第26話、「週刊アスキー」(初代)が消えつつ後継が企まれ「闇のエコエコ大祭」で太ももナイフの秘密が明かされ『タイタニック』特殊効果のロブ・レガートが感性を育めと諭す

【平成9年(1997年)9月の巻】


 スクープ、だったのでしょうか。


 ニフティのオタアミ会議室で岡田斗司夫が、週刊誌の連載が終わって10月からヒマになる、けれども雑誌は休刊にならずに、かねてから週刊化の噂のあった某隔週誌が題字を引き継ぎツジツマを会わせると書いていて、それが創刊されて4カ月経ったかどうかの「週刊アスキー」のことではないかと感づいたようでした。


 いろいろと試行錯誤をし、パソコン系の記事も増やしてアスキーとの親和性を図ろうとはしていたみたいですが、アスキーの経営にとってやはり売れない週刊誌は負担だったということでしょう。ただ、そのツジツマ合わせのために隔週誌を「週刊アスキー」に改題するのは、その隔週誌のファンに失礼ではないか、といった思いを抱いたようです。


 だったら「月刊アスキー」を一気に週刊化すれば良いと、これまた無茶なことを言っていますが、結果として「週刊アスキー」は10月6日号で休刊となり、それからわずかに2カ月後、「EYE-COM」を改題することで「週刊アスキー」が立ち上がりました。結果、何が起こったかというと「週刊アスキー」にしばらく何かを書くことになってしまったのです。


 この月、「まもなく週刊になる(けど誌名がかわる)某誌に記事を書いている人たちの集まりみたいなもの」に出席して、執筆陣のお顔をいろいろと拝見しました。わたしもそんな1人だったのです。会合では『るんるんカンパニー』でハマりギャグからシュールから伝奇まで、あらゆる作品に興味を持ったマンガ家のとり・みきや、川崎市民ミュージアムでもお見かけした怪獣絵師の開田裕治と開田あやのご夫妻、マンガ家の唐沢なをきとライターの唐沢よしこご夫妻ら、ポップカルチャーでも濃い部分にいる方々の姿を拝見しました。


 そうした面々に混じり、末席で新生「週刊アスキー」に何かを書いていたようですが、やがてコーナーも終わって何を書いていたかも覚えていない状況に。掘り返せば当時の文章も出てくるのでしょうけれど、きっとこの日記を大差ない繰り言をぶちまけていただけではないでしょうか。人気が出れば独立だってしてライターなりになっていたはずですから。ある意味でチャンスを逃すのはいつものこと。20余年が経っていろいろ悔やむこと、しきりです。


 『闇のエコエコ大祭』に行きました。神戸連続児童殺傷事件の影響で放送が中止になったドラマ『エコエコアザラク』の未放映部分を一挙に上映するといったイベントで、キネマ旬報経由で当たったらしい招待状を握りしめ、徳間ホールで第19話以降、第26話までの一挙上映を見ました。体力的にキツかったかもしれません。それでも、前週の石丸電器でのイベントに続いて黒井ミサを演じている佐伯日菜子様のご光臨、黒井アンリという妹にしてライバルを演じた今村理恵の登場に心も晴れて、エコエコな闇にどっぷりと浸りました。晴れてないじゃん。そういうものです。


 未公開だったエピソードはとにかく凄かったです。「終幕に向けて1歩1歩刻まれていく黒井ミサの哀しい運命は、見ているものの胸をかきむしる。引き裂く。ミサの家族の秘密が明かとなり、妹である黒井アンリとの悲劇に満ちた邂逅を経て、エンディング、雑踏へと消える黒井ミサの姿がスクリーンから消えた時、会場から拍手が沸き起こったのも至極当然の成りゆきと言えるだろう。キャストに、そしてスタッフに、さらには遅い時間の放映で、かつ途中で中段という憂き目にあいながらも応援し続けたファンたちに、今はただ『ありがとう』というより他はない」。


 絶賛です。この気持は今も変わりませんが、手元にLD-BOXしかなくすぐに見られないのが残念なところ。Blu-rayボックス化はないのでしょうか。25周年あたりで是非、企画されて欲しいものです。


 イベントでは、ブラウン・シュガーというソロアーティストが登場して歌い、2人の女優に監督連と脚本家を交えたトークも行われました。ボケをかます佐伯日菜子にひたすらトークから逃げる監督連と会場は笑いの渦に包まれました。シリーズ途中から加わった、太ももからナイフを取り出すシチュエーションが、パワーアップのために加わったという、マンガ原作を主な仕事にしている梶研吾の熱意の賜だったことが明かされました。改めて感謝します。梶さんありがとう。


