「それっぽいエッセイを書く時のルール」みたいな分かりやすいタイトル

木船田ヒロマル

それを補完するサブタイトル


 冒頭で「それっぽいエッセイを書く時にルールはあるか?」というような主題に直結する疑問を投げかけてはどうか?



 私はかつて、エッセイの冒頭で読者に対して疑問を投げかけた後、続けて具体的な自分の経験談を書いたことがある。


 それは例えば「私は子供の頃、玄関の水槽で八百屋で買ったドジョウを飼っていた」というような、想定する読者に対してマウントを取ることのない、尚且つ「おっ、それってどういうこと?」と思えて先を読みたくなるようなエピソードが望ましい。


 当時、小学生だった私の暮らしていた時代はバブル前夜の好景気に乗ったペットブームで、富裕層から始まったそれは庶民にまで波及し、私の友人たちも様々なペットを飼っていると互いに自慢しあっていた。

 私の通う学校では、こと熱帯魚が人気で、庭付き三階建ての家に住む友人の(恐らく父親の)美しい水草の生い茂る煌びやかなアクアリウムに幼い私はいたく感動したものだった。

 とは言え、駄菓子屋の買い物も不自由する私の小遣いでそんな高額維持費を要するレイアウトが作れる道理もない。考えた私は、金持ちのボンボンたちが手を出さない変わった魚を飼うことで彼らに対抗し小さなプライドを満足させようとした。近所の八百屋の店先で発泡スチロールの箱で生きたまま売られていた柳川鍋用のドジョウに目を付けたのである。

「すみません、ドジョウ百円分ください」

 と店主に伝えた時、店主は困ったような顔をしたが、素手で七匹のドジョウをビニール袋に入れると、ホースから新しい水を入れて輪ゴムで閉じ、私に持たせてくれたのだった、と言ったようなほのぼのエピソードなどが丁度いいだろう。


 次に、真顔で真面目なことを言い出すのである。


 欧米などに目を向けて、具体的な統計データなどが提示できたりするとその効果はより確かなものになると、数々の他のエッセイが証明している。


 以下は、WHOによる喫煙率の調査の男女別ランキングの上位三ヶ国とその喫煙率である。


男性喫煙率上位三ヶ国

1位 東ティモール 78.1%

2位 インドネシア 76.1%

3位 ボリビア 67.3%


女性喫煙率 上位三ヶ国

1位 モンテネグロ 44.0%

2位 ナウル 43.0%

3位 セルビア 37.7%


(2016年 WHO調べ)

参考:WHO(世界保健機関)World Health Statistics(世界保健統計)2018年版。


 ここできちんとした資料からのデータを提示し、読者に「へぇー」と思って貰うことで、なんか良いもの読んだな、という気持ち──「得した読後感」を演出する意図がある。


 今回取り上げたのはエッセイの主題と全く関係ない統計データであるが、実際にそれっぽいエッセイを書く時はその主題に関わる統計や資料を取材すると更に有効だろうことは言うまでもない。


 ラストに向けて、結論に繋がる何かいい話を語るか、キメ台詞を言いたい。


 残念ながら、色々思い出そうとしたものの、パッと思いつく「いい話」がない。

 だが私は、さも自分が体験したかのような創作いい話をここで語らず、パッと思いつく「いい話」がないことを読者に正直に告白した自分を誇りたい。

 SNSの発展と隆盛にともない、フェイクニュースが政治にまで影響を及ぼすと警鐘が鳴らされている今。

 それっぽいエッセイを書く為とは言え、安易に「いい話」のウソ実話を書かない自分でいたいし、これを読む読者にもそういう世間に恥じない人間であってほしい。



 冒頭で「それっぽいエッセイを書く時にルールはあるか?」というような主題に直結する疑問を投げかけてはどうか、と私は疑問を投げかけた。


 投げかける疑問には、答えがあるべきである。

 それが用意できないらならば、龍頭蛇尾になるような大仰な疑問の投げ掛けはすべきではない。

 それは、それっぽいエッセイを書く時に忘れてはならない、大切な遵守すべきルールの一つなのである。

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「それっぽいエッセイを書く時のルール」みたいな分かりやすいタイトル 木船田ヒロマル @hiromaru712

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