休日 昼前
ハーミットと学院長は、連れ立って街の中を歩いていた。
今日は休日で天気もよく、広場では青空市場が開かれている。
その隣の通りを歩いているので、広場ほどではないが、人通りも多く、活気にあふれている。
時々、学院長に気付いた人々が会釈をしたり、声をかけてきたりした。
一昨日、昨日といろいろあったので、学院長はハーミットにも休むように進言したが、全く聞き入れてもらえなかった。
やむなく休日だというのに早朝から、学院の図書室塔に同行した学院長だったが、フランも一人にしておくわけにはいかない。
フランが起きたらしっかり面倒をみてもらえるように、使用人たちに言ってきたものの、自分が帰ってくるまで大人しく屋敷にいてくれるとは思いがたい。
どうしたものかと困る学院長を見て、ハーミットは本でも読ませておけばいいと思い、執事に魔術学の本をフランの部屋に置くよう頼んできたというのだ。
さきほど、図書室でそれを聞いた学院長は、慌てて帰ることにした。
もともと昼までには帰ってフランをどうにかしなくてはと思っていたのだが、その予定を少し早めることにしたのだ。
「なぜだ。フランは魔術にしっかり興味を持っていたぞ。興味のあることが書いてある本なら、絶対読むだろう!」
「それはフランにはあてはまらないんです! フランは本よりも、実演・実技に興味を強くもつ性格です」
「セーラは私が読んでいた本も、興味深そうに覗いていたぞ」
「セーラとフランを一緒にしないでください。人が興味をもつ対象はそれぞれでしょうに。そんなものでは間違いなく退屈に拍車がかかって、抜け出してきてしまうかもしれませんよ」
学院長はこれみよがしに、大きくため息をついた。
「むう。しかし、お前の屋敷の使用人たちがしっかり見ていてくれるだろう。執事もいるのだから、大丈夫ではないか」
「私の屋敷の何倍も強固な守りの網をくぐって、抜け出していた方を知っていまして。子供の力を甘くみることだけはしないようにしております」
「む。なんだその目は」
昨日から
それだけ心配してくれたということなのだろうが、どうにも居心地が悪い。
「独断で行動したことは謝っているだろう」
ハーミットが口を尖らせてそう言った直後だった。
広場の方から、人々の悲鳴やどよめきが聞こえてきた。
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