【決定版】異世界における時間の流れの方
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俺がルールだ!【その2】異世界における時間の流れ方。
「はーい、『
「はーい、『なろうの女神』でーす」
「──さあ、やって参りました、『KAC5』参加短編連作シリーズ、『俺がルールだ!』の第2話目でございますよ!」
「ふっふっふっ、今回のテーマはね、異世界系Web小説の作家だったら、読まないと大損をぶっこいてしまうことになるわよ!」
「と、申しますと、今回の『テーマ』は?」
「──ズバリ、【これぞ決定版】『異世界における時間の流れ方』よ!」
「……あー、確かにこれって、異世界系のWeb小説においては、何よりもまして、『統一ルール』を設ける必要のある、最たるものですよね」
「現時点において、『ルールが存在していない』というよりは、各作家ごとの『俺ルール』が乱立していて、収拾がつかない状況になっているからね。今回のエピソードで、まさしく『統一ルール』を決定してやろうと思っているのよ。何せここで定めるルールこそ、誰もが認める文字通りの『唯一のルール』とも呼び得るものなのであり、これに従うことによってこそ、絶対ただの一人も『損をすることの無い』、真に理想的な『ガイドライン』なんだから」
「『損をすることの無い』とは、具体的には、どういうことでしょう?」
「もちろん、『損をしない』ということは『得をする』ということであり、このルールに従えば、すべてのWeb作家さんのリクエストに応えられるってことよ」
「はあ? 異世界の時間の流れの方における、各作家さんの『俺ルール』が千差万別だからカオスと化しているのに、すべてのリクエストに応えられるですってえ⁉」
「ほんと、千差万別よねえ。しかも結局はそのどれもが、長期連載の途中で何らかの齟齬が生じてしまい、つじつまが合わなくなってしまうのだから、哀れなものよね」
「……あー、初期プロットに則って、作者に都合のいいようにストーリー展開できるように、異世界自体の時間の流れ方や異世界人や特定の魔族やエルフの歳の取り方を、特殊な形に設定するってのばかりが目につくけど、そういうのって結局、連載が長期化するほどに、作品そのものが初期プロットから乖離していくことで、作者自身で決めていた『特殊な時間の流れ方』がむしろ足かせになって、にっちもさっちもいかなくなってしまうのよねえ」
「そうそう、下手に余計な『自分だけの特別ルール』を作るから失敗するのよ。そもそもねえ、現代日本には物理法則──特に、『質量保存の法則』ってのがあるんだから、タイムトラベルや異世界転移などはけして為し得ず、現代日本人が物理的に肉体丸ごと、二つの世界の間を移動するなんてことは、絶対に不可能なのにねえ。唯一、精神的転移というか、ぶっちゃけると、『生粋の異世界人が、ただ単に自分を現代日本人の生まれ変わりだと妄想しているだけに過ぎない』ようなものである、異世界転生のみが、あくまでも『可能性の上の話』とはいえ、実現し得るわけ」
「──いやああああああああああああ、やめてえ! あなた、何てこと言うのよ⁉ 今この瞬間に、どれだけの数のWeb小説関係者を、敵に回したと思っているの⁉」
「はいはい、ちょっとは落ち着きなさいよ。──だったら、『精神的移動』限定とはいえ、二つの世界間を移動する際に、誰もが納得できて、しかも誰のリクエストにも完璧に応え得る、まさしく真に理想的な『統一ルールの決定版』を、ここで披露して差し上げあげましょうか?」
「……ようやく本題に戻りましたわね。それで、本当に、『誰のリクエストにも完璧に応え得る』なんてことが、実現可能ですの?」
「簡単なことよ、異世界への移動だろうが、現代日本への移動だろうが、どちらにせよ、移動する者が好きのように、どのような時点──『現代日本への帰還』の場合であれば、異世界へと旅立った連載開始時点どころか、それ以前の【書籍版書き下ろしの過去編】にしか登場しない時点にさえも、自由自在に戻ることができるし、これも人気作における予定外の【第二部】のスタート時点によくあるパターンだけど、再び異世界に訪れる場合も、前に異世界を後にした時点どころか、『一回目の異世界での到着時点』よりも過去の時点に到着して、誰も主人公のことを知らない状況で、また一から『異世界物語』を紡いでいくことすらできるの」
「なっ⁉ ──いやいや、確かにそのように『どんな時点へも移動可能』だったら、すべてのWeb小説のリクエストを完全にクリアすることができるでしょうけど、そもそもそんなこと、絶対不可能でしょうが? 何も『特殊なルール』を設けていない場合には、現代日本で10年がたっていたら、異世界だって10年がたっているはずなんだから!」
「はあ? あんたこそ、何言っているの? そんなこと、いつ誰がどこで決めたの?」
