第2話
まったりカメさん、歩みは遅い。それでも急いで息も絶え絶えウサギさん家に辿り着いたカメさんは、何やら助けを求めているようで。
「はぁはぁ……。ウサギさんや、助けてほしいのだけれども……」
「なんだい、なんだい、カメさん!? えぇ!? またどこか痛いのかい!?」
「いやいや。ワタシの体は大丈夫なんだけどね。お家が壊れそうで……」
「何ぃ!? そりゃいけねぇ。オレがちゃっちゃっと修理しといてやるよ!」
ウサギさん、急いで家を飛び出します。
「ウサギさん道具箱も持たずに行っちゃったよ。……あ、戻ってきたねぇ。おかえり。あぁ、また飛び出していっちゃったよ。本当にいつものことながら、ウサギさんはせわしないねぇ」
さて、カメさんも急いで家へ向かわねばとくるりと体の向きを変え、一歩踏み出そうとした矢先、ウサギさんが息を切らしながら帰ってきました。
「はぁはぁ……カメさんっ。急いで走って家の周りを三周したけどよ、壊れそうなの一体どこだい!?」
「えっとねぇ、それは軒下の……っ!?」
「えぇい! まどろっこしい!」
緊急事態とウサギさん、説明途中のカメさんをひょいっと小脇に抱えて猛ダッシュ。
ウサギさん、カメさん家に着くと小脇に抱えたカメさんを降ろして尋ねます。
「で、カメさんよ。一体全体、家のどこが壊れそうなんだい!?」
「えっとね、まずはね、ウサギさん。いいかい。最後まで、どうか怒らずに聞いておくれよ?」
「おう、俺が怒るわけがねぇだろう!?」
「ワタシのお家はね。どこも壊れてないんだよ」
「何ぃ!? それじゃあ、カメさん、オレに嘘ついたっていうのかい!?」
「だから違うんだよ、ウサギさん……どうか怒らずに最後まで話を聞いておくれ」
「はっ!? お、怒ってねぇよ! オレがカメさんに嘘つかれたくらいで怒るわけないだろ!」
だいぶ動揺して取り乱しているウサギさんですが、カメさんも早く伝えねばと必死でして。
「軒下のツバメさんの巣が壊れそうなんだよ、ウサギさん、助けて!!」
カメさん人生で一番の早口でもってお願いしたんですが、それを聞いてウサギさん驚いたのなんの。
「カ、カメさん、そんなに早口で喋れたのか。……はっ、そんなこと言ってる場合じゃねぇ! もちろん、オレに任せやがれってんだ!!」
それからは流石のウサギさん、ちょいと失礼するよと心配そうなツバメ親子に声をかけ、急いでトンカントンカン壊れかけの巣の下に薄い木の板を打ち付けます。
「ふぅ、とりあえずこれで雛が落ちることはねぇから安心しなっ!」
「ウサギさん……これを使っておくれ。これなら丈夫でもう壊れやしないだろう?」
カメさん、木のお椀をウサギさんに手渡します。
「そりゃ、そうだが。でも、それはカメさんの大事なお椀だろう? 大丈夫だ。板も広めにしといたから、これから親が子育てしながら補修するだろうよ」
「そうかい。なら安心だねぇ。……ありがとう、ウサギさん」
「なぁに、いいってことよ!」
ウサギさん誇らしげに胸を張り、格好つけようとしたちょうどその時、ぐぅぅっとお腹がなりました。
「おやおや」
「うぅ……」
決まり悪そうにしたウサギさん。カメさんは先程返してもらった木のお椀を、またウサギさんに差し出して、にっこり笑って言いました。
「やっぱり、このお椀は必要だったみたいだね。お礼にたっぷり、ごはんを食べていっておくれ。……ね、ウサギさん?」
それから、ウサギさんはカメさんの手料理をたらふく食べて、心もお腹もいっぱいになったそうな。
めでたし、めでたし。
せかせかウサギとのんびりカメ ぴけ @pocoapoco_ss
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