さよなら、俺の異世界ハーレム

最上へきさ

帰還魔法の発動まで、残り三分

前回までのあらすじ:

俺の名前はマサキ・タダヒコ!

ごく普通の高校二年生だった俺は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。

「伝説の勇者」としての使命を与えられた俺は戸惑いながらも冒険の旅に出た。

たくさんの出会いと仲間達に支えられて、ついに俺は魔王を倒し、世界には平和が訪れた。


そして無事、帰還魔法も完成し、俺は元いた世界に帰ることになった……


--------


――長い旅が終わった。

振り返ってみるとあっという間だったような気もする。

だけど、本当にたくさんの出会いと別れがあって……今はまだ、うまく言葉にできない。


旅の間、ずっと俺を支えてくれた聖剣エクスカリバーを、もう一度台座に突き立てる。

聖剣が持つ魔力によって、帰還魔法は完成した。


床に広がる魔法陣が、その証だ。

発動まで、残り三分といったところか。


これが本当に、最後のひととき。


「本当に行くんだな、タダヒコ」

「ああ。さよならだ、キャロル」


俺の肩を叩いたのは、女戦士のキャロル。

故郷を滅ぼした魔王に復讐するため、討伐軍に参加した凄腕の剣士だ。


キャロルは、ぐっと俺の肩を引き寄せて、


「結局、お前との決着がつけられなくて、残念だったよ」

「何言ってるんだよ。君の剣技に俺が敵うわけない」

「ふふっ。違うよタダヒコ。そっちじゃない・・・・・・・


キャロルは戦士らしく均整の取れた身体と、不釣り合いなぐらい豊かなバストの持ち主だった。

(ついでにいうと、故郷のしきたりでとても面積に少ない鎧を愛用していた)

たった一人で討伐の旅に駆り出された俺を最初に支えてくれたのも、彼女だった。


健康な十七歳だった俺が、旅路の中で彼女と身体を重ねたのは必然だったかもしれない。

普段は硬派で強気な彼女がベッドの上ではあんな子猫ちゃんだったなんて……


「ちょ、よせよ、こんなところで」

「最後くらい許してくれ。……わ、私だって恥ずかしいんだからなっ」


キャロルは顔を真っ赤にして、もう一度俺の背中を力強く叩いた。


「次、いいかしら、キャロル?」

「ああ。悪いな、ナタリア」


盗賊のナタリアは、俺の手をしっかりと握って、


「たくましくなったわね、タダヒコ君。ボロボロでわたしのアジトに転がり込んできたのが、まるで昨日のことのようなのに」

「俺もそう思うよ。君が助けてくれなかったら、この旅は、あの時に終わってた」


世界に点在する盗賊ギルドでもトップの腕前を持つ、”漆黒”のナタリア。

彼女のステルススキルと敵感知スキルで命を救われた回数は、両手両足でも数え切れない。


ナタリアは、その厚くセクシーな唇を俺の耳元に寄せて、


「あなたの成長は、本当に素晴らしかったわ。戦闘はもちろん、あっちの方・・・・・もね」

「は、ははは、あ、ありがとう、ナタリア」

「あなたがいなくなるなんて、本当に寂しいわ」


ナタリアのステルススキルは本当に優秀だった。

いつの間にか俺のベッドに潜り込んでいて――キャロル達の気配を感知した瞬間、あっという間に姿を消していたのだ。

その上、闇の世界で培ってきたアブノーマルな経験(特にその豊満さを活かしたテクニカルプレイ)は、健康な十七歳男子の俺をめくるめく官能の世界へ――


「ちょっとナタリアさん、距離が近過ぎますよ!」

「あらごめんなさい、ワンダ。あなた、最後まで怒りっぽいわねえ」

「ナタリアさんこそ、最後までタダヒコさんにちょっかいかけて!」


賢者のワンダ。

世界樹の森で研究を続けてきた変わり者のエルフで、魔王の弱点を見事に見破ったパーティの頭脳。

帰還魔法も、彼女が創り上げた魔法の一つだ。


「あの……タダヒコさん。わたし……その、うまく言葉が見つからなくて」

「言わなくていい、ワンダ。伝わるよ」

「……はい。その。ぎゅってしてもいいですか?」


……まあ、ここまで俺の話を聞いてくれた人なら予想はついてるかもしれないが。

ワンダは俗世と隔離された工房でずっと暮らしてきたエルフで、その、つまりは、俺が初めての相手・・・・・・だったそうだ。


キャロルやナタリアと比べて平坦な自分の胸を恥じらう彼女を見たときの俺の気持ち。

そして、草原に落ちた赤い点を見つけたときの俺の気持ち、分かるだろうか?


「……温かいです、タダヒコさん」

「ああ、君もね」


名残り惜しみながら、ワンダの肩を離す。

それから俺は――見送りに集まってくれた人々の顔を見渡した。


聖女王とその娘、大森林の長と側近達、アーラーンの街で出会った恋人達、砂漠の民の行商、古代遺産に眠っていた古の魔導人形達、火山地方のドワーフ族……


「みんな、ありがとう。絶対に忘れないよ」


涙ながらに手を降ってくれる人々。

一歩踏み出してきたのは、聖王の娘――アナスタシア。


「タダヒコ様。ここに集まって人々の――いいえ、この世界に生きるすべての生命を代表して、お礼を言わせてください。魔王を倒し、邪神をも退けた伝説の勇者様」


ピンと伸びた背筋、波打つ金髪。

この世界を訪れた俺が、初めて出会った少女。


「俺一人の力じゃありません。仲間と、みんなと――あなたのお力添えがあったからです」

「ご謙遜が過ぎますわ。あなた以外の誰にも、この世界を守ることは出来なかったでしょう」


彼女は、まさに聖女の微笑みを浮かべながら、


「例え元の世界に帰られても――いつかまた、この世界に戻ってきてくださいね」


自分のお腹を優しく撫でて、一言。


「その時にはきっと、


…………


えっ?


「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」


……魔法陣の発動まで残り三十秒。

俺は元の世界で教わった保健体育の知識をフル動員して、


「えっと、その、ええと、俺? 俺の?」

「ええ、忘れもしませんわ、魔王討伐祝賀パーティでの、あの熱い夜を」


残り二十秒。


「待っ、ちょっ、あ、待って待って待って、待ってワンダ、魔法陣壊さないで」

「……タダヒコさん」

「よせキャロル、聖剣は俺以外には引き抜け――あっ」

「タダヒコ」

「え、なんで動けない、あっ離せナタリア、首、首絞まってる」

「タダヒコ君」


残り十秒。


「あの、違、ちょっと大森林のエルフまで、あ、違うんだ恋人達、君の彼女とはちょっとしたアクシデントで、砂漠の民も、あの、君達の掟とか知らなくて、ちょ、魔導人形達、お前誰にそういうプログラムを、あっ、ドワーフさん、マジでヤットコだけは勘弁して、ゲッ――嘘でしょ聖女王様まで! だって! あなたが娘も一緒にって――えっ、ま、あ、あ」


残りゼロ秒。




――長い旅が終わった。

振り返ってみるとあっという間だったような気もする。

だけど、本当にたくさんの出会いと別れがあって……今はまだ、うまく言葉にできない。


ただ一つだけはっきり言えるのは。


俺の戦いはまだまだ終わらないということだ。

少なくとも、異世界から俺達の世界にやってきた、邪悪な侵略軍を退けるまでは!

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さよなら、俺の異世界ハーレム 最上へきさ @straysheep7

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