第11話 先の会話は僕と太陽の会話です

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 先の会話は僕と太陽の会話です。うろ覚えですが。


 太陽――つまり容疑者の一人は「天道 太陽」という男でした。  非常時につき敬称略。              ◇


 先の会話は僕と太陽たいようの会話です。


 うろ覚えですが。


 太陽たいよう――つまり容疑者の一人は「天道てんどう太陽たいよう」という男でした。


 非常時につき敬称略。


 天道てんどう太陽たいようとは本人が言っていたように本格派ミステリー作家――を自称しているライトノベル作家です。


 ライトノベルと言えば、今世間一般的に浸透しているライトノベルが本来の意味するライトノベルと違うだとか偉い先生方かが言っているのを聞いたこがありますが、まあ「ライトノベルとはなんたるや」なんて語り出したらキリがないし、つーか知らないので浸透している方って事でお願いします。


 ま、ラノベかどうかは読者の判断だか出版レーベルだかによって決まるとも聞きますから、世間的にラノベ作家として認知されていて思いっきりライトノベル系レーベルから出版している太陽たいようは単にラノベ作家である、と断言しても差し支えないでしょうね。


 主人公が「探偵王に俺はなる!」と謎解きの度に宣言する本格派ミステリーなど僕が認めても世間は認めないでしょうし。


 年齢は聞いてませんでしたが――大学在学中に一念発起、小説家を目指しなんらかのツテでとある小説家に数年師事し、デビュー六年目とか言ってましたから……逆算するとギリギリ二十代か三十ピッタリってとこですかね。


 そんな彼の第一印象はホスト? って感じでした。


 理由は前述の通り。


 白スーツに真っ赤なタイって流石にねーよ。


 ……まあ僕が彼をそう判断した理由はそれだけじゃないですけどね、それだけじゃないって言ってもそれ以外の理由もやっぱり全部見た目の話ですが。


 太陽たいようの第一印象はよく言えば若者文化にも理解のある大人――普通に言えば若作りしている痛いおじさんって感じだったので、仮にあいつの一張羅らしい白スーツなんて着ていなくとも僕は「ホストかな?」と思ったことでしょう。


 まあ、ゼロ年代には携帯小説隆盛でブレザー羽織って、スカートの丈を切り詰めて、携帯電話とカッターナイフ握ってた女子高校生作家がたくさんいたんですから、それと比べれば幾らかは小説家然として他のかもしれませんけど。


 彼の小説家という職種への拗らせ具合――憧れ方から考えれば、むしろ着流しに小さな文机、名前入りの原稿用紙に、太軸の万年筆――なんて盛大に勘違いした方へ舵を切っていてもおかしくないくらいでしたが、まあそこは所詮太陽たいようですから、そこまで頭が足りなかったというだけなんでしょうかね。


 ――あるいは「小説家」への憧れが強過ぎたのかも知れませんが。


 少し脱線しますが、天道てんどう太陽たいようを小説家にした――小説家にまで仕立て上げた人物は二人居たそうです。


 彼自身がとても嫌そうに、愚痴交じりに語ってくれましたがその一人は新人時代からずっと彼の担当をしている編集の殻井からい証拠しょうこさんです。


 先に出てきた「朝凪の神水」を「朝凪の神水~転生した俺はユニークスキル《推理》を使ってモテエロハーレム探偵生活始めました~」を改題したのも殻井からいさんで、そのエピソードだけでも彼女の手腕がいかに優れていたかよくわかるでしょう。


 ちなみに「夜色のアイスコーヒー」も太陽たいようが勝手に言ってるだけの題名で、正式名称というか本当に出版した時のタイトルは「序列最下位ワースト・ワン魔装騎士ディアボロ・ナイツ」。


「アロハシャツに乾杯」は「魔王を倒した緋色の勇者は学園生活始めました」だったそうです。


 あいつは何を持ってして自分をミステリー作家だと定義してたんだろう。


 それらの改題も勿論全てその殻井からいさんのお手柄らしいのですが、しかし彼女のお仕事は当然こんな風に履き違えたタイトルを商業向けなタイトルに改題するだけでは有りません。


 むしろそんなのは雑事もいいところで――彼女の本当の仕事は作家を育てることでした。


 殻井からい証拠しょうこという女性は編集者である以上に教育者であり、作家のこと以上に作家の人生のことを考えてる方だったのです。


「私の仕事は作品の編集ではなく、作家の編集なのだ」というのが彼女の口癖だったなんて太陽たいようも言っていました。


 ですから改題するとか、作品を面白くするだなんてことは殻井からいさんにとっては雑事に過ぎず、作品を作るなんてことは殻井からいさんにとっては中継ポイントでしかないんです。


