◇第二百十話◇
うんうんと頭を抱え、自室のベッドに横たわる。
「桜のやつ、もしかしてあの子と何かそういう……あったのかなー……。俺別に同性愛自体に偏見はねぇけど、いざ身内がってなるとどうも……」
『まぁ、受け止めるのは難しいだろうな』
そんな電話越しから聞こえてくるのは、カリカリというシャーペンの音だった。
「?稜、勉強してんのか?」
『勉強というか課題をな。こういうのはコツコツやっていくタチなもんで』
「うっわ……。あったわそんなの……。ダリィ〜……」
『お前はすぐ終わるだろうが』
悩む時間なんて一秒あれば多い方だろ、と電話越しの相手にデコピンをしたくなった。
しかし、桜の件について唯一知っていることを蓮にも伝えておいた方がいいのかと、少しだけ悩んでみたりもした。
『なぁ、お前の心の内に留めておいてくれるなら、一つ言っておきてぇことがあるんだが』
「え、何?」
改まって、一体何を言おうとしているのか。寝転がっていた体を起き上がらせ、少しばかり緊張しながら耳を傾ける。
『茅鶴ってやつ、桜のことを恋愛対象として好きだってのは本人から聞いてるんだ』
「……はぇ!?そうなの!?!?じゃあやっぱそういうことなの!?」
『まぁ落ち着け』
慌てふためく蓮を無理矢理宥め、続きを話す。
『アイツはまだ俺たちよりも子どもだ。中学生なんだ。特に、人の感情はすぐに変えられるものじゃねぇ』
「……うん」
『初めてのことで、一番不安なのはきっと、アイツ自身なんだ。だから、俺たちが無闇矢鱈に首を突っ込むのは一番しちゃいけねぇんだよ』
兄として妹がその世界に行ってしまうことを止めなければいけないのかもしれない。だが、稜の言葉にも不思議と納得してしまった。
今自分に出来ることは、見守ることだけ。判断は桜自信にしかできない。
「でも俺、そういう……同性愛?とかよく分かんねぇっつーか」
『恋愛事自体分かんねーだろ。放っときゃ良いんだよ』
「そういうもんなの??まぁでも、俺らに“普通”なんてねぇもんなー。異性でも同性でも好きは好きだよな」
世間一般では“普通”ではないのかもしれない。それでも、恋愛に間違いなんてものは存在しない。本人が幸せだと思えるなら、きっとそれが一番良い選択になるのだろう。
「ありがとな、稜!おかげで何となくどうすりゃ良いのか分かってきた気がする!」
『どうすりゃって、何もすんなよ?』
「うっ、分かってるって……。ほら、言葉の綾っていうかさー」
『それも少し違う気がするな』
言いたいことは分かるが、上手い言い方が見付からなかった。
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