第5話「貫く無関心」
職場でも、俺の周囲に対する無関心ぶりは顕著だ。
例によって、仕事も特別に精を出さずにそつなくこなす。事務作業が中心だがそこまで難解な内容ではなく、上司から何をやればよいか一度説明を受ければ、あとは自身のスキルをもとに進められる――少なくとも俺の場合は――仕事だった。
俺が順調に業務を片付けていく横で、エクセルの基礎的な表計算やグラフ作成がままならずに悪戦苦闘している同僚がいたり、向かいに誤字だらけかつ文章の乱れた報告書を部長から返却されてうなだれながら修正作業をする後輩がいても、俺は
適当に就活して適当に入った企業なので、仕事には面白みもやりがいも感じず、そもそもこのレベルの仕事ならわざわざ俺がやらなくても良いんじゃねえのと
しかしどいつもこいつも、定時を過ぎてもだらだらパソコン作業をしていたり、自分の仕事は終わっているのに他人の業務に首を突っ込んだがために余計な
もちろん、俺は時間内に自分の仕事は全て終わらせるので、終業ベルが鳴ると同時に離脱する。この前の金曜日は部長がいきなりミーティングやるとかぬかしたので大嫌いな超過勤務をする羽目になったが、そのくらいは仕方あるまい。俺一人が定時で上がる時、さすがに「お先失礼します」ぐらいは無愛想ながら口にするが、誰かしら「お疲れ様でした」と返してくるあたり、職場環境的には良好なんだろうなと感じている。
あっという間に社会人五年目となったが、こんなつまらなくてやりがいもない仕事を続けているのは、安定した銭が入るからという理由以外になにもない。他のほとんどのサラリーマンがそうなのだろうから、これについては何の独創性も付随しない
大学を卒業して二、三年ぐらいは、まだ学生時代の友達と付き合いがあったりして休日やアフターファイブ――いや、俺の職場は午後六時が終業時刻なのでアフターシックスか――をそれなりに面白おかしく過ごしていた。男は、女と比べると比較的物事の本質を理解している傾向にあるので、俺のような性格でもそれなりに愉快な付き合いができた。最近はそれも途絶え、定時で上がっても毎日なにをするでもなく漫然と過ごしてしまう。実にくだらないが、それでも無意味に近い残業で時間をつぶすよりはましだ。出るかどうかもわからない残業代をあてにしなければならないほど、俺は生活に困っちゃいないしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます