第3話

 カメドナは中学を卒業するころには3メートル50cmを超え、大学に入学するころには5メートルになっていた。


クラスでのあだ名は勿論、“巨人”であった。


とは言え、彼のそんな立派な体格を逞しいと感じる女子も少なからずおり、中には愛の告白をする猛者もいた。


「カメドナさん、よかったら私と付き合ってください!」


「カメドナさん、好きです!」


入学して早々、カメドナは二人の女子に告白され、些か戸惑っていた。


「う~ん…。二人とも可愛いし、どっちと付き合おうかな~。悩んじゃうな~。う~ん…」


悩みに悩んだあげく、カメドナは二人同時に付き合うことにした。


しかし彼の二股は一週間でバれてしまい、結果二人から強烈な往復ビンタを食らうことになったのであった。


二人にフラれ、あだ名も“二股巨人”に更新され、カメドナはショックで寝込んでしまった。


学校も休みがちになり、成績も下がり、カメドナはすっかり路頭に迷ってしまった。



そんなある日、クラスメイトの男子がカメドナの家を訪ねてきた。


「よう、カメドナ」


「な…なに?」


「お前、留年決まったんだってな。気分転換にスカッとすることしようぜ!」


「ぼ…ぼく、クスリとかは…やらないよ?」


「バーカ、ちげーよ。俺のバイクに乗せてやるって言ってんだ」


「え?」


彼はカメドナを未知の世界へ連れて行ってくれた。


全身に受ける風や景色に、カメドナは大きな感動を覚えた。生まれて初めてバイクのすばらしさを知った。


帰宅早々、カメドナは父亀太郎に言った。


「お父さん。僕、自分の進む道を決めたよ」


「なんだ?あらたまって」


「うん…あのね…僕、大学辞めて暴走族に入るよ!」


「は?!お前、気は確かか?」


「うん!暴走族になって、ネオンが煌々と灯る夜の街を走りまくるんだ!バイクって本当に素敵な乗り物なんだよ!自分が巨人だってことを忘れちゃうくらいの感動があるんだ!」


「そうか…お前がそうしたいなら…そうしなさい」


「やった!ありがとうお父さん!」


「その代わり、人様に迷惑をかけるような運転だけはするんじゃないぞ」


「うん、わかった!それじゃ、僕そろそろ自動車学校に行く時間だから」


「ああ。気をつけてな」


カメドナはスキップしながら外へ飛び出して行った。



《了》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

500cm オブリガート @maplekasutera

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