第8話 其月の死体には――
それはもう
あまり詳細に言いたくは無いんですが――近くに頭が切り離された死体がなければ僕は「何故こんなブロック肉が落ちているんだろう?」と思っていたかもしれません、と、そんなレベルの破壊でした。
その死体を、と言うかその惨状を作り出した人物の得物の扱いの下手さを伺い知れば、それはもしかすると単に死体の首を切り離す時に、うっかり狙いが逸れてしまっただけと言う話なのかも知れませんが――まあそれはないと思います、僕の私見ですが。
何故ならば、
何故そんな小細工をしたのか? その目的の断定は出来ませんでしたが……
手を切る理由なんて他にありませんし。
それに、先程はその惨状を「血溜り」と表現しましたが――その時死体の周りに流れ出ていた血液量はやっぱり血の海ではなく血溜まりだったんですよね。
血圧が何たるかということを理解しているならば、首切り殺人なんてすれば膨大な量の血液が吹き出してその周囲は血溜まりどころか、血の海、いや血の天の河と言っていいほど赤色で埋め尽くされることが容易に予想できるでしょう。
本当に首切りを手段にして殺害に成功した奴は人体の六〇パーセントが水分という言葉を身をもって知ることになるでしょうね。
しかし、
僕は実況見分なんて出来ませんが、けれど
つまり
全く、良識を疑うぜ。
例の格言の出番かもしれませんね。
「首切り死体を見ればまずは入れ替わりを疑え」。
個人的には気に食わないのですが、しかし、そういう個人的嗜好を捨ててフラットな視点で言えば
まだちょこちょこありますが、それは後ほど。
後はここで三人ばかり登場人物を紹介したいと思います。
一人は『
二人目は『
「首切り死体を見たら入れ替わりを疑え」と同じように謳われる文句に「第一発見者を疑え」なんて言葉がありますが、そのお約束に則ればこの三人は同時に疑わしい人間だということになります。
なにせ
しかしそんなお約束に頼らなくとも、彼らには疑わしいところがありました。
三人はその時偶々連れ添って行動していたらしいのですが、
もし死体を見つけてしまったら、その後どのような行動を取れば最善なのかということは中々難しいですが、しかし三人の行動は最善と程遠いところにあったことは間違いないと思います。
なんと、そんな死体を見つけた彼らはあろうことか、拘束衣に身を包んだ僕の元へ駆け付けるや否や、無理やりそんな悍ましい首切り死体の前まで僕を引きずって来ると口々に主張したんですよ。
三人が三人とも声を揃えて、声高々に、絶叫するように、毅然として。
『
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