第6節

 朝の六時半。コダマはアラームで目が覚めた。

 眠気で怠い体を起こし、洗面所へ向かう。顔を洗い歯を磨き、郵政公社の制服に着替えた。玄関を出る段になり、彼は玄関の写真立てに目をとめた。


 いつもは無視していたが、その日は違った。

 写真は二つ。赤ん坊の自分と両親の写ったもの。そして幼少の自分と両親が写ったもの。タイムスタンプはそれぞれ二五三三年九月八日、二五三九年九月八日となっている。


 コダマはフッと笑った。それと同時に、言いようのない寒けに襲われた。本当に歴史を変えてしまったのだ。あの暴動で命を落とすはずだった父親が、写真の中で笑っている。


 だが、それ以外は何も変わっていない。彼は今日も勤務に出かけ、いつものようにスラッシュとともに宇宙を駆け巡り、配達をする。そして両親は、おそらく五百年前に死んでいる。どのみち状況は変わらない。あるいは学者の言うような、因果の調整がどこかで起こったかもしれない。だが彼は知るよしもない。知りたくもない。ただ一つ、彼の知る男の悲劇的な結末が消えただけで、満足だった。

                                     了

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