 今をときめくアニプレックスの源流となるSPE・ビジュアルワークスが手がけた『はれときどきぶた』は着実に人気を得ていたようです。白川隆三社長を尋ねてテレビ東京をしてゴールデンタイムで8%の視聴率を上げたと聞きました。とてつもない! けれどもあまり喜んでいないように感じたのは、当時はまだ10%くらいがヒットの分かれ目だったからなのもしれません。小学館の学年締への展開が「小学三年生」から「六年生」までに広がったといった記述もあります。流行ってたんですねえ。その頃の小学生が今は30代ですか。アニプレックスに入って『はれぶた』復活プロジェクトを推進してくれていると良いのですが。


 いろいろなアニメを見ていたようです。ビデオを1本1000円で買ったOVA『イ・リ・ア』全6巻は、雨宮慶太の実写映画『ゼイラム』からスタートしたメディアミックス展開のアニメバージョンだそうで、『ゼイラム』を知らなくても大丈夫かと思いましたが、それほど苦労はせず、また作画や演出のクオリティは流石に当時のOVAだけあってしっかりしたものだったようです。


 こちらも中古ビデオで『アミテージ・ザ・サード』を見たようです。英語版でしょうか。「走ったり歩いたりする動きがなんとも自分の感覚とあわず、色も全体に平板な感じがしてちょっち入り込めなかった」といった感想を書いていますが、今の時点で妙にこの作品に好感を抱いているのは、エンディングにかけて繰り出される壮絶なバトルと、そこでかかる難波弘之の音楽に惹かれていたりするからなのかもしれません。サントラは傑作です。今も聞けるのかな。


 国分寺でプロダクションI.G.を取材していたようです。相手は石川光久社長でしょうか。「一癖も二癖もある職人気質なクリエーター集団で知られる会社だけに、代表の人もきっとゴッツい硬派な性格の持ち主かと思いきや、どちらかというと線の細い文学系な、訥々と喋る人だったので驚いた」とありましが、なかなどうして、この業界で長く会社を経営し続けている人ですから性格的に豪腕で、そして厳しさも持っているのでしょう。


 「サークル運営じゃなくってちゃんとした『会社経営』に当たっているとの印象を持った」とは、その時点でも10年は会社を経営して来た人に失礼な物言いでした。今も新しいことをどんどんと始めている印象。でもやっぱり押井守にあと1本、長編アニメーションを作らせてあげて下さいな。


 ほかでは、リチャード・エドランドが来るということで「ワールドPC・エキスポ」に行ったら、講師がILMのエリック・ブレビッグに代わっていたという経験をしたようです。エドランドの会社「ボスフィルムスタジオ」が8月末に潰れて、それで「ハリウッドで成功するには」は喋れませんから仕方ありません。一方で、代役に立ったエリック・ブレビッグは、アメリカで大ヒットしていた『メン・イン・ブラック』の特撮監督で、聞いた話には観客も大喜びしていたようです。


 「基本は実写とCGの組み合わせで、それをテクスチャー、ライティング等々でいかに違和感なく仕上げるかってところに腐心しているみたい」「フォードがガチャガチャっとなってドバーッといく場面なんか、何重もの映像を組み合わせて作っていて、それがあの迫力とリアル感を醸し出している」といった感想がウェブ日記に上がっています。


 もうひとり、デジタルドメインの特撮監督、ロブ・レガートが登壇して、日本では初めての披露となる超話題作『「タイタニック』の長めの予告映像を見せてくれました。「役者が必要でなくなる日がくる、それもごくごく近い日にくるとゆー確信が得られた」と書き、「遠景でタイタニック号を俯瞰した場面で、甲板なんかを歩いている人たちは本当に全員がモーションキャプチャーで動きを取り込んで作られたCGらしい」と書いてあります。今でこそ普通のことをやってのけたロブ・レガートは、これでアカデミー賞の視覚効果賞を受賞しました。


 公演の印象として、ハリウッドでスペシャルエフェクトで活躍するためには、ただ技術だけを磨くのではなく、アーティストとしての感性を磨いて欲しいと2人とも強調していたことに触れて言います。技術はあって当たり前。それを使って監督や撮影監督の意図を映像として表現できる感性をもっていることが、仕事を得る上で重要な要素になっているということです。


 「誰でもカメラは持っているけれど、プロが撮る絵はやっぱり違うのと同じこと」とブレビッグ。この言葉を受けて、日本ではまだ技術が重んじられていたCG会社の募集をちょっとだけディスってしまいました。今は違うでしょう。感性も抜群な人たちがCGを駆使して素晴らしい映像を送り出しています。ここにNetflixのようなワールドワイドのお金が乗れば鬼に金棒? 期待したくなります。


平成9年(1997年)9月のダイジェストでした。

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