料理が死ぬほど苦手で嫌いな人間の言い訳あるいはその原因
三谷一葉
最後三分の油断
自分で言うのも何だが、私は料理が苦手である。
小説や漫画などでよくあるようなポイズンクッキングとまではいかないが、「焼けば生肉茹でても
手先が絶望的なほど不器用であるのが原因だと私は睨んでいるが、我が母の教え方にも問題があったような気がしている。
何しろ、食材の単位が「鍋を早めに一周」「水はシャバシャバにならないくらい」と抽象的で、大さじ小さじといった言葉は聞いたことがない。
かつて母に教わりながら鶏肉のケチャップライス作成していた私は、母の「フライパンにケチャップ一本」を大真面目に信じて、本日封を切ったばかりの新品ぴかぴかのケチャップを丸ごと一本フライパンにぶち込もうとしたことがある。半分を過ぎたあたりで母にケチャップの容器を取り上げられ、めちゃくちゃに怒られたが、すでに後の祭りで結果は大惨事だった。
母曰く、「フライパンにケチャップ一本」の正解は、「フライパンの上で縦に一本ケチャップの線を引く」ことであった。それならそう正確に言ってくれれば良いのに、母によると勝手に勘違いして確認もせずに実行した私が悪いのだそうだ。なんて理不尽な。
年頃の娘が味噌汁のひとつも作れないとなれば何かと苦労するだろうと、母は母なりの愛情で私に料理を仕込もうとしたのだが、一時が万事この調子だったので、私は料理が苦手な上に嫌いである。大っ嫌いである。やらなくて良いのなら一生やりたくないと思うほど嫌悪している。
「焼けば生肉茹でても
中火で五分フライパンで焼くと書いてあったからその通りにしたのに、八割以上の確率で
私がやったら大体火が通らないからと、少し長めに加熱するようにしたところで、何も解決しなかった。
「焼けば生肉茹でても半生、野菜切ったら全て繋がる」から「焼けば黒焦げ茹でたらグズグズ、野菜切ったら全て繋がる」にジョブチェンジするだけである。
料理の女神に呪われているとしか思えない。前世で何かやらかしたんだろうか。例えば着替えを覗いたりとか。
料理の女神に忌み嫌われている私だが、そんな私でも何とかなる食べ物がある。世の中高生に大人気、大人も大好きなカップラーメンだ。
調理方法は非常に簡単。お湯を沸かして、カップの内側の線まで注いで、蓋をして三分待てば良いだけである。
「焼けば生肉茹でても半生」あるいは「焼けば黒焦げ茹でたらグズグズ」の呪いに掛かっている私も、これだけは失敗したことがない。お湯を注いで三分待てば、あったかくて美味しいラーメンにありつけるのだ。
カップラーメンを発明した人は天才だと思う。料理の女神の呪いにも打ち勝つ発明。人類の叡智だ。
毎日食べるのはさすがに塩分とかやばいと思うんだけど、定期的に食べたくなるんだよね、カップラーメン。うっかり衝動買いしちゃった。お湯を沸かして、カップの内側の線まで入れて、後は三分待つだけ。
…………。
毎回思うのだが、この三分が結構長い。三分。百八十秒。
ただ待つだけの時間は苦痛である。空き時間を有効活用せよと何処かのエラい人が言っていたような気がするし、待っている間に何か出来ることはないか。そう言えば、今カクヨムでカクヨム三周年記念選手権が開催されていた。私の趣味は読書である。たまに物書きの真似をして、Web小説サイトに自作を投稿することもある。確か今回は短編のキャンペーンだった。私も自作をいくつか投稿している。普段は鳴かず飛ばずだが、お祭りキャンペーンのおかげでいつもよりは読んで下さる方が増えているような気がする。もしかしたらコメントとかあるかも。レビューされちゃってたりして。よし、ちょっとカクヨムを覗いてみよう。
~15分後~
教訓!
カップラーメンを作る時には、三分でタイマーを設定すること!!
伸びて冷めたラーメンはまずい!!!
料理が死ぬほど苦手で嫌いな人間の言い訳あるいはその原因 三谷一葉 @iciyo
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