第十二話 真冬の、セーブペーパーに秘められていた想い。
日記帳を
お話が一旦停止しても、時計は針を刻むのを止めない。声はせずとも、様々な効果音が空間を埋めている。空間の節約? 日記帳に描かれた時代もそうだけど、最近の曲は、間奏部分に歌詞を埋めてくる傾向が増えたような気がしてならない。
……間違っていたら、ごめんなさい。
でも共通の点は、
それから、別の理由と思われるけど、
この日記帳の丸っこい文字が、隙間もなく埋め尽くされている。
読むのが大変……。
きっと
「ふう……」
と、
……で、気になることがあったから、確認しようと思って、日記帳をペラペラ捲っていて……あった。――第一話で、『瑞希ちゃん』が夜の九時から見たホラー映画は、第八話で見たアニメと同じで、やはり『十三番目の魔法学園』だった。
【……察しの通り、二〇一六年の
第一話はスペシャル。
夜九時から十一まで放送されていた。
第二話からは……夜十一時。
そんなに遅い時間だったかな?
「瑞希、本当に十一時からだった? 『十三番目の魔法学園』」
と、質問する。気になって仕方がないから。
「……もしかしたら、十時だったかもしれない。十一時になると、お家が真っ暗になってたから」と瑞希は答えた。……納得だ。この子は暗い所が苦手だから。
――まあ、些細なことだけど、疑問が解決したところでお話の続き。
(ここから、十歳の妙子視点だ)
いつかの白昼、交わされる言葉……。
いつかの瑞希も、同じようなことを
「ねえ、お兄ちゃん。どうしたら、お友達できるの?」
「それは妙子が勇気を出して、元気いっぱい話しかけることだよ」
「あたしにできるかな……?」
「できるさ。お兄ちゃんとなら、こうやって話できるだろ?」
「うん……」
「それと同じさ」
「うん、やってみる」
お兄ちゃんの名前は、漢字一文字で『
六棟の一〇二号室が、新しいお家となった。
これを機に心に決めたことがある。……変わりたい。
――それは、お友達をつくること。
あたしは今まで、……内気で、人に話しかけることもなく、同級生の女の子たちが仲良く会話しているのを、ただ遠くから見ていた。羨ましがっているだけだった。
……でも、それも、この間までのお話。
今、あたしにはお友達がいる。足取り軽く、もしかしたらスキップの一種。
今日は一九九九年のXマスイブ、金曜日。
息は白いけど、ハートぽかぽか。冬休みに入る。
その子のお家は、同じ公営住宅。四棟の三〇三号室。
誕生日がひなまつりよりまだ先だから九歳の女の子。
またまた序でに、あたしが一足お先に十歳になった。
そうこうしているうちに今、その玄関の前に立った。
……そう。この瞬間を待ち侘びていた。
――もうすぐよ。
意を決し、チャイムを鳴らした。
ドアが開く。
「どなたですか?」
えっ? 男の子が出て来た。……思う処、ボーイフレンド? 真っ先にその答えだけれども……
「あ、あの、瑞希さん、おられます?」
と、ともあれ、そう訊ねる。
頭の中が真っ白の中、男の子はニッコリ笑って、次のアクションへと移る。
「お~い瑞希、お友達が来たぞ!」
その呼び声とともにパタパタ……と、文字が浮かびそうな効果音とともに、
奥の方から足音が、存在感を満載にして近づいてくる。
「妙子ちゃん、上がって上がって」
と、そんな余韻も束の間に、……いいえ、全くなしに、
瑞希ちゃんは、あたしの手をグイグイ引っ張って、
ここから見えているとはいえ、お部屋まで連れて行った。
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