必死に必死に必死に必死に必死に謝った。謝り続けた。
それでも母――あぁ、いや……女性の
まるで
僕にできるのは――
「ごべんなざい……ごふっ、ご――ごめん、なざぁい……っ」
――謝ること。
ただ、ひたすらに。
それだけだ。
気付けば僕は自分の
(………あれ?)
目覚めた僕の体を取り巻いたのは、名前の知らない感情だった。女性の顔を見ていると、なんだか体の
無意識に歯を
(あぁ、これが殺意か―――)
殺さなくてはいけないという使命感に
「ハァ――ハァ――ハァ――……」
これまで呼吸に対して意識を向けたことがあっただろうか。
どうすれば気配を消すことができるだろうか。
どうすれば素早く刃を届けることができるだろうか。
どうすればこの気持ちから解放されるのか。
ただ、距離を詰めようとする足が妙な寒気によって固まる。あと数歩近付けば息の根を止めることができる距離――もどかしくなって自分の足を殴ったとて、まるで
少なくとも、
全てが
(どれだけ弱いんだ、僕は……。)
今まで振るわれてきた暴力に対する怒りよりも。体の
何よりも、この一歩が踏み出せない自分の
(こんな僕として生きるなら………)
母に向けられていた刃はいつしか自分の首元へ。
最後に見たのは飛び散る
例えば僕があなたに「助けて」と言えば、あなたは助けてくれたのだろうか。 夜晴 -ヨバレ- @yobare
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