第4話 地道に異能力を確認してみる。

「はあー……」

 脳内万能型先生とステータス確認がてきないとはな。期待してただけに地味にショックだ。

 それができないとなると、自分でひとつひとつ調べていかないといけないわけだし……面倒だけど仕方ないな。俺は机からノートを取り出し、とりあえずそこに火、水、風と書いていく。これが現時点で使えるとわかっている異能力だが……こういうのってなんだっけ。ああそうだ、脳内先生が属性魔法とか言っていたな。

 となると、他の属性も試してみるべきだよな。

「属性魔法、属性魔法と……」

 ネットで検索するとすぐに『火、水、氷、雷、土、風、光、闇』というのが出た。


「よし、まずは氷からだな」

 俺は両掌に意識を集中させる。


「氷……氷……」


 ボシュンッ!!!


「出た!」

 やはり火や水同様、掌から氷柱のようなものが飛び出す。



【氷属性を獲得しました】



「せ、先生ェ!」

 やっぱり事後じゃないと教えてくれないんすね!? これはあれだ。万能おしゃべり先生というよりはゲーム中にある一定の条件を満たした時に画面の上の方でピローンと出る◯◯のトロフィーを獲得しましたってやつだな。


「……あ、そうだ。これをもっと、こう……」

 さらに意識を集中し、頭の中に鮮明なイメージを作り上げる。するとただの氷柱は氷の剣へと変形していった。

「か、かっけえ……でも冷てえ!」

 持ち手も氷なのが難点だな。これは要改良だ。


 次に試すのは、雷だな。

 しかし雷か……まさか感電とかしないよな?

 念のためパソコン機材から少し離れて、再び意識を集中させる。イメージは、そうだな。うん。


 指先から放つ電撃波だ!


 バギャンッ!!!!


「ファッ!?」

 そう思った途端に勢いよく放たれた電撃は、またもや窓を突き破って向かいの家の屋根を木っ端微塵に破壊。そのまま空へと消えていった。

 俺はぽかんと大口を開けたまま破壊された屋根を見つめ

「いやいやいやいやいや!」

 威力と速さやばすぎんだろ!?



【雷属性を獲得しました】



 うるせー!

 もはや電撃波というよりはデスビームじゃねえか! だ、だめだ。これも要改良だ。こんなのホイホイ撃ってたら周りも巻き込みかねんからな……。

 俺はまたもや壊れた窓を修復し、次の魔法を試す。

 次は土だけど……どうしような。このままだとアパートごと土砂崩れで潰れるとかありそうで怖いんだけど。

 俺はおそるおそる身構え


「土、こい!」


 足元にドサリと砂の山が現れた。それは公園の砂場とかでよく見るやつだった。

「いや威力の差が極端すぎんだろ!?」



【土属性を獲得しました】



「ええ……」

 いいの? 先生これでいいの?

 身構えちゃった俺馬鹿みたいじゃん。まあでもこれはこれで使い道次第ってことか……要改良だな。

 あと残るは光と闇か……しかしまいった。これはどう試せばいいのだろうか。そもそもイメージがうまく浮かばない。

「そもそも光と闇ってどう使うんだ?」

 しまったな……これでもある程度の漫画やアニメは観てきたが如何せん知識がない。あれかな? めっちゃ輝くとかかな……。

 こういう時こそ脳内万能おしゃべり先生がいればなあーいーなあー万能おしゃべり先生がいる異世界ものの主人公いいなー


「……保留にしとくか」

 とりあえず今はいいか。後々でいろいろ試していけばいい。

 光と闇の属性魔法はとりあえず後回しだ。さて、俺が使えるのは火、水、風、氷、雷、土。それと窓を直したような修復か。うん、今はこれくらいで大丈夫だろう。あとは威力の調整とMP消費さえ気をつけさえすれば。

 俺はチラリと外を見る。


「…………行ってみるか」


 食料調達。


 異能力チートに覚醒した今なら、ゾンビがいようがおかまいなしに行けるはずだ。

 しかしいざ行くと決めると怖気付いてしまうのがヘタレのサガである。

「大丈夫……大丈夫だ」

 俺は何度も深呼吸し、自分に言い聞かせた。

「あ、そうだ」

 せっかくだからとスレを開き


「今からコンビニまで食料調達に行ってくる」


 そう書き込んでみる。

 なんというかあれだ。いってきますの挨拶がわりみたいなものだ。うん。

 すると返事はすぐについた。


『おいマジかよ、死ぬぞ』


『実況しろよ』


「じ、実況!? いやいやいや」

 さすがにそこまでお気楽できるわけないだろ! 遠足じゃないんだぞ!?


『武器はあるのか? 防具は?』


「防具?」

 あ、そうか。

 異能力チートという攻撃手段はあるが、たしかに防御に関して完全に抜けていた。 あ、危ねえ!

 いくらパワー最強でも本体が紙耐久なら意味がない。

 そういえば今の俺の服装半袖シャツにパンツだったわ……油断しすぎだろ、俺。


『せめて噛まれても身体まで貫通しにくそうな服装で行け』


「そ、そうだな…」

 何かあったかと部屋を見渡し、あった。厚めのアウターコートだ。これでいいか。

 さて、それじゃあさっそく向かうとしよう!

 あ、そうだ。


「ちなみにおすすめの武器とかある?」


『はよ行けや!』


『死ね』


『帰ってくんなカス』


「……………」


 俺はそっとスレを閉じた。

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