#4 夕刻・キュルルの本音

 駄目なんだ。忘れるなんて出来るはずがないんだ。


 カラカルとサーバルが、ぼくのことなんか忘れて、サバンナで楽しく暮らしていく。それはぼくにとって、とても苦しいこと。本当は仲直りしたい。また三人で旅に出たい。ぼくにとって、カラカルとサーバルと一緒に進んできたこの旅は、特別なものなんだ。

 けど、ぼくがこのおうちから逃げたら、イエイヌさんは傷ついてしまう。ぼく一人が苦しいのを我慢すれば良いのなら、それがみんなにとって良い事なのかも知れない。イエイヌさんは昔、沢山のヒトと、ここで暮らしていたと言ったよね。ぼくも「おうち」で暮らしていた頃のこと、うっすら記憶がある。

 ぼくを迎えてくれる、温かい人がいて……それを失う辛さも、置いて行かれる悲しさも、ぼくにはわかる。だから、同じ悲しさを知ってるぼくたちは、きっとここで一緒に上手くやっていける。ぼくもそう思うよ。


 けどね、イエイヌさん。それでもぼくが二人の友達だった時間が消えるわけじゃないんだ。二人が傷つくのは、それが解かっているのに何もしないでいるのは、ぼくは絶対にいやなんだ。ぼくにとって二人は友達なんだ。二人がぼくをどう思おうと、ぼくにとっての二人は、楽しい旅を一緒に過ごした、大切な友達なんだ。

 嫌われてたって良い。カラカル達がぼくのことをどう思っていても、ぼくは二人が大切なんだ。ぼくのことはどうなっても良いから、カラカルとサーバルだけは無事でいて欲しいんだ。


 ……ごめんなさいイエイヌさん。けど、ぼくには二人を忘れることなんて出来るはずがない。カラカルとサーバルは、ぼくの大切な友達なんだ。

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