第5話 さて、その「春夏秋冬殺人事件」は
◇
さて、その「春夏秋冬殺人事件」は忘れもしない二年前の七月……七月――上旬でしたっ……け?
いや、ほんと! 七月だったということははっきりと覚えているんですよ! ――覚えてはいるんですけど……。
むむ……そう言えばその年の七月七日――つまり僕の誕生日はしかとお祝いしたしその後だった気がする。
それじゃあ七夕は過ぎてましたね。
うーん、だとすればひょっとするとその日はもう七月上旬とは言えない頃だったのかもしれません。
ま、そんなことはなんでもいいことですけれど。
この世の中で、日付なんてものを気にしているのなんて束縛とイベント信仰心が強い彼氏持ちの女の子だけでしょうに。
結局のところ、僕達のようなただの一般市民にとっては七月五日が七月十三日だったとしても、大した影響なんてものは無いんですよ――金曜日が月曜日になるのは大違いでしょうけど。
だって、重要なのは
だから、その期待にお答えしてまず「春夏秋冬殺人事件」――もとい、
そこでさっきの前置きが早速活きてくるわけですね――じゃなきゃわざわざあんな話しませんけど。
活きてこない前置きなんて御多分に洩れずなんの意味も持たない駄文でしか無くなりますし、そんな無駄なことに貴重な人生の何百分の一かを費やす人間はそうはいませんよ。
僕はたまにしますけど。
さて、いきなり結論――というよりは問題提起の方が近いですが、そんなものを放り投げてある程度話の見通し付けたところで、僕は話の筋道も付けなきゃいけないと思います。
今のところ首切り殺人があったとしか言ってませんからね僕。
それだけだと誤解してしまっているでしょうが「春夏秋冬殺人事件」とは即ち、首切り殺人のことでは
「春夏秋冬殺人事件」とは即ち、は「壱載モール」――じゃないや何故だか知らないけれど今は名前変わってモールICHINOSEでしたっけ――その「モールICHINOSE
僕自身が何故そんなのに巻き込まれることになったのかは後ほど。
すげえ脱線するので。
それよりも先に舞台となった「モールICHINOSE
もう「春夏秋冬殺人事件」自体が二年以上前の話ですし、今もそこがモール跡地として残っているのかは知りませんし、ひょっとするともう何かしらの建物が建っているのかもしれませんが、けれど少なくとも二年前の時点ではその場所――僕が居た現場は「かつてショッピングモールがあった場所」でしかありませんでした。
然るに、モール跡地なんて言い方は簡潔で的確だと思いますが、しかしそんな言い方をすれば単純にかつてショッピングモールだった建物と言う名の
僕がその時訪れた……というより連れてこられた場所は確かにモール跡地には違いありませんでしたが、しかしそこにあったモールICHINOSEは
廃虚と形容できるなんて言ってもその場所がホラーゲームに出てくるような、廃墟――街中で溢れるゾンビから逃れる為に籠城する半ば放棄されている建物のように荒廃していたというわけではなく。
むしろどちらかと言えば建物の装い自体は廃虚という言葉と対極に位置するようなものでした。
内装も外装も、共につい一週間前に新装開店したショッピングモールかと見紛うばかりの建物でしたし。
……けれど、廃虚という存在が誰かから建物を破壊されて産まれるのではなく誰かを建物から奪われて産まれる――つまり人が居なくなって産まれるという事実を一考すればその
モールICHINOSEと言えば貴方も知っている通り、全国に星の数ほど――は言い過ぎにしても、何かを夢見て上京してくる若者の数くらいには全国各地に点在するあのモールICHINOSEです。
普通ということは数が多いということと同義ですし、それほどまでに全国展開しているということは、つまり「モールICHINOSEとはなんの変哲も無いショッピングモールである」ということなんですが……モールICHINOSE
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