第23話 とはいえ、それは現実論だとしても
とはいえ、それは現実論だとしてもカッコ閉じで机の上のって注釈がつく現実論ですけどね。
人殺しにだって人権がないわけじゃありません。
寧ろ彼らは拘束が罪の償いとなる訳ではなく、死のみが償いとなるんですから生きてる間は他の犯罪者と比べれば扱いが優遇されるだとか聞いたこともありますし、中で映画鑑賞してる奴が居るとか、本を書いてる奴すら居るとかなんとか。
たまに勝手に少年Xの手記とかが出版されて揉めてるのもその辺が関係してるんでしょう。
だから話はそこでおしまいなんです。
C.H.K.に殺人鬼を殺させたら一石二鳥なんじゃなんてのは誰だって一度は思いつくような事柄ですが、それに伴う諸問題につき実現は不可――というかそんなの実際に行うとかどう考えても無理に決まってるんですから。
机上論はあくまでも机上論。
砂上の楼閣ならぬ、詐称の論結です。
だから、本来ならばここで話が終わるはずなんです。
宝くじが当たったら舞浜の夢の国を貸し切っちゃおうかなんて話すようなのと同じですね。
けれどそれはやっぱり勿体ないとも思います。
そういう綺麗事を抜きにすればそうする方がいいに決まってるんですから。
治療の為――未来の犯行を未然に防ぐ為、C.H.Kに
綺麗事なんてものは抜いた言葉なのにこんなに綺麗に帳尻が合うなんてことあってもいいのか、とまで思わされます。
ならば考えるべくは人権ではなくそれを実現する為の手立てでしょう。
死んだ方がいい奴らの権利を主張して、どう利権を得るのか悩むくらいなら、密室殺人とかアリバイトリックとか、そんなミステリーの不可能殺人のように、殺せない彼らを殺す方法で頭を悩ませるべきなのです。
――そうして、本気で頭を悩ませてしまった主催者は今回ばかりは五人――いや三人か。
主催者は「
そりゃあ渡りに船でしょう。
メールの内容を要約すればつまり「誰にもバレないように人を殺せる場所を提供します」ということだったんです。
噛み砕いた言い方をするなら多分お前近いうちに人殺すから、バレないように先に殺しとかない? ってことですね。
片や、個人情報を盾に取り、もう一方でそれをちらつかせる――
対象者は「
何故主催者はそんな狂宴を開催したのか――単にその小説家達の熱狂的なファンだったのか、C.H.K.に人を殺させることでなんらかの利益を得るのか、はたまた……。
そこら辺は今もよく分からないんですけどね、最終的に僕は主催者にも会ってませんし。
けれど僕に言わせればそれは飴と鞭ではなくただの無知ですよ。
本気でそんなことを思ってる奴がいるとするならば、そいつは命の重さとかそう言う奴を知らないだけです。
無知の罪とは言い得て妙ですが、なるほどこういうことを指すんでしょう。
知らなかったで済む話じゃありません、だって知らなかったで済ましてしまったらそいつは一生の恥どころか一生後悔することになるんですから。
人を殺してもいいと思ってる人間は居ても、人を殺したいと思ってる人間なんて本当はどこにも居ないんです。
もし居たとすればそんなものはただの――と、このフレーズはさっきも使いましたね。
……とは言え。
偉そうな講釈を長々と垂れましたけど別に僕はその時
僕だって掲げるような信念も、貫ぬくような本懐も、果たさなければならない存在意義も、やっぱり持ち合わせてはいませんでしたし。
僕が事件に関与したのなんて、偶々その時事件現場にいたというだけなんです――僕っていつもそうなんですけどね。
ま、Can Not Help Killing Time――そんな風に言っても良い僕が関わるにはその程度の理由でいいんですけど。
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