第43話 世界で一番『萌え』可愛いイラストレーター
それから数日が経ち。
窓の向こうから差し込むわずかな月明りは、いつになくキレイだった。
まるまるのキレイなお月様が出ていた。
月と言えば『うさぎが餅をしている』という逸話があるな。
あとは、かぐや姫も有名だな。
ひんやりとした空気を感じ、目を覚ますと俺は理沙の膝の上で寝ていた。
より正確に言えば、白いニーソックスに包まれたムチムチの太ももの上で寝ていた。
いわゆる『膝枕』だ。
理沙は俺の顔を見て、幸せそうに微笑んでいる。
二人で一緒にいられることがこの上なく嬉しくてしょうがないといった様子で
「おはよう、龍一♥
私の膝枕は、気持ちいいかしら?」
下から見れば胸の発育ぶりがよくわかる。
おそらく理沙は俺の視線に気付いていないのだろう、背筋を伸ばす姿勢
のよさで曲線を前に強調する。
「ああ、最高だ」
「執筆活動は進んでいる」
「まあ、まあかな」
「受賞できるといいわねぇ」
視線が合うだけで、些細な悩みなんて吹き飛ばせるくらい力があった。
「希望的観測はしないことにしてるんだ」
「ふふふ」
クリクリとよく動く大きな瞳、頬に丸みを帯びた顔立ちから、幼さを感じさせる反面。
どことなく威厳を感じさせるじっかりとした目つきと、落ち着いた口調が、大人びた雰囲気を醸し出していた。
「龍一らしいわね。
何があったとしても私はずっと龍一の傍にいるわよぉ。
約束したし……それに、見てみたいって思ったから。
龍一がベストセラー作家になるところを一番近い場所で……」
同級生でありながら、まるで年下の少年を相手にするようなお姉さんぶった態度だが、不思議と嫌な感じはしない。
むしろこうした大人びた態度や言動が、彼女魅力なんだよな。
ぱっちりとした目は、長いまつ毛に飾られており。
月みたいに金色の瞳が、俺のことをじっと見つめてくるので。
他の人には決して見せない、特別な笑顔を浮かべて。
「愛してるよ、理沙」
「私もよ、龍一。
愛しているわぁ♥」
口元に小さな笑みを浮かべて、理沙は優しく微笑みかけてきた。
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そして見事と!? ラノベ作家として『デビュー』することが決まった。
とはいえ、賞を受賞したわけではなく、拾い上げなんだけどね。
まあ才能が認められたことには、変わりはない。
何度も何度も担当編集との打ち合わせを繰り返した。
これがまた、なかなか大変だった。
最終選考にも残れなかった作品を『商業レベル』まで高めようというのだから、簡単な直しで済むわけもなく。
次から次へと修正すべき個所が出てきたのだ。
それを直すたびに、それをメールに添付して編集部に送信する。
それを確認してもらい、一つ一つ地味に潰していくという『作業』が永遠と続いた。
度重なる改稿を乗り越え『世界で一番可愛いイラストレーター』というタイトルで、○○から出版されることが決定し。
ペンネームは『
俺の名前と、彼女の名前を組み合わせたモノだ。
イラストを担当したのは、新鋭イラストレーター『RI♥SA』だ。
約束通り、彼女は『完璧なイラスト』を描いてくれた。
金髪巨乳清楚系美少女が胸を寄せながら内股で座っている表紙の『自作小説』が、大型書店の恋愛小説コーナーに並んでいるのを見て。
俺は死ぬほど感動した。
このイラストだけでも『600』円払う価値があると思った。
それほどまでに、素晴らしいイラストだった。
その他にも『コミカライズ』などのメディアミックス化されいる作品や、帯に『某有名作家』の推薦コメントが書かれた作品。
あとは書店員さんの『手書き推薦ポップ』なんかも目に入り。
ほんとうに俺、作家になったんだという『実感』が湧いてきた。
やった!?
ゆ、夢が叶ったと、喜ぶのもつかの間。
所詮は、素人に毛の生えた程度のモノ。
ミリオンセラーになりわけもなく。
一度も重版がかかることもなった。
結果は、さんざんたるものだった。
まあ、この結果をまったく予想してなかったわけじゃないけど。
それでも『精神的ダメージ』は大きかった。
でも俺には、支えてくれる彼女がいたから『心が折れる』ことはなかった。
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