特殊な能力を持ち、ある種の警察組織に属する青年と少女のふたり組が、連続殺人事件に挑むお話。
異世界ファンタジーです。一見ミステリ風の導入ですが、どちらかといえばアクション主体の物語。といって派手にバリバリ戦うわけではなく、撹乱や諜報向きの能力を駆使し、創意工夫で危機を解決していくお話です。
目を引くのはなんといっても登場人物の多さ。見ようによっては群像劇のようにも見えるほどの多彩なキャラクターたちを、でもあくまで主人公である「仮面」の視点からの物語として描いているところが特徴的です。もちろん主人公以外の人物については(少なくとも群像劇のようには)掘り下げられてはいないものの、でもストーリー自体は仮面の物語としてきっちり完結・完成されているため、主人公以外の人々の事情については、むしろ想像の余地として働くところが素敵でした。
〈 以下はネタバレを含みますので注意! 〉
仮面の出自がもともと上流階級、すなわち奴隷制度の恩恵に預かってきた階層の出、というのが重たくて好きです。おそらくは教育によって涵養されただろう彼の気品や性格はもとより、「坊ちゃん」なんて慕って援助してくれる人がいるのも、ひとえに階級制度のおかげという側面はまず否定できず……一見しただけではわからないところにある根の深い問題、それを飲み込んだ上でのコンビなのだと思うと、非常に感慨深いものがありました。ふたりの抱えたものを考えたら、単に気が合うだけのコンビではない。
とはいえ、その辺が全然主張してこないのもまた好き。主軸そのものはあくまで単純な勧善懲悪であるところが嬉しい、ファンタジーらしいファンタジー作品でした。