第19話 ツンデレは最高!!! 永遠に不滅だ。

「安心しろ!? 俺が一番好きなのは、金髪巨乳美少女だ。

 だから姫川さんも守備範囲に入ってるぜ。

 それに歴史の名を残す『女性』は、みんな巨乳なんだよ。

 なによりにも乳房は、母性の象徴だからな。

 その天性の美貌と世間体などものともせぬ『したたかさ』の二面性こそ、彼女たちが歴史に名を残しえたゆえんだと、俺は思うわけよ」


「な、な、ななな、なに……さらりと恥ずかしいこと言ってるのよっ。バカァアアア~」


 ツンデレは最高!!! 永遠に不滅だ。


 そしてうっすらと汗で透けたブラウスがこれまた魅力的だった。


 代謝がよすぎるため彼女は暑がりだ。


 そのため外では肌を露出した服装でいることが多い。


 でも室内ではエアコン対策として、ブラウスの上に『薄手のカーディガン』を着ることもあるみたいだな。


「相変わらず発育のいい胸をしているな」


 羞恥で顔を赤くして、姫川さんは自分の胸元を隠す。


 制服に皺が寄る。


 脇を締めたせいで胸の肉がキュっと集まり、ただでさえ大きなオッパイがより大きく見えた。


「今さら恥ずかしがるなよ」


 あっかんべーをしてみせる。


「うっさい、バカっ!? 死ね、死ね。しねぇええっ」 


 キッ! とキツイ視線でこちらを睨みつけ、ふしゃーと猫が威嚇するように怒っている。


 軽やかな体重移動。


 脚の動きは、緩やかながら決して隙のない「型」であった。


 そして蹴りがくり出されるつど、短いスカートがチラチラとめくれ、純白のショーツを垣間見ることができた。 

 

「落ち着け」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいぃいいいいっ!?」


 全ての蹴りを紙一重で交わしながら手を前に突き出し、話し合いを求めるもあっさりと無視され。


 腐った性根を叩き直すように振りぬいた左足を軸足に切り替え、制服のスカートを翻して、俺の方へ鉄槌のような踵を突き出した。


 というか? 上から降ってくる。


 それも確実に息の根を止めるやると言わんばかりのスピードでだ。


 ああ、これが噂に聞く。


 ラ○ダ○キックというやつか?  


「ギャアアァ」


 生々しくもどこか乾いた鈍い音が頭に響いた。


 その瞬間。


 俺の目に映っていたのは、白と肌色の境界をチラチラ見せながら革靴の裏が顔面に綺麗にめりこんだ。


「変態死すべし」


 そのエロい視線に気が付いたのか? 


 さらにもう一発、背中に蹴りをもらった。


 起き上がると姫川さんは頭痛を押さえるように、細く綺麗な指をこめかみに当て。


「ちゃんと小説は書いてるんでしょうね」

 

