第25話 鬼ごっこで飛んじゃダメってルールはない。
ペットショップにいたのは犬だけではない。もちろん猫だっているのだ。ってことはつまり、そういうことだ。そりゃあいるよね、ゾンビ猫。うん。
「そのまましがみついてろよ!」
バルーンを登っているゾンビ猫たちに狙いを定め、俺は
ゾンビ猫たちは危険を察知し「ギャオオッ」と叫びながらバルーンから一斉に手を離し、大きく飛び降りた。さすが猫というところか。犬よりも俊敏だ。
だがそれで避けたと思うなよ?
よしこれで今度こそ大丈……あっまずい。
そこからブシュウウと音を出しながら空気が抜け、バルーンはそのままバランスを崩し
「うぎゃあああああああ!!!」
金髪を頭上に乗せたまま、おもいっきり倒れていった。
あちゃー……ごめんな金髪。
俺は心の中でテヘペロと舌を出した。
金髪はそのままバルーンの下敷きになったようで、破れたバルーンの下で必死に踠いている。
「おい大丈夫かー?」
駆け寄って下から引きずり出す。どうやら怪我はしていないみたいだな。落ちた場所がボールプールで良かった。
「ひいい……」
金髪は散々泣き叫んでたおかげで顔面涙と鼻水でぐちゃぐちゃで。うわ酷い、ちょっと距離を置きたくなるな……。
「お゛っさああ゛あ゛あ゛ん!!」
しかしそんな金髪が俺にしがみついてきた。
「うおおやめろ汚いだろばか!」
おもわず本音が出る。
「あ゛りがとお゛ぉ゛ぉ……あ゛りがとお゛ぉ゛っ!」
「わかった、わかったから!」
ほら離せと金髪を引き剥がす。
さっきから叫んでばっかだなこいつ……まったく。そんなに声を出してたら周りにいるゾンビに襲ってくれとアピールしてるようなものだ。
……こいつだけ置いていかれた理由、なんとなくわかる気がする。
アイテムボックスからティッシュとハンドタオルを出し、金髪に渡してやる。金髪はごしごしと涙と鼻水を拭きようやく落ち着いてくれた。
その間に俺は探索魔法でフロア内の他の生存者を探す。どうやら、すでにこの馬鹿金髪以外このあたりには残っていないようだった。悲鳴ももう聞こえない。
こいつしか間に合わなかったか……
ちらりと金髪に視線を戻し
「よしお前も行くぞ」
「えっ行くってどkうわあああああ――――っ!?」
だから叫ぶなってばか!
どうやらこの馬鹿金髪の悲鳴のせいで新たなゾンビの大群が押し寄せてきたようで。ああもうだから言わんこっちゃない!
くそ、俺はすぐにでも秋月ちゃんを探しに行きたいのに!
もう全部を相手にしてる時間はないな。
「おい走るぞ!」
「ひいいっ!」
ゲームセンターから飛び出し、俺たちは通路を全力で走る。後ろから追いかけてくるのはゾンビ、ゾンビ、ゾンビ。その迫力は凄まじく、俺はチラリと後ろを振り向きおもわず「ひえ」と声を出した。
とんでもない鬼ごっこだなこれは。
「おおおいおっさん! 前! 前っ! まええええ!」
横を走る金髪が叫ぶ。
俺たちが走る通路の前方、正面の壁一面が窓ガラスとなっていて。
そして反対側の通路からもゾンビの大群がきていた。つまりこのままだと俺たちは窓ガラスの前で挟み撃ちだ。逃げ場がない。
「どうすんだよおおおおお!」
だが俺は止まらない。
「いいから走れ! そのまま走れ!」
「うそだろおおおおお!?」
「なんとかしてやるから! 信じろこのばか!」
「なんだとおおおおお!?」
窓ガラスの壁まであと数メートル。
俺たちは全力でそこへ突っ込んでいく。
すぐ背後のゾンビの大群が腕を伸ばし、俺たちを捕らえようとする。やばい今ゾンビの指先が服の裾をかすった!
「「うおおおおおおおおおお!」」
俺は走りながら
「いけえっ!!」
俺たちはそのまま窓から外へと飛び出した。地面に向かって軽く落下し、そこからUの字を描くように飛翔する。飛行魔法だ。
俺は金髪をおんぶしながら飛んだ。
まさか人生初のおんぶがこんな金髪馬鹿男になるとはな……世の中わからんものだ……。
俺たちが飛び降りた窓から後に続くように、ゾンビの大群が落ちていく。奴らも俺たち同様に全速力で突っ込んできたのだ。止まれなかったのだろう。
「ざまーみやがれー! はっはっはー!」
それを眺めながら背中にしがみついている金髪がキャッキャとはしゃぐ。
おいお前さっきまで…………はあ、もういいや。
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