第十話 魔物を造ろう! 2
「―――ゴブリン! ゴブリン、ゴブリン! ああ、なんと素敵な響きなのでしょう! 胸が高鳴るであります! この名前を聞いただけで、勃起した全裸の小鬼の大群が
恋する乙女のように頬に朱を散らし、うっとりとした様子でBBが御高説を垂れる。実に嬉しそうだ。
頭の病気を
名前はどうしようかな。
どうせなら〈
そして先程もBBが言っていたように、
と、くれば……―――
《名称:〈
魔素依存度:
【能力値】
力: /魔: /耐: /知: /速: /運:
【概 要】
人型の魔物。青黒い皮膚を持ち、耳は長く尖り、額には短い角が二本ある。夜目が利く。種族的特徴として全体的に小柄であり、成体となっても人間の子供程度の大きさにしかならない。雌は存在せず、雄のみ。あらゆる生物の雌と生殖が可能であり、産まれる子は全て〈
力が弱いものの俊敏で、社会性が高く、組織だった行動が得意。基本的には十体以上から成る群れを作って活動する習性を持つ。
手先が器用で武具の作成や取り扱いに長ける。また服飾に関しては強い拘りを持ち、常にきっちりと背広を着こなしシルクハットを被る変態紳士。体液には排卵を促す効果があり―――》
―――まあ、ひとまずはこんな所か。
するとBBは身を乗り出して書かれたデータを読み込み、興味深げに頷いた。
「ふむ、なるほど。しっかりとゴブリンのゴブリンたるセオリーを押さえつつ、それでいてオリジナル要素を盛り込むことで既存のものとの差別化を図りましたか。名前は『紳士』を意味する『Gentleman』と、『洒落』を意味する『Humor』を組み合わせた造語――いえ、鞄語でありますね。この分だとモチーフにイカレ帽子屋を含んでいるのでありましょうか。どうやらマスターは筋金入りの
「一度目を通しただけで、どうしてそこまで分かるんだ……?」
嬉しいような、苛立たしいような。複雑な気持ちだった。
「では、設定の方はこれで概ね完成ということでよろしいでありますか?」
「ああ」
「承りました。―――それでは! お待ちかねのダイスロールといきましょう!」
BBがひらりと右手を閃かせる。
広げられた小さな掌の中には、三つの黒いサイコロがあった。
一つは一般に広く知られる六面のもの。残りの二つは面が四つ多い特殊な代物だ。
十面体の表面には、〇から九を表す文字が刻まれている。ちなみに二個ある内の一方は一の位を、もう一方は十の位を指すものだ。
―――魔物を作成する場合、その大まかなステータスはダイスの出目で決定される。
とはいっても基本的にはランダムだ。
六面ダイス一個――こちらの出目によって大まかな成功率が決定する。
十面ダイス二個――これによって表される出目の一から百の数字を大きく四段階に区切り、出た数値がロール毎に決められる成功率の範囲内であれば、こちらの要望を反映したステータスとなる仕組みなのである。
ちなみに、一から五が出れば
「ダイスロール!」
三つのダイスが振るわれる。
卓上に着地し、障害物にぶつかりながらころころと暴れるサイコロ。器用なことに、そのいずれもが丁度俺の手前で停止した。
六面ダイスの数字は――六。
十面ダイスの数字は――八十九。
六が出たので成功率は七十五パーセント。高い数値だが、しかし十面ダイスの出目が悪く、完膚なきまでに失敗。作成される魔物のステータスは低いものとなるが、まあゴブリンなので問題はない。
兎にも角にも、ダイスロールは済んだ。
早速、
《名称:〈
魔素依存度:低
【能力値】
力:D/魔:D/耐:E/知:D/速:B/運:E》
―――うむ。
出目はあまり良くなかったが、概ね希望した通りのステータスだ。個体としては強力ではない雑魚だが、ゴブリンなのでその辺りは別に問題ない。むしろそこが良い。だってゴブリンだから。
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