せかせかウサギとのんびりカメ

ぴけ

第1話

昔むかしのあるところに、せかせかウサギさんとのんびりカメさんがおりまして。正反対な性格の2匹ですが、とても仲良しでしてね。ある日のこと、カメさん家にウサギさんが訪ねてきたことから、この話は始まります。



「おぅ、カメさんいるかい? さぁ、ちゃっちゃと行って、ちゃっちゃと帰ってこようじゃないかい!」

「おやおや。なんだい、なんだい。あぁ、ウサギさんじゃないかい。まだ夜明け前だというのに、元気だねぇ」

「で、カメさん、どうすんだい!? 行くのか行かねぇのかどっちなんだい!?」

「んー。どこに行くのか、さっぱり分からないけどねぇ。まぁ、ウサギさんがこんな時間に訪ねてくるなんて、とっても良いところなんだろうねぇ。それなら、ワタシも行ってみようかねぇ」

「おう、そうこなくっちゃ、カメさんよ。じゃあ、出発するぞ。さぁ、行くぞ!」

「よいしょ。こらしょ。どっこいしょ」

「カメさんよ、早くしねぇと日が沈んじまうぜ」

「まだ日は昇ってないけどよぉ、ウサギさん」



そんなことを言いながら、ウサギさんとカメさんは出発しましてね。まぁ、とある昔話でしたら、ここでウサギさん、カメさん置いて突っ走っちゃうんですが、そこは長い付き合いの2匹。お互いにそこそこなペースで歩いていきます。そこそこっていうのは、ウサギさんはカメさんに合わせてゆっくりめに、カメさんはウサギさんに合わせて早めにって具合ですな。順調に向かってた2匹なんですが、途中から何やらカメさん足がズキズキ痛みはじめまして。



「……ちょいと。ウサギさんや」

「おう、どうしたカメさんや?」

「来しなのどこかで足を怪我したのかねぇ。さっきから、足がなんだか痛くてね。まぁ、大丈夫だと思うけどねぇ」

「なんだと!? それは大丈夫じゃねぇ!! 一大事じゃねぇか!! こうしちゃおれねぇ」

「なに、少し休めば大丈夫だよ……ってウサギさん、あー、どっかに走っていっちゃったねぇ」



 ひとりぼっちならぬ、1匹ぼっちになったカメさんは甲羅の中に引っ込んで休むことにしましてた。そのうちカメさん、うとうとーっと眠くなってきたんですが、誰かがコンコンと甲羅をノックする音が聞こえまして。はいはい、どなたですかーって顔を出したら、そこには汗だくのウサギさんが立っているじゃありませんか。カメさん驚いたのなんの。だって、今までどんなに早く走っても汗ひとつかかなかったウサギさんが汗だくなんですからね。



「ウサギさんや、ウサギさん。そんなに汗だくになっちまって、一体全体どうしちまったのさ?」

「そんなこたぁ、いいんだよ。さぁ、カメさん、急いでこの薬をつけるんだ。どこが痛むんだ、見せてみな。あぁ、もうオレが塗ってやるからな。さぁ、どうだ!? 痛みは消えたかい!?」

「ウサギさん、いくらなんでも、そうすぐに効果が出るわけが……おやおや、これはすごいねぇ。さっきまでの痛みがどっかにいっちまったよ」

「おう。そりゃよかった。じゃあ行くぞ。今度はゆっくりゆっくり行くぞ! さぁ、行くぞ!」

「なんだか、せわしないゆっくりだねぇ。そういえば、ウサギさんや。さっきの薬はどこで手に入れたんだい?」

「なぁに、今から行く温泉村の有名な薬さ」

「おやおや、今から行くのは温泉だったのかい」

「おう。そうだぞ? 最初に噂の温泉村に行くぞって言ったじゃねぇか。途中で迷子になっちまったが、ひたすら全速力で走ってなんとか着けたんだ。だがよ、そのヘトヘトになったオレの疲れも一瞬で吹っ飛ばす良い湯だったぜ。そのおかげで予定より早くカメさんのところにたどり着けたしな」

「そうだったのかい。ウサギさんや、ありがとうね。でも、じゃあ、もう行ってきて目的の温泉に浸かってきたんなら、ウサギさんは帰っちまうのかね? そうなると、んー、温泉村までの道をワタシは知らないから……そうだね、ウサギさんと一緒にワタシも帰るとするかねぇ」

「おいおい、何を言ってるんだい、カメさん。カメさんは温泉にまだ浸かってないだろう? それにオレ全力疾走して汗だくだし、また一風呂浴びたくなってウズウズしてきたぜ」

「そうかい、そうかい。なら、噂の温泉村に一緒に行くとしようかねぇ」

「その意気だ、カメさんよ。安心しろやい。なぁに、さっき行ってきたばかりだ。道案内は任せろやい」

そう言って再び歩き出した2匹は、温泉村に無事たどり着き、温泉を満喫したそうな。


めでたし、めでたし。

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