第46話、ドリームキャスト対応タイトル「プロジェクト・バークレイ」が明らかにされワンダースワンが発表されたれぱんだが人気となり『ジェネレイターガウル』が始まる

【平成10年(1998年)10月の巻】


 歴史の上ではすでに結論が出てしまっている話ですが、この時期、いよいよセガ・エンタープライゼスの巻き返しが始まるか、といった期待が膨らんでいました。もちろん11月27日へと1週間、発売が延期になって発売される家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」への期待です。ほぼ1カ月後に発売を控えた平成10年(1998年)10月6日、対応ソフトの発表会が高輪プリンスホテルで開かれました。


 まず大川功CSK会長が登壇し、入交昭一郎社長が本体希望小売価格2万9800円ほかを発表するプレゼンテーションへと続き、周辺機器の発表、ソフトのラインアップ紹介と流れ、サードパーティーからカプコンは岡本吉起常務によるゾンビが出るゲームの発表へとなだれ込んでと、およそ1時間は経過したにも関わらず、いっこうに終わる雰囲気が見えてきませんでした。


 その間、「重量感のおよそ感じられないゴジラメカゴジラ初代ゴジラにミニラの、まるでペーパーモデルのよーな街を蹂躙する様がバカゲーっぽくって楽しい『ゴジラジェネレーション』とか、ムービーシーンはもー天下一品なのに、格闘シーンに入るとアーケード並にしか見えない(それだけでも凄いんだけど)『ヴァーチャファイター3tb』とか、同じくアーケード並だけど、ネットワークを会した通信回線はちょっと面白いかもな『セガラリー2』」の発表があったそうです。評価厳しめですね。


 他にも『ソニックアドベンチャー』や『ペンペントライアイスロン』といったタイトルの発表が行われた後、あのAM2研の鈴木裕が登壇し、開発コード「プロジェクト・バークレイ」なるタイトルの発表が行われました。ジャンルとしてはどうやらRPGらしいということ、そして『バーチャファイター』の開発者だけに格闘シーンもそれなりの仕組みが作られることが語られたそうです。いったい何のゲームだったのか? おわかりですね、『シェンムー』です。


 ここから1年余を経て世に問われることになる『シェンムー』ですが、恐ろしく自由度の高い内容を作り出すのに掛けた費用は50億円以上とのこと。続編でさらに20億円を費やしながらも完結せず、今も作り続けられているというゲーム界のサグラダファミリアのようなタイトルが、この世界に示された瞬間でした。その割にはあまり興奮はしませんでした。何が凄いかまだ分からなかったからでしょう。


 発表を受け、ドリームキャストについてこう書いています。「総括すれば2万9800円という価格は大人的にはオッケーで、通信機能もはじめからついてインターネットの接続も超簡単で来年には『WebTV』も利用できるようになるとあっては、アピールする層を広げればきっと引っかかって来る人たちがいるだろうね。量産効果が出てくれば、入交さんも言っていたけど10%から15%くらいの価格圧縮の可能性もあるみたいだし、ソフトが充実してミリオンが出るかな、どうかなってな時期になればさらなる需要を呼び込むだろうね」。前向きです。


 「年内に100万台の大台に乗せられれば、世紀末のセガは救世主伝説を刻むことが出来ないこともなさそうですね」とも。ところが、部品の供給遅れから生産が間に合わず、管掌的には無関係の湯川専務を常務に降格させるという話題作りを行っても、躓きは取り戻せないまま平成13年(2001年)、セガは家庭用ゲーム機からの撤退を発表します。どこで何を踏み間違ったのでしょう。


 湯川専務を使ったプロモーションはも、ゲームとは無縁の大人たちに存在を知らしめる意味はありました。けれども大人がゲーム機を買う訳ではありません。そこの部分で掛け違えたボタンが、最後まで知られながらも売れていかないゲーム機に「ドリームキャスト」をしてしまったのかもしれません。マーケティングと製品開発の関係を示す事例として、改めて検証してみると面白いかもしれません。


 この月には、あの「ワンダースワン」の発表会も行われました。バンダイが任天堂の「ゲームボーイ」に負けじと送り出した携帯型ゲーム機で、ゲームボーイを手がけた故・横井軍平の遺志を引き継ぐものとして開発されました。16ビットCPUに大きめのモノクロ液晶で価格は4800円。ソフトの方はと言えばバンダイだけではなく、ナムコにタイトーにアスミック・エースにコーエーにコトにコナミにサミーと、結構なところが並んでいました。


