How to use あなたの能力?

ちびまるフォイ

能力者バトルに終焉をもたらす恐怖の能力

「フフフ……どうやら私の能力にハマったようね」


「な、なに……!?」


「私の能力【偽肢制御】は、あなたの体の隅々の細胞に浸透し

 肌荒れを改善するだけでなくコラーゲンを補給しつつ

 その体の自由をすべて私が操れる能力なのよ」


「くっ……体がうごかない!」


「無駄よ。すでにあなたは私の術中。

 どんなに抵抗しても、抵抗する前に私が操作して阻止できる」


「なんて能力だ……!」


「これからあなたの喉笛を自分で掻き切るなんてたやすいわ」


「その前にひとつだけいいか」


「あら、命乞い? 応じるつもりはないけど聞いてあげる。なにかしら?」






「……お前さ、どうやって自分の能力を把握したの?」



「え? 把握?」


「いや、その体を操るとか、その発動条件に既読無視が必要とか

 なんかいろいろ発動条件あるじゃん。厳しめの」


「う、うん」


「どうしてそんなこと知れたの? それもこと細かく」


「え……いや、それはフィーリングじゃない?」


「フィーリング!?」


「私だってよくわからないわよ!? でも、ほら感覚でわかるじゃない!」


「わからないから聞いてるんだよ! もっとわかるように言ってくれよ!」


「あなただって、自分の腕をどう動かしているか人に言えるの!?」


「俺は能力の話をしてるんだ!」

「ものの例えよ!!」




「……そもそも、どうしてあなたは自分の能力知りたいわけ?」


「かっこ悪いだろ! 俺だけ個性ないみたいじゃないか!

 いまどき、固有の能力のひとつも持っていなくちゃみんなに置いてかれるんだよ!」


「親にスマホをねだる子供か!」


「とにかくきかせろ! お前はいつどこで、どうやって自分の能力の

 あらゆることを知ったんだ!!」


「そんなのわからないわよ。気がついたら使えてたんだもの」


「記憶喪失か!」


「10年前の晩ごはんは何?って聞かれるようなものなのよ!

 覚えているわけないでしょ!」


「バカな……能力の発動はあれだろ……こう、ドラマティックで

 自分の人生で転機となる劇的なシチュエーションなはずなのに、どうして……」


「いや、あんたの中での能力発現シーンだいぶ盛られてるわね」


「少なくとも俺はそうだった!!」



「……いや、そもそもさ、あなたに能力があるなんて保証できるの?」



「なんだって?」


「あなたは能力があると思いこんでいるだけで、実は能力がない。

 むしろ能力がないことこそが個性になってるんじゃないの?」


「いいや俺に能力はある! それだけは断言できる!!」


「どうして!?」


「お前がさっき言っていたフィーリングだよ。

 自分の体のどこになにがあるのかわかるように、

 俺も自分の体に個別の能力がひとつ備わっていることが直感でわかる」


「でも使えないんでしょ?」


「使い方がわからないだけだし!! 本気出せば使えるし!

 今日はちょっと風邪気味でお腹いたいから発動条件を満たさないとかで使えないだけだし!」


「そのかけっこに負けた子供みたいな言い訳なんなの……」


「本当は俺も言いたいんだよ! 相手の意表を点いて自分の能力を解説するのを!

 かっこいいじゃないか! ドヤ顔で圧倒的な優位になれるあの感じを!!」


「……まあ、私も自分の能力話すときはちょっと楽しい」

「だろ」

「確実に勝てるって思ってから明かすけどね」

「うらやましなちくしょぉぉぉぉ!」




「……ハッ。いや待てよ? お前の能力は俺の体を操作できる能力だったな?」


「え、ええ」


「能力の使い方を知っているお前なら、俺の能力が使えるんじゃないか!?」


「私になんのメリットがあるのよ!」


「お前だって、俺の能力が気になるだろ!」


「そりゃあね!!」





「……わかったわよ。それじゃ使うから、少し離れて。

 言っておくけど、私はあくまで体を操作する能力だから、思考は読めない」


「ああ、それがどうしたんだ?」


「あなたの能力を使っても、あなたの能力を把握できるわけじゃない。

 感覚を共有しているわけじゃないからね。それでいい?」


「なんでもいいから早くやってくれ。

 俺は自分の能力が使われる瞬間を死ぬ前に見てみたいんだよ」


「なんなのその斬新な命乞い……いくわよ!!」




「使った?」

「使った」


「なにも起きてないけど」

「使ったわよ! ちゃんと発動したはずよ!」

「そんなバカな!」


「……やっぱり、あなたの能力ってなかったんじゃない?」


「いや、俺も使った感じはたしかにあったんだ! 発動した手応えはあったんだ!」



「フフフ、でももうどうでもいいわ。これ以上あなたに付き合う必要はない。

 そろそろあなたには死んでもらうわ。私の能力でね」


「これまでか……!」


「……」

「……」


「……あの、ちょっといい?」


「どうしたんだよ。能力で俺を殺すんじゃなかったのか?」





「能力ってどう使うんだっけ? あなた、まだ感覚残ってる?

 ちょっと、その……私、自分の能力の使い方を急に忘れちゃったみたいで……」

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