「えっ? い、いや、別に誰かが決める必要も無く、こんなこと常識でしょうが?」
「……やれやれ、あんたねえ、そもそも『異世界転生』という、非常識極まるものの話をしているのに、常識なんて通用するわけ無いでしょうが?」
「──‼」
「わかりやすい例を挙げると、さっきは私自身全否定したけど、もしも『過去へのタイムトラベル』が実現したとしましょう、あなたの理論だったら、一回『5年前の過去』に行ってしまったら、もう『5年前の過去』よりも過去の世界に行けなくなってしまうけど、そんなんじゃタイムマシンとしては『欠陥品』でしかないでしょう? 異世界だって同じことよ。もしもタイムトラベルや異世界転生などといった、常識の埒外のようなことが為し得るのなら、移動する時点を限定することなく、どの時点へも自由自在に行けなければならないの」
「……だから、何でそんなにわかには信じがたいとんでもないことを、実現できるわけなのですか?」
「実はそもそも世界というものは、現代日本とか異世界とかにかかわらず、そのすべてが『一瞬のみの時点』でしかなく、しかもその時点は最初からすべてが存在していると同時に、途中で改変されたり消えたりせず、未来永劫存在し続けているので、タイムトラベルするにしろ異世界転生するにしろ、それらを為し終えて現代日本に帰還するにしろ、いかなる時点であろうと、自由自在に選べるってわけなのよ」
「あらゆる世界が、『一瞬のみの時点』に過ぎないなんて、そんな馬鹿な!」
「はい、残りの字数がほとんどありませんので、ここからは押していきますよ! 本来なら量子論や集合的無意識論に則って、蘊蓄をくどくどと述べるところですが、そんなの読者の皆さんもうんざりでしょうから、おまえらも大好きな『ギャルゲ』を例に挙げて、簡単明瞭にご説明いたしましょう♡」
「……ギャルゲ、ですか?」
「ギャルゲは選択肢ごとに、シナリオが分岐しますよね? 実はそれこそがタイムトラベルや異世界転生を体現しているのであり、当然ゲームのプログラムの中には、分岐シナリオが最初から存在して、途中で消えたりはしませんし、この選択肢と選択肢との間隔を極限まで『0』に近づければ、一瞬のみの分岐シナリオが、無数に存在することになるでしょう? ほら、良くゲームを題材にしたラノベとかで言うじゃん、『現実世界とは、無限の選択肢が、一瞬ごとに存在しており、我々「プレイヤー」は、何の攻略情報も無しに、常にぶっつけ本番で挑まなければならない、この世で最低のクソゲーなのだ』って」
「……ああ、なるほど、選択肢によって選ばれた分岐シナリオを、異世界転生後の冒険物語等と捉えると、確かに異世界転生って、ギャルゲそのものだわ。そしてそんな選択肢が現実世界において本当に存在し得るのなら──そもそも異世界転生ができると言うことは、まさにその選択肢=世界の『分岐点』が存在することを認めているわけですが──、ギャルゲのように数を限る必要も無く、我々はいついかなる時でも、異世界転生やタイムトラベルを為し得るわけで、そのためには、分岐シナリオの長さ──つまり、まさしく『世界の長さ』は、『一瞬のみの時点』ではないと、いけなくなるってわけですわね? ──それで、『すべての時点は最初から存在していて、けして改変されたり消失したりすることなく、未来永劫すべて存在し続ける』のほうは、どういうことです? これだと『世界の改変』が不可能になるのでは?」
「できるわよ、分子が原子の結合の仕方によって、まったく別の分子になるようなもので、ギャルゲで言えば、勝手にプログラムを改変するまでもなく、ただ単に各選択肢における選択の組み合わせを変えていけば、当然それによってたどることになる分岐シナリオの組み合わせのほうも、自ずと変わってくるって次第なのよ」
「『世界の改変とは、けして世界そのもの──ギャルゲで言うところのプログラムそのもの──を変質させるものではなく、実はただ単に、ギャルゲの各選択肢において、選択する選択肢の組み合わせを変えて、その後たどる分岐シナリオ──イコール「一瞬の時点としての世界」──の組み合わせを変えることに過ぎない』って、これひょっとしてこの瞬間に、『異世界系Web小説』のみならず、『タイムトラベル小説』の概念そのものを、根底から覆してしまったんじゃないですか⁉」
「まあね。──いや、本当だったら、量子論や集合的無意識論に則って、論理的に証明すべきなんでしょうけど、それに関しては、同じ作者の、『転生法』や『わたくし、悪役令嬢ですの!』あたりを参照してちょうだいな。──とにかく今回は、この『世界というものは一瞬のみの時点でしか無い』理論に則れば、どんな世界のどんな時点へも自由自在に行き放題になると言うことだけを、覚えて帰ってね♡」
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