 発売時には10本のソフト、2000年3月末には100本のソフトがそろい踏みする、といった話になっていましたが、こちらも歴史の上でひとつの結果が出てしまいました。ただ、単3電池を1本入れれば何十時間も遊んでいられる携帯性は、今考えてもなかなの優れものだったと思います。映画『ヱヴァンゲリヲンエヴァンゲリオン新劇場版:破』でアスカがプレイしていたことで、世に改めて存在が知られました。あの独特の起動音をまた聞いてみたいものです。


 この頃、「たれぱんだ」というキャラクターに興味を抱きました。見かけたのは7月頭に東京ビッグサイトで開かれた文房具の見本市で、場所はサンエックスというキャラクターを展開している会社のブースでした。ぬいぐるみが少しと、あとは様々なポーズをとった「たれぱんだ」のイラストが描かれたメモ帳やノートや鉛筆が並べられていました。


 そして8月に入って、地下鉄丸の内線の銀座駅から帝国ホテルへと抜ける地下道に「たれぱんだはじめました」の張り紙が出て、秋になって新宿駅そばのゲームセンターで、女子が「UFOキャッチャー」で取ろうとしている姿をみかけて、「たれぱんだ」が流行って来ているんだということを実感しました。登場自体は平成7年(1995年)と言いますから少し前のことですが、外見をブラッシュアップしてアイテムも増やしてきたことで、この時期にようやくブレイクポイントが来たみたいです。


 とはいえ、メディアとかで本格的にとりあげられるのは次の年になってから。その意味では割とトレンドを先取りしていた感じです。流行りそうなものに対してそれなりの察知能力を発揮し、いち早く取りあげたりするのですが、所属媒体が弱小で影響力を発揮できないまま、やがて大きなメディアの紹介によってブームが作られるという憂き目を、ここでも味わいこれ以降も散々味わうことになるのです。声を出さずに泣いています。


 テレビアニメでは『ジェネレイターガウル』に興味を持ったようです。第1話を見て、ヒロインらしい女の子がいきなり頭にお茶っ葉の筒を乗せていて驚きました。もちろん茶筒などではなく髪飾りだったのですが、ときどき煙を噴いていたから作り手にも遊んでやろうという意識を持たせるアイテムではありました。


 お話自体は未来か異世界か外国かどこかから来た救援者が陰謀に挑み戦うという設定で、頭に茶筒を乗せた女子のバイト先で一悶着起こしてやれやれといった展開から、学園ドラマとなって敵とのバトルが繰り広げられていく、といった予想を立てましたが、アニメ自体はそうした印象を吹き飛ばすように進展し、時空が絡んで壮大な展開を見せるものへとなりました。タツノコ史上に残るSFアニメだったと断言できます。


 そうした設定に加え、ガウルたちによるアクションの凄まじさも話題になったこの『ジェネレイターガウル』が、『機動戦士ガンダム00』の水島精二監督にとっての監督デビュー作であるにも関わらずなかなか評判にならないのは寂しいところ。Blu-rayディスクにならないのも納得がいきません。DVDもボックスが出て以降、パッケージが店頭から消えているのも残念です。ぜひ復活を。そう願ってタツノコプロの偉い人にも訴えましたが、未だかなわないところを見ると、どこかに闇の勢力がいてパッケージ化を妨害でもしているのかもしれません。いったい誰が? 気になります。


 もう1本、『ガサラキ』というアニメも始まったようです。『太陽の牙ダグラム』や『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔監督による最新作で、「ロボットは『ガンダム』に代表される美麗なヒーローの象徴ではなく、『ダグラム』『ボトムズ』と同じく兵器であり、また設定を動かすための道具としての存在に過ぎず、むしろ登場人物たちの背景なりドラマでお話が進められて行きそうな予感を持」ったようです。おおむねそうした展開だったのですが、帰結についてはちょっと予想ができませんでした。


 この『ガサラキ』では主題歌が種ともこだったことに驚きました。「10円でごめんね」を歌っていたシンガーソングライターで、学生時代にアルバムを借りて良く聴いていました。ポップなシンガーだったのが、『ガサラキ』のオープニングでは能楽というかエキゾチックでエスニックな雰囲気の歌を唄っていました。不思議な声と旋律は『ガサラキ』らしいと言えば言えましたが、どうして起用されたのか、そこはやっぱり不思議でしたし今も気になっています。


  コーエーに川澄綾子が来たそうです。「インターネット・ミュージック・コンテスト」という、ゲームのBGMをインターネットを通じて募集した企画の発表会にゲストとして招かれていたようです。今でこそ音楽をネットにアップして評価を仰ぐことは普通ですが、早い時代にネットを使ってコンテストをしていたコーエーの先見性には目を見張ります。受賞作が何で作曲者がその後どうなったかは不明ですが、今も活躍してくれていたら嬉しいですね。


平成10年(1998年)10月のダイジェストでした。

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