一日局長

第1節

 光速船は六輪のタイヤを出して、岩と砂ばかりの道を蹴っている。太陽は中天にあるというのに、日の光は夕日のように赤かった。


「こんな一日中夕日みたいな日の光で、住民は寂しくないのかな」


 スラッシュは窓から外を眺めていった。ハンドルは珍しくコダマが握っていた。


「この星にいる人間はほとんどプラチナ鉱山で働いているからな。外の景色なんて気にしないんだろうよ」


 山の麓から、宇宙に向かって何かが射出される。プラチナ鉱石が満載されたカプセルが、マスドライバーシステムによって宇宙に打ち上げられているのだ。あちこちの鉱山でそれが行われているため、この星の空は広範囲で船の航行が制限されていた。だからコダマ達も、陸路を行っている。


「見た? 今の見た? びゅーんって! すごいね!」


「ああ見た見た」


 船は無舗装の道を二百キロ走り、目的の住所に到着した。町外れにぽつんと佇む、小さな木造家屋だった。


「スラッシュ。そこで待ってろ」


「はぁい」


 コダマは小脇に荷物を抱えて家へと近づいていった。そして、数分後には荷物を抱えたまま戻ってきた。


「どうしたの?」


「留守だ……」


「じゃあ他のところに行こうよ」


「いや。これっきりなんだよな」


「え? じゃあどうするの」


「出直す訳にはいかないしな」


「行って戻ってきたら、十数年経っちゃうからね」


「……寝るか」


 コダマは懐から、長期航行用の睡眠剤を取りだした。


「ちょ、ちょっとまってよ! 寝るの?」


「悪いかよ」


「その薬、僕には効かないんだけど」


「そりゃ残念だったな」


 コダマは水も使わず、一息に睡眠剤を飲み込んだ。


「あっ」


「じゃあまたあとでな」


「ひどいや。君が寝ている間どうしろっていうんだよ」


「二キロ先に町がある。そこで……飯でも……食ってろ……」


 コダマはかくり、と、首を落として眠りに入った。


「……ひどいなぁ」


 スラッシュは眉間に皺を寄せた。そしていそいそと出かける準備をした。

 支給品のポーチに財布をつめ、船にロックをかけて、スラッシュは町へと歩き出した。

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