本作は、主人公を通じて作者が語るのではない。箱庭にうごめく魑魅魍魎どもの不定形な意思が主人公や作者の本質を奪い、それを粘土細工のように作り直して読者に提示するのだ。従って、本作の語り部はその時々によってどうにでも姿を変える。例えば今私が接している姿だと、一見冷徹な観察者のように思える。……一皮むけばその中身は、虚無。温泉にでもいって二食つき一泊コースに宿泊すれば本来の人間性を回復できるだろう。
後からジワジワ押し寄せてくる……。三度見しちゃったよ。