第7話 SNSを始める前の私は、自分の容姿に自信が持てない内気な女の子でしたわぁ

『理沙視点』


 自室。


 天蓋付きのベッドに寝そべり、手を頭の方へと持ってゆき、物思いに耽るように目を閉じますわぁ。


 まさかSNSに滅茶苦茶エッチな自撮り写真を投稿していることを知っているヒトがこんなにも、身近なところに言ったなんて……やっぱりネットってコワいですわぁ。


 彼の妹さんには、私の秘蔵のコレクションを渡す(血反吐を吐くほど痛い出費だけど、背に腹は代えられないわ。世の中には知らなくてもイイことがたくさんありますもの)ことで、誰にも話さないという確約を得ることには性交しましたけど。


 ああ、間違えた『成功』しましたけど。


 べつに私は『露出狂』ってわけじゃないし。


 大勢の人にカワイイと褒められることが目的の『ナルシスト』でもありませんわぁ。


 女の子はねぇ。


 同性のカラダにも、すんごく興味があるものなのよぉ。


 そして始めたきっかけは、幼い頃に迷子になった私を助けてくれた『初恋の男子』のことが、私のことを覚えていなかったからですわぁ。


 確かに『好き』だと言えなかったけれど。


 言葉はなくともキモチは伝わっていると、どこかで強く期待していたわぁ。


 両親の仕事の都合で彼と離ればなれなった時期はありましたけど……私は一秒たりとも彼のことを忘れたことはありませんでした。


 でも彼にとっては『特別』なことではなかったのでしょう。


 そのことが凄くショックで、でも自分から彼に話しかける勇気もなくて。


 SNSを始める前の私は、自分の容姿に自信が持てない内気な女の子でしたわぁ。


 そんな自分を変えたい。


 そんな想いからSNSに、自撮り写真をアップすると。


 多くの人から『カワイイ』というコメントをいただけましたわぁ。


 それがとても嬉しくて。


 彼らリクエストに応えていくうちに投稿する写真は、ドンドン過激なモノになっていきましたわぁ。


 もちろん、危険なことだっていう意識はありますわぁ。


 でもコスプレして外を歩くなんて『羞恥プレイ』をするくらいなら、自撮り写真をアップするほうが、リスクは『低い』と考えていますわぁ。


 同じ趣味のヒトとも、出会える確率も非常に高いですしねぇ。


 それに目立たなきゃっ『宣伝』する意味がありませんわぁ。 


 あと彼のことを見返してやりたいというキモチもありましたわぁ。 


 インターネットの常識を持ち、ネット上で得た情報を正しく理解・取捨選択し、活用する事が出来る能力は持っているつもりですわぁ。

 

 結局のところ。


 私が何を言いたいかというと『好きな男性を振り向かせるのは、難しい』ということが、言いたかったのよぉ。


 だって彼『SNS』をやっていなかったんですもの、驚きでしょう。


 そのことを知った私は……絶望のあまり『アカウントを削除』してしまったわぁ。


 さらに体重が10㎏ほど落ちましたわぁ。


 うん、だから『自撮り』が趣味っていうのは、過去の話よぉ。


 葬り去りたい黒歴史よ。


 だって、彼以外の男性に『ちやほや』されても全然嬉しくないもの。


 今は別の趣味を見つけたのぉ……。


 もっとエキサイティングでスリリングなことよぉ。


 自撮りなんかとは……比べものにならないくらいねぇ。


 それは……彼のストーキングよぉ。


 彼の深く知るために『ストーキング』を始めましたわぁ。


 彼の趣味や嗜好に関するデータは、多ければ多いほどいいわぁ。


 彼の名前『神村 龍一』ですわぁ。

 

 彼は他の男子と違って力んだり、カッコつけたりせず、自然なところが好きなんです。


 彼は女性と話すのがとにかく苦手みたいで、教室の中ではいつも友人の『木村』君と話していたわぁ。


 授業中はいつも『ノート』に何か? 書いているのよねぇ。


 あと彼は早朝ランニングが日課みたいなのよねぇ。


 そして彼は決して他人を見下したり、否定したりせず、絶対に相手の良いところを見つける天才なのよねぇ。


 それに引き換え私は打算的な人間で、他人からよく見られたいという欲求が確かに存在しているわぁ。


 こんな卑しい自分を……彼が……好きになるはずがないと、心のどこかでブレーキを踏んでいる自分がいたわぁ。


 好きという気持ちは、ちゃんと態度で示さないとダメよねぇ。


 だって、好きなヒトと一緒に生きていくのが、最高にカッコイイ『ステータス』なんですもの。


 でも、彼の顔を見ると、どうしても『ぶっきらぼう』に答えてしまうのよぉ。


 私のバカバカバカ……、どうして素直になれないのかしらぁ。


 心にもないことを言ってしまうのかしらぁ。


 人を拒絶するという背景には、自分に自信がないという一面があることを、私は誰よりも知っているわぁ。


 昔の私が……そうだったからーーーー。


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