エピローグのその後に

「今日はスランヴァスキーの谷に着いたところからだよ」


 芯が白峯神社の縁側に座ると、横からモモが声をだした。目をキラキラと輝かせながら、芯が話す話を今か今かと待ち受けていた。


 それは、モモだけではなかった。白峯神社の中には何人もの子供が集まり、芯を中心に半弧上に広がっている。少し気恥ずかしく思いながらも、嬉しそうに芯は話を始めた。


「お前、興味あんの?」


 座って話を聞いていた子供たちの後ろに成谷は立っていた。


「まあ、無いと言ったら嘘になるな」


 その成谷の横で砂田は腕を組みながら芯の話を聞いていた。


「この話を信じるのか?」

「別に信じるとは言っていない。信じないとも言っていないけどな」

「相変わらずだな」


 砂田を横目に、成谷は小さく笑った。


 白峯神社に温かい風が吹き込んだ。成谷は子供たちに向かって楽しそうに話し、子供たちも楽しそうに聞いている。成谷と砂田は少しだけ後ろで、暖かく見守っていた。


 太陽が次第に傾き始め、芯の話はお開きとなる。いつも通りに口々と文句が飛び交う中、なんとか成谷と砂田がそれを諫めた。


「マナトくん、迎えに来たよー」


 白峯神社入口から、可愛らしい雰囲気の女性が顔を出した。


「あ、伯母さん」

「あれ?計くんもいたんだ」


 少し驚いた顔で佐知は砂田を見た。


「ええ、友達が話しているので」

「そうなんだ。じゃあ、次から計くんに迎えをお願いしようかしらね」

「おばさん!俺、迎えなんていらないから!一人で帰れるし!」


 砂田と佐知の間に割って入り、マナトは自信満々にふんぞり返った。


「お前ひとりの時はいっつもの俺にくっついてくるじゃねえか」

「兄貴うるさい!!!」


 マナトは顔を赤らめ、成谷をグーで殴っていた。芯はそんな様子をほほえましく見ていた。胸の内が暖かくなり、幸せな気分になる。


 そうした光景の奥、階段からもう一人の女性が上がってくるのが見えた。最初は幻覚でも見えたのかと思った。しかし、いくら目を凝らしてもその姿ははっきりと存在していた。美しい金髪を風に揺らし、大きくて可愛らしい目をしていた。そして何より、印象的なのがはち切れんばかりのその笑顔だった。






「芯!約束通り、会いにきたよ!」

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エンドロールのその後に 秋瀬田 多見 @akisedatami

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