 彼女の生き甲斐は作家を作ることだったんですから――それは太陽たいようの場合にしても同じです。


 殻井からいさんは一十いとう一人ひとり先生の元から放り出された天道てんどう太陽たいようを拾い上げ、その辺の小学生よりも文章が書けなかった太陽たいように作文の練習をさせるばかりではなく、時には太陽たいようの作る話を骨子に自ら筆を取る事もあったそうです――それを見た太陽たいようが盗作だなんだと騒いで一悶着あったそうですが、本当に救えない。


 天道太陽とは本人が言っていたように本格派ミステリー作家――を自称しているライトノベル作家です。


 ライトノベルと言えば、今世間一般的に浸透しているライトノベルが本来の意味するライトノベルと違うだとか偉い先生方かが言っているのを聞いたこがありますが、まあ「ライトノベルとはなんたるや」なんて語り出したらキリがないし、つーか知らないので浸透している方って事でお願いします。


 ま、それを踏まえて、ラノベかどうかは読者の判断だか出版レーベルだかによって決まるとも聞きますから、世間的にラノベ作家として認知されていて思いっきりライトノベル系レーベルから出版している太陽は単にラノベ作家である、と断言しても差し支えないでしょうね。


 主人公が「探偵王に俺はなる!」と謎解きの度に宣言する本格派ミステリーなど僕が認めても世間は認めないでしょうし。


 年齢は聞いてませんでしたが――大学在学中に一念発起、小説家を目指しなんらかのツテでとある小説家に数年師事し、デビュー六年目とか言ってましたから……逆算するとギリギリ二十代か三十ピッタリってとこですかね。


 そんな彼の第一印象はホスト? って感じでした。理由は前述の通り。白スーツに真っ赤なタイって流石にないわ。


 まあ僕が彼をそう判断した理由はそれだけじゃないですけどね、それだけじゃないって言ってもそれ以外の理由も全部見た目の話ですが。


 太陽の第一印象はよく言えば若者文化にも理解のある大人――普通に言えば若作りしている痛いおじさんって感じだったので、仮にあいつの一張羅らしい白スーツなんて着ていなくとも僕は「ホストかな?」と思ったでしょうね。


 まあ、ゼロ年代には携帯小説隆盛でブレザー羽織って、スカートの丈を切り詰めて、携帯電話とカッターナイフ握ってた女子高校生作家がたくさんいたんですから、それと比べれば幾らかは小説家然として他のかもしれませんけど。


 彼の小説家という職種への拗らせ具合――憧れ方から考えれば、むしろ着流しに小さな文机、名前入りの原稿用紙に、太軸の万年筆――なんて盛大に勘違いした方へ舵を切っていてもおかしくないくらいでしたが、まあそこは所詮太陽ですから、そこまで頭が足りなかったというだけなんでしょうかね。


 ――あるいは「小説家」への憧れが強過ぎたのかも知れませんが。


 少し脱線しますが、天道太陽を小説家にした――小説家にまで仕立て上げた人物は二人居たそうです。


 彼自身がとても嫌そうに、愚痴交じりに語ってくれましたがその一人は新人時代からずっと彼の担当をしている編集の殻井からい証拠しょうこさんです。


 先に出てきた「朝凪の神水」を「朝凪の神水〜転生した俺はユニークスキル《推理》を使ってモテエロハーレム探偵生活始めました〜」を改題したのも殻井さんで、そのエピソードだけでも彼女の手腕がいかに優れていたかよくわかるでしょう。


 ちなみに「夜色のアイスコーヒー」も太陽が勝手に言ってるだけの題名で、正式名称というか本当に出版した時のタイトルは「序列最下位ワースト・ワン魔装騎士ディアボロ・ナイツ」。

 「アロハシャツに乾杯」は「魔王を倒した緋色の勇者は学園生活始めました」だったそうです。


 あいつは何を持ってして自分をミステリー作家だと定義してたんだろう。


 それらの改題も勿論全てその殻井さんのお手柄らしいのですが、しかし彼女のお仕事は当然こんな風に履き違えたタイトルを商業向けなタイトルに改題するだけでは有りません。


 むしろそんなのは雑事もいいところで――彼女の本当の仕事は作家を育てることでした。


 殻井証拠という女性は編集者である以上に教育者であり、作家のこと以上に作家の人生のことを考えてる方だったのです。


 「私の仕事は作品の編集ではなく、作家の編集なのだ」というのが彼女の口癖だったなんて太陽も言っていました。


 ですから改題するとか、作品を面白くするだなんてことは殻井さんにとっては雑事に過ぎず、作品を作るなんてことは殻井さんにとっては中継ポイントでしかないんです。彼女の生き甲斐は作家を作ることだったんですから。


 それは太陽の場合にしても同じです。


 殻井さんは一十一人先生の元から放り出された天道太陽を拾い上げ、その辺の小学生よりも文章が書けなかった太陽に作文の練習をさせるばかりではなく、時には太陽の作る話を骨子に自ら筆を取る事もあったそうです――それを見た太陽が盗作だなんだと騒いで一悶着あったそうですが、本当に救えない。

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