 鈴の鳴るような綺麗な声が俺の鼓膜を撫でる。


「約束が死んでも守る男だぜ。ちゃんと書いてるよ」


 にっこりと優雅に微笑みを浮かべて


「完成したら一番初めに、私に見せるのよ」


 彼女の透き通るような白い人差し指と親指で、頬を思いっきりつねられた。


「もちろん、わかってるよ。

 耳にタコができるほど……。

 そのセリフは、何百回と聞いたからな」


 見てのとおり俺はすっかり、彼女の尻に敷かれていた。


 でも今の関係性に不満があるわけではない。


 まるで男友達と同じように、気軽に接してくれる彼女のことが好きだからだ。


 しかし彼女は、日本でも有数の資産家である『姫川 源三郎げんざぶろう』の孫娘だ。


 姫川 源三郎っといえば、日本に住むものでこの名前を知らない者はまずいない。


 政界、財界に深いパイプを持ち、日本を陰から操る支配者の名前だ。


 さらに彼女は、幼い頃から絵の英才教育を受け、数多の受賞・入賞実績を持ち。


 両親は著名な画家で、輝かしい将来が約束された『サラブレッド』だ。


 そのため彼女に『告白をする男』は、あとをたたない。


 それに対して俺は『凡人』だった。


 それだけならまだいいが……自分の心を偽りのが苦手な俺はとにかく口下手で、女子の際どい姿などの眼福な光景を前にすると視線を逸らすことを忘れて。


 ついガン見してしまうほど、スケベな男なんだよな……とほほっ。


 女子に人気のあるのは、カッコよくて、スポーツが出来て、面白くて、オシャレな男子だ。


 性欲の権化みたいな『ただエロい』だけの男子はモテない。


 とても彼女と『つり合う』とは思えなかった。


 ダメダメな俺には、小説を書くことしかできないから、もう何日も睡眠を時間削って、書いているんだけど……それでも納得のいく作品が書けていないのが現状だ。




++++++++++++++++++++++++


 校門の前に生徒の列ができていた。


「学校にこんなイヤらしいゲームを持ち込むなんて、いったい何を考えているんですか? もちろん没収です、没収」


「そこのアナタは、ちょっとスカートが短すぎませんか? 放課後までにちゃんと直しておくように」


 風紀委員による『抜き打ちの持ち物&身だしなみ検査』が行われているみたいだな。


 もちろん、井上さんの姿もあった。


「最近、ブルマ仮面の目撃情報を聞かなくなったわよね」


「そう言われてみれば、そうねぇ。

 でも捕まったという話しも聞いていないわよね」


「これはあくまでも噂なんだけどね。

 この抜き打ち検査は『ブルマ仮面』をあぶりだすためのモノみたいなのよ」


「ブルマ仮面って、うちの学校の生徒なの?」


「学校側はそう考えているみたいよ」


 頭隠して尻隠さずとは、まさにこのことだよな。 


 そこまで気がまわらなかったのは事実だ。


 しかもズボンのポケットには、もしもの時に備えて準備しておいた赤ブルマが入っている。


「そこの1年男子はーーーー」


 突然。


 姫川さんが俺の左肩を掴み引き止めると、見るもの全てを虜にする笑顔を見せ。 

「ホラ、ネクタイが曲がってるわよ。

 どうせ、また……遅くまで小説でも書いていたんでしょう……もう仕方ないわね」


 その声は人間とは思えないほど凛と澄み渡り、あたかも高級なガラス器のようだった。


 すると一瞬で静寂に包まれ、登校中の生徒の視線が俺に集まった。


 正直、周りの視線が痛いです。


 胃もキリキリと痛み、呼吸も浅くなり、気分が悪くなりました。 


「身だしなみもちゃんとしないと駄目よ。

 いつも言ってるでしょ♥」


 品格が漂う振る舞いに俺は、意味もなく恐縮してしまう。


 無邪気にベタベタとカラダをすり寄せてくるのだが、女の子慣れしていない俺には、いささか刺激が強すぎる。


「ネクタイも真ん中の三角はちゃんとバランス良くしないと、逆にだらしなく見えてみっともないわよぉ、うふふ」


 しかし姫川さんは、まったく気にすることなく、姉が弟のネクタイを直すように手慣れた手つきで、優しく俺の首元に手をかけ。


 彼女のカラダからは、汗ばむ程度の陽気にもかかわらず、不快な汗の匂いなどまるで感じられない。


 それどころか? シャンプーなのか、リンスなのか、立ち上る甘い花のような気品に溢れた香りが、スッと鼻腔をくすぐっていった。


「ホラ、じっとしてぇ♥」


 周囲の視線が俺の首元に集まっている隙に、姫川さんは俺のズボンのポケットに手を入れ、素早く赤ブルマを取り出し、豊満な胸元に隠してしまう。


 そして何食わぬ顔をしたまま、曲がったネクタイを直してくれました。


 「これで良し!? 次からは自分でちゃんとしなくっちゃダメよぉ。

 私がこんなことをしてあげるのわぁ、特別なんだからねぇ」


 姫川さんはとても満足げな笑みを浮かべ、さらに距離を縮めてきた。


 見ているだけで、心が癒される。


 優しい佇まい。


「きゃあっ!? 姫川さん優し過ぎだよ」


「クソ!? なんてぇっ!? 羨ましい奴なんだ」


「まったくだ。俺も姫川さんにネクタイ直してもらいたいよ」


 教室内が騒然となり、女子たちは黄色い声を上げ。


 男子一同からは怨嗟の視線を浴び。


 俺はものすごく居た堪れないに気持ちになったの対して、姫川さんは堂々とした態度で

 

「放課後。い・つ・もの空き教室で待っているわね♥」


 俺の耳元に、その小さな薄紅色の唇を寄せて、イタズラっぽく囁いてきた。


 それも吐息が、耳にかかりそうな至近距離で……だ。


 もう頭がクラクラして、何も考えられなくなってしまう。


 童貞の俺には少しだけ、刺激が強過ぎた。


「待ってるから」


 彼女はくるりと身を翻し、スクールカースト上位のグループの中に入っていた。


「姫川さんってほんとうに、付き合っている人とか……いないの?

