第4節

「それで代わりに、配達員達に手紙を書かせているわけ?」


 スラッシュは尋ねた。


「そうだ。俺たち郵便船員は、光の速度で飛び回っている。光の速度に近づけば近づくほど、船内の時間は船外の時間に比べてゆっくりと進むようになる。『時間の遅れ』って奴だな。すると、俺たちは普通の人間より長寿ってことになる。不老不死の彼女と良いバランスが取れると思わないか? ……さあ話したぞ。次はお前の番だ。手紙を書け」


「ゴメンねぇ。僕、地球の言葉の読み書き出来ないんだァ」


「……」


「でも安心して! 僕が喋るから、コダマはそれを書きとめてよ!」


「お前!」


「えーと。拝啓、不老不死の少女さま。僕は地球外生物のスラッシュといいます……」


「ちょっとまて!」


 コダマは慌てて便箋とボールペンを取りだして、スラッシュの言葉を書きとめはじめた。


   *


 郵便船は通常の巡航速度にまで急減速をした。灰色の岩と、それを僅かに彩る草が生えた惑星が目の前にあった。


「よし。座標XXXXに降ろしてくれ」


 郵便船は降下を開始し、大気を滑るようにして座標点へと向かう。


「あれがその家さ」


 コダマが指さしたところに、確かに小さな木造の家があった。

 郵便船は着陸脚を展開し、ゆっくりと垂直着陸を行った。


「さて……。お前はここに居て、そこから見ていろよ」


 コダマは配達員の帽子をかぶり、先だって配達員から集めた手紙の入った菓子缶を持った。


「美味しいところは独り占めってわけかい?」


「まぁな」


 船のハッチが開き、湿った空気が入り込んでくる。コダマはそのハッチからひらりと飛びだし、芝生のような草が生えた地面に着地した。そしてぽつぽつと、家へ向かって歩き出した。


 誰かが家のドアを半開きにして、コダマを見ているのが、スラッシュには見えた。


「郵便です」

                                     了

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