#3 夕刻・イエイヌの本音

 どうして、私を大事にしてくれないんですか。やっと会えたのに、あなたしかいないのに。


 あなたと会うまでの長い間、私は待ちました。待ち続けました。何年も何年も調べ続けて、ようやくあなたを探し当てたんです。

 ここで一緒に暮らしていた人々が居なくなって、もうどれほど経ったのか。辛くて、寂しくて、とっても苦しい日々でした。私はヒトに従うことこそ喜びであり、それが生きている理由なんです。

 私はそういうけものなんです。そうとしか生きられないんです。


 カラカルさんには申し訳ないと思ってます。けど、彼女はサバンナで生きてきた。サーバルさんというお友達もいる。ヒトがいない世界で生きてきた彼女と違って、私はヒトと居る家があって、初めてイエイヌであれるんです。

 カラカルさんたちも、あなたがいるべき場所がおうちだと思ったから、ここまで送って来てくれたんじゃないですか。私に任せてくれたんじゃないですか。


 どうして、危ないところに行くんですか。なんで私との時間を大切にしてくれないんですか。二人は、あなたを私に任せたんですよ。あなたを置いてサバンナに帰って行ったんですよ。自分を置いていった相手なんて、いくら想っても、報われないんです。帰って来ることはないんです。


 ……お願い、私を見て。私のご主人になって。二人のことはもう忘れて。

 私があなたをお守りします。あなたの忠実な友であります。

 だからお願い、私にはあなたしかいないんです。

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