第十一話 ステータスってなに?
―――さて、説明しよう。
魔物のステータスにある『
まずは『
これはそのまま文字通りの意味だ。その魔物が持つ戦略上の性質を表している。
便利なので、敵勢力である天使や〈匣庭〉の原住民など、魔物以外のものに対しても使われることも多い……らしい。
名称はチェスの駒になぞったものであり、『
クラスにはそれぞれ固有の性質や能力があったり、五つの中に含まれない六つ目のエクストラクラスがあったりするのだが、その辺りについては追々言及することとする。
次に、『
これも難しい意味はない。いわゆるレアリティだ。
その魔物の強さや希少性などを分かり易く示す指標である。こちらも『
基本的には
次に、『魔素依存度』。
生態における魔素の重要性を表す項目だ。これが低い魔物は通常の環境下でも生育が可能だが、逆に高い場合、その魔物は魔素がある場所でしか生きられない。
―――あくまで傾向の話なのだが。
この能力値が『低』の魔物は全体的に戦闘力が低く、代わりに
最後に『能力値』。
AからEの五段階あるといえば、大体の人に理解いただけるだろうか。より詳しくいうと、値としてはAが最高で、Cが平均、Eが最低を意味する。
……ちなみに。
BBに曰く、「稀に規格外を意味するEXの能力値を持った魔物が出現する場合もある」らしいのだが――その詳細は定かではない。浪漫のある話だが、基本的には堅実に行きたいところだ。
それはともかく。
『能力値』には六つの項目があり、それが表すのは以下の通りである。
『力』とはその魔物の
『魔』とはその魔物が行使できる魔法の威力。あるいは希少性。
『耐』とはその魔物が持つ生命力及び耐久力。
『知』とはその魔物の知能指数。
『速』とはその魔物の敏捷性。
『運』とはその魔物の全体的な運の良し悪し。
―――と。まあ、大体こんな感じだ。
改めて考えてみると本当にゲームみたいだな。
「この魔物――〈
満足気に太鼓判を押すBB。
……なにか、言いようのない不安に襲われてしまうが、気の迷いとして捻じ伏せておく。
そもそもコレは彼女が考えている通りの運用法を想定して造った魔物なのだ。今更気にしても仕方がない。
「ただ、お言葉ですが、マスター」
「分かっている。さっきもその辺りには触れたが――〈
魔物は
特に〈
……一応、その場合の相手は人間である必要はなく、牛や馬でも支障はない。
それでも敵勢力――つまりこの世界の人間――の士気を削げることを考えるなら、人間の女を使った方が効率が良い。虐殺と凌辱による民族浄化は戦の常だ。別段、珍しいことではない。
ただし、問題もある。
そもそも――この〈太陽のない世界〉では、人間の調達が難しいのだ。
大抵の人間は世界の中央にある城塞都市・聖都や、砦などに引き篭っていて外に出てくる機会自体がほとんどない。不用心に外をうろついているのは精々が
彼等は専ら、学士と呼ばれる役職の人間によって製造される。
それ故に男性型と女性型の両方が存在しているが、どちらも生殖能力を持たない。よって〈
ならば問題なし――とはならない。
生殖によって戦力を増強する場合、妊娠・出産・成長と、どうしても少なくない長さの時間が必要になる。ゴブリンは早熟だが、戦力として使えるようになるまで最低でも二ヶ月は掛かると見るべきだろう。
「いつ迷宮の所在が敵に知れるか分からない以上、あまり悠長なことはしていられない。―――だが、それ自体は織り込み済みだ」
「ほう。なにやら考えがあるご様子」
「まあな。……そもそもこちらはダンジョンを構えているんだ。わざわざ取りに行く必要はないだろう。虎口に入った獲物を食っていれば、それで事足りる」
問題は、俺が狙っている通りにことが運ぶかどうかだ。
先程――この
ゲヴランツとマジパナ。男と女。二人の人間の騎士。
そして彼等が口にした、この〈匣庭〉の原住民種族――
―――上手くピースが嵌まれば、良い絵が描ける筈だ。
「なるほど、なるほど。それでは私からの余計なご高説は不要でありますね。少々口惜しくはありますが、ここは大人しくマスターのお手並み拝見といたしましょう」
言葉とは裏腹に、心底楽しそうに。
BBは、くすりと鈴を転がすような微笑みを顔に浮かべた。
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