第21話 だから、C.H.K.と診断されたからと言って
だから、C.H.K.と診断されたからと言ってそう悲観することでもないと思うんですけど――しかしそれはやっぱり非日常を日常に置いてしまっている僕の意見に過ぎなかったようです。
少なくとも「
昔だと話は違ったのでしょうが――それこそ
仮にその病気が理由で人を殺してしまっても精神喪失と同じ扱い――まあ、全くのお咎めなしとは行きませんが――
少なくとも高齢が心神喪失の証拠の一つとなる程度には、C.H.K.であるという事実は裁判で有利になってくれるはずです。
……しかし、法律が許して、前例が許して、常識が許し――あまつさえ自身でさえそれを許したとしても、世論は殺人なんてもの認めません。
みんなの声って奴です。
況してやその辺の一般人ならばともかく、仮にも三人はそこそこ名の知れた物書きでしたからね。
作家が殺人を犯しただなんてどんな理由があろうとも許容されませんよ。
好きな作者のSNSを検索して見たらネット上で特定の政治的主張を繰り返していて少し複雑な気持ちになった――なんてのはよくある話ですが、しかし好きな作者が殺人犯だったというのはそんなもよりよっぽど幻滅の対象でしょう。
いや、幻滅というか破滅の対象ですか、殺人鬼の謝罪文は売れても、殺人鬼の書く殺人事件なんて誰も読みたくありませんからね。
仮に小説家でもある彼ら三人のC.H.K.が実際に人を殺してしまい、万が一裁判で心神喪失が証明され無罪を勝ち取ったとしてもそんなことが世間にバレたら筆を折るしか――否、筆を折られるしか道はありません。
自分の作品になぞらえた殺人事件が起きるよりもよっぽど致命的なダメージでしょう。
例え三人が死刑にならなくとも、作家「
しかもその殺人衝動の解消方法は一つしかありませんからね、これがゲームだとしたらとんだクソゲーですよ。
しかし、そんなデッドロック状態とも、デッドエンド状態ともつかない三人――いや、
「あなたの殺人衝動どうにかしてみたくない?」、と。
それが「春夏秋冬殺人事件」の全ての発端でした。
そのメールが送られてきたのは
そのメールには
併記された個人情報を使って何を要求するわけでもなく、あくまでもそこらのDMのように胡散臭い会合への招待をするだけだったと
秘する美とか言う奴ですかね――美という文字を使うのも憚れますが。
敢えて見えるように札を伏せたままにすることで実際よりも強く見せる、とかそういう手口だったんでしょう。
僕に言わせれば胡散臭いことこの上ない話ですが、しかし、
C.H.K.について今更説明しなければならないのか? ということを説明したわけですが、今更そんなこと言う必要があるのかという声を恐れず、今更な説明を続ければ、C.H.K.を未然に防ぐ方法は確立されています。
言わずもがな。
衝動的に人を殺したくなる、かつ、一人殺せば殺人衝動は収まる――こんな症状の解決方法は簡単です。
人を殺せばいい。
子供にもわかる理屈ですね。
ひょっとすると、なんの解決にもなってないじゃないか、と思うかもしれませんが解決になってるんですよ。
一人殺せば
そうして、それは殺人衝動が発露しなくとも――要するに素面で殺しても効果覿面、前もって誰かを殺めておけば二人以上手にかける可能性は著しく下がるんです。
C.H.K.の犯行で複数人が亡くなるのは最初の犯行で何人か巻き込まれた場合を除けばほぼゼロですからね。
稀にそれがきっかけで快楽殺人鬼にクラスアップ――クラスダウンする奴も居るそうですが。
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