おっさんのPCには自爆ボタンがついている

ろろ

第1話

 

 私の職場のおっさんたちは、データを消してくれます。

 PCをフリーズさせてくれます。

 PCに謎の動作不良を引き起こします。



「ろろくん、ろろくんが昨日作ってくれた資料のデータが消えちゃったんだけど」


 いや、それ消えちゃったんじゃなくて消しちゃったんですよ。

 え? あれ? もしかしてサーバーにあった元データですか?


「? いや自分のパソコンのフォルダの中を消しただけだよ」


 そのフォルダはあなたのデスクトップにあるやつじゃないよ!

 それ社内サーバーの共有フォルダのデータですから。

 え? ほかにも消したデータがある?

 他の部署のやつ?

 マジですか!?


 この日、作成した資料と統計データが亡くなりました。

 たまたま前日がサーバーの定期バックアップの日だったのでなんとかなりました……




「ろろくん、ろろくん、パソコンが動かなくなっちゃったんだけどどうしようか?」


 もう、何回目ですか。

 お願いですからふつーにPCを動かしてください。


「いや、特になにもしてないよ。文書を作成してたら動かなくなっちゃったんだよ」


 なっちゃったんだよ、じゃないですよ。

 なにちょっと可愛くいってみてるんですか。

 ちょっとどんだけファイル開いてるんですか?

 こんなに開いたらそらPCだって重くなりますよ。


「いや、閉じるの忘れちゃうんだよね」


 忘れすぎですよ。

 これ今日の分だけじゃないですよね?


「昨日電源落とし忘れたから」


 どんだけ忘れるんですか。

 そのうち財布とか携帯忘れても知らないですよ。


「ああ、それ一昨日電車でやった。携帯屋さんにいって追跡したら、今○○駅から移動してますねだってさ」


 それ、完全に誰かにもっていかれてるじゃないですか。


「大丈夫だよ、すぐに止めてもらったし。新しい携帯ももらったし」


 はあ。

 あ、再起動できた。

 とにかく気をつけてくださいね。


「あ、また止まった」




「ろろくん、ろろくん。パソコンからへんな音がなるんだけど」


 ほんとだピーブーいってますね。

 だうしたんですか?


「なんか画面がちらついたからチョップした」


 は?


「だからね画面がザザザってなったからチョップした」


 本体チョップしたらダメですよ。

 てかピーブーいうってどんだけですか!


「なかなかなおらなくてさ何回も、そしたら画面も暗くなった」


 勘弁してください。


「でもテレビとかはチョップするでしょ?」


 しないですよ! なんでテレビに暴行してるんですか!


「だいたい機械はチョップするんだよ」


 しないでくださいよ。


 とりあえず電源落として、再起動。

 よし、動いた。

 画面はたしかにちらついてるな。

 モニターのケーブルかな? ってなんでチョップしようとしてるんですか!


「機械はチョップするんだよ」


 だめだっていってるでしょ。

 ここをこうして、ほらなおったでしょ。


「多分前のチョップがきいてたんだな」




 もうねPCに私の知らない自爆ボタンがあって、毎回こっそりそれを押してるんだと思います。

 そう思えるくらいPCトラブルを引き起こしてくれるんですよ。


 おっさんが動けばPCが止まる。

 仕事も止まる。

 そして私の時間は止まってくれない。

 勘弁してください。


 でもねこのおっさんたちは、尊敬できる上司なんですよね。

 だから私は、何度PCの自爆ボタン押されても助けるんですよ。


※このお話は若干フィクション、ほぼ実話です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おっさんのPCには自爆ボタンがついている ろろ @curijff

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