第6話 異能力チートは物資も楽々運ぶ。

「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛――ッ」

「うおあああ――っ!?」


 ゾンビ店員たちは俺を見るなりこちらに向かって猛ダッシュしてきた。

 ここは火炎球ファイアーボールで根こそぎいきたいところだが、品出し前の物資がゾンビの巻き添えで消えちまったら元もこうもないからな。

 俺はひとまず身を翻しコンビニから出ると、追ってきたゾンビ店員たちに


風刃エアスラッシュ!」


 一気にゾンビ店員たちの頭を切り飛ばした。残った胴体だけがドミノ倒しのように地面に転がる。

「ふぅ」

 ちょっと焦ったけどこれでよし。

 今度こそゆっくりと物色させてもらお

「ギシャアアア゛」

「ほぎゃああ!?」 ドンッ!

「ぎゃっ」 ジュッ


 頭だけのゾンビたちが急に叫びながら威嚇してきたんだけど!?

 おかげでおもわず火炎球ファイアーボールを放ってしまった。

 おいなんなんだよビビらすなよ!

 しかもそのせいで駐車場に大きな穴と焦げ跡までつけてしまったじゃないか……これ、あとでコンビニ側に訴えられたりしないよな?


 それにしても……ゾンビって首だけでも生きてるんだな……いや元々死んでるんだけどさ。やっぱりゾンビもののセオリー通りに脳を破壊しないといけないのかな。

 危ない危ない……以後気をつけなければ。





「じゃ、あらためて失礼しまーす」


 俺は従業員専用扉を開けて中に入った。

 扉の向こうは狭い通路状の部屋となっており、暗く血生臭かった。この臭いはゾンビが大勢詰まっていたせいもあるんだろうな。

「おっ」

 しかし思った通りだ。棚にはまだ品出し前の商品が入ったケースがたくさん置かれたままだった。

 俺はさっそく手前のケースに手を伸ばす。

「む。中身は日用品か……こっちは? お、クッキーだ! やったぜ!」

 見たところどのケースも手付かずのまま残っている。俺は片っ端からそれらをリュックの中へしまい込んだ。そのせいかすぐにリュックは一杯になる。


「うーんまずいな、もっと鞄持ってくりゃ良かったか……」

 持てない分はあとでまた来るか……

 今さら誰かにとられるってことはさすがにないだろうし。

 俺はまだまだ商品が詰め込まれたままのケースをひとつ持ち上げる。あーあ、こんな時ゲームみたいにアイテムボックスとか使えればなあ……



 シュンッ



 持っていたケースが消えた。


「ファ――ッ!?」



【収納魔法を獲得しました】



「まじで!?」


 アイテムボックスも使えるの!?

 おいおいどんだけ有能なんだよ……俺! いや俺の異能力チートか。まあいいや。

 とにかくこれはかなりありがたい能力だぞ。

 アイテムボックスがあれば持ちきれない物資もしまっておくことができるはずだ。


「そうとなれば……収納!」


 触れていた商品が消える。よし、成功したようだ。そのまま続いて棚に残っている他のケースも片っ端からアイテムボックスへ入れていった。もしかすると収納できる量にも制限があるかもと思ったが、ここにある分はすべてなんなく収納できた。



「にしても、先にコンビニにきた人はマジで誰もここからは持っていかなかったみたいだな」


 おかげで助かったけど。

 まああれだけゾンビ店員が詰まってりゃな。見なかったふりしてそそくさ退散するだろう。


「……ん?」

 いやまてよ? そもそもなんでゾンビ店員たちはまとまってこの場所にいたんだ?

 ゾンビってつねに徘徊してるものじゃないの? 一箇所に留まっている理由なんて、生存者を見つけた時くらいしか……


「……まさか」


 今いる通路のさらに先を見ると

 あ。

 もうひとつ、そこには扉があった。

 おそらくだが休憩室か、事務所だろう。

 俺はおそるおそるその扉の前に近づき、コンコンと数回ノックしてみた。


 だが中からの反応はない。


「……あ、あのー」


 声もかけてみる。


「だれか、いるんですか?」


 反応はない。もう一度ノックしてみる。


「あのー」





「助けに……来て、くれたんですか?」



 中から、女性のか細い声が聞こえた。

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