 神村君と一緒に居るところ、よく見かけるんだけどな」


「それ私も思ってたことなんだよね」


「わたしも、わたしも」


 オシャレな感じの女子たちに質問攻めにされていた。


 彼氏との別れを惜しんでいるように見えたのか? 深い繋がりをアピールすることになってしまったな。


 本当はそんなんじゃないのに……。


「いませんよぉ。お付き合いしているヒトなんてぇ。

 彼にはいろいろと、相談に乗ってもらっているだけで、別に付き合っているわけでは、ありませんよぉ。彼、意外と物知りなのよね」


 右手を左右に振りながら答える。


 その謙虚で控えめな態度がまた美しくて、好感がもてるんだよな。


「なんか? あやしいな。わたしたちの間柄に、隠し事はなしだからねぇ」


「もういい加減にしてください」


「ご、ごめんね。ちょっと、調子に乗り過ぎちゃったわね」


「でもほんとうに神村君とは、何もないの」


「私はそんな軽い女じゃないのは、貴方たちが一番知っているでしょ」


「これ以上、詮索するのも野暮ね」


「昨日のドラマ見た」


「見た見た……」


 姫川さんは、ギャル系女子たちと談笑しながら、教室を出て行ってしまう。


 なんだか? ぽわーっとした頭のまま、まばゆい後ろ姿を目で追い続けた。


 彼女の笑顔と残り香だけで、世界がキラキラ光って見えた。


「実際のところは、どうなんだよ」


 知人の木村が、問い詰めてきた。


「姫川さんは、ああ言ってるけどさあ。本当は付き合ってるんだろう」

 

 ネクタイをおもいっきり引っ張られて、首が締まる。


 く、苦しい……。


 い、息ができない。


「悔しいけどさあ。姫川さんがお前を見る目は、完全に恋するオトメだもんな」


 厳しい追及が続く。

 

「おれたちに向ける視線を明らかに違うもんな」


 さっきまで姫川さんに見惚れていた男子たちまで、俺の周りに集まってきた。


 だがその質問には一切答えることなく、俺は逃げ出してしまう。




++++++++++++++++++++++++




  姫川さんの機転の『抜き打ちの持ち物&身だしなみ検査』は、無事にクリアすることもできた。


 あと『赤ブルマ』もちゃんとかえしてもらった。


 教室。


 日当たりのいい窓辺から吹き込む春風に、青色の生地で織られたドレープカーテンのレースがゆらゆらと揺れ。


 お尻の部分に猫のマスコットがついたシャーペンで、一生懸命にノートを取っている姫川さんの姿は可憐で、俺を含めたクラスの男子の切ないため息を誘い。


 周囲の女子生徒と同じ制服だが、容姿が抜群な彼女が着ると『特別』豪華な物に見えてしまう。


 紅いノースリーブカーディガンと、半袖ブラウスから伸びる白く細い腕はシミ一つなく瑞々しく、いかにも良家の令嬢といった様子で、衣服や身だしなみには隙がない。


 カーディガンは好きな色が選べるようになっていて、その上からでもわかる豊満な胸に、膝上ミニスカートから覗く太ももはスカートよりもずっと白くて張りのある。


 あとは『膝をつけてハの字に足を広げて』座っているところが可愛らしいな。

 

 そして椅子の上に置かれたクッションを微かにしずめるヒップの形よさは、スレンダーながらもバランスの取れた魅力的な体型を見せつけている。


 教室の床には、毛足の長いバラ色のカーペットが隙間なく敷きつめられていた。


 時折、窓の外を眺める姿も儚げで美しい。


 彼女に迷惑がかからないように、関係性がバレないないようにはしている。




++++++++++++++++++++++++




 昼休みの教室。


「姫川さん。俺と一緒にランチしない?」


「邪魔よ男子。そこを退きなさい」


 姫川さんの周りにもは、人だかりができていた。


 購買組と言うものが存在しない平和な学校で、弁当組が主流だ。


 女子同士で弁当のおかずを交換している場面をよく目にするな。


「みんな、ごめんね!? 今日は井上さんと一緒に食べようと思っているの?」


 クラスメイトからの誘いを断り姫川さんは、井上さんの席へ向かう。


「よかったら、お昼一緒に食べませんか?」


 彼女は手に持っていたお弁当箱を井上さんに見せる。


「ええ、いいわよ」


 姫川さんは空いている席と井上さんの席をくっつけ、2人はお弁当を食べ始める。


「わーカワイイっ!? 姫川さんのお弁当。いつも凝ってて、カワイイよね」


 井上さんが姫川さんのお弁当を見て、声を上げた。


 その声は透き通った美しい響きをしていた。


「井上さんのお弁当だって、素敵だと思います」


 すると姫川さんは、ぱっちりとした瞳を細めて、桜色の唇を開き、品の良い微笑みを浮かべて賞賛する。


 姿勢やちょっとした動作にも何気ない上品さがあって、育ちの良さが窺える。


 話した後に周囲を気にしたり、話している間はきちんと目を見たり、そんな細かいところがしっかりしていた。


 何よりも一般人とは、まとっているオーラが違う。


 見栄えを取り繕っただけではどうにもならない、芯からにじみ出る何か、一夜漬けでは決して身につけられない『品格』というものを汲み取ることができる。


 彼女はクラスでどんなタイプの女子とも上手くやっていた。


 大人しめの女の子と一緒にいることが多いみたいだけど、派手な子たちからも一目置かれているんだよな。


 物腰が非常に柔らかく、とても穏やかな人柄だ。


「じゃあ、おかず交換しよう」


「いいですわよ」


 姫川さんの卵焼きと、緑髪が特徴的な井上さんのタコさんウィンナーがトレードされ。


 俺は購買部でパンを買うために教室を出た。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る