第17話、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が公開されシンジは放ち快傑のーてんきに驚喜した

【平成9年(1997年)3月の巻・上】


 エヴァ一色の月でした。平成9年(1997年)3月15日に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が公開されたのです。すでにテレビシリーズの総集編ではない新作部分が途中までした上映されないという話は広まっていましたが、それで臆するファンではなかったようで、上映初日からどこもかしこも観客で埋まっていました。


 朝の5時が集合時間だった歌舞伎町での舞台挨拶は交通機関がないから無理と諦め、午前11時からだった渋谷東急での舞台挨拶を取材しましたが、階段は劇場のある5階から1階まで人の列でびっしり。「今日に限って入れ替え制を導入しているよーで」とウェブ日記に書いてあるのは、当時もまだ映画館には、今のような完全入れ替え制ではなく、1回入ったらずっといられるところもあったことを示しています。


 入った会場も人でびっしりの状況で、通路にも、そして座席の後ろにも立ち見の人垣が出来ていました。舞台挨拶は歌舞伎町から林原めぐみが抜けて、緒方恵美、三石琴乃、宮村優子、長沢美樹が参加していたようですが、人気があったのは「みやむー」で、しゃべると拍手、閉じるとかけ声、なにをやっても反応する観客に唖然としたようです。


 舞台挨拶の後、東映の人から初日の状況の説明があって、営業部長が「3億いけばよかったと思っていたけど、夕べの様子を見て甲(かぶと)を脱いだ」と話していました。難解な上に中途半端。それでどれだけ来るか不安に思って当然ですが、結果は18億円を超えました。それが当時のエヴァの威力だったのです。


 角川歴彦社長は製作者代表としていの一番に挨拶に立って、「大きな障害を乗り越えて、今日ここまでこれました。それだけに嬉しい」と話していました。挨拶をさせていただいた角川社長は、「見たか、どうだ」といった具合に自信たっぷり。「新しい謎がまた増えているだろう」とも話して、その解決を求めて夏の興行にも、たくさんの観客が集まることを確信している口振りでした。これも結果は25億円近い大ヒット。謎以上にオタクへの手厳しさが漂うエンディングの評判もあったのでしょうか。


 エヴァは社会現象になっていました。東京新聞が記事にして、オタキングこと岡田斗司夫が「エヴァはオタク層が喜ぶように作られた作品。一般の人にブームが広がったのではなく、水面下で知らない間にオタクが増えていた」といったコメントをしていました。「日本にはコア層で600万人、潜在層で少なくとも2400万人のオタクがいると考えられ、この人たちが一番購買力がある。今はオタクをターゲットにすることが一番お金がとれる」とも話していました。


 そんな指摘を状況を感じとって、所属していた工業新聞で、紙面改革の際に「オタク面を作って漫画とアニメとゲームの記事で埋め尽くして、企業のとっちゃんたちにオタクビジネスってこんなに幅広くてこんなに関心が高くてこんなに儲かってるんですと教えてやりましょーよ。研究所とかに務めてるオタクなエンジニアたちにも受けるから」と提案して苦笑された、とウェブ日記に書いてあります。


 流石にそのような面は出来ませんでしたが、これだけコンテンツパワーが叫ばれる状況を見るにつけ、もっと積極的に展開していれば、それは所属していた工業新聞に限らず親会社の全国紙でもマンパワーを割いて力を入れておけば、媒体的にもわたし個人的にも、今のような状況はなかったかもしれません。はっきり言って悔しいですが、やっぱり言って後の祭り。泣きたいです。


 岡田斗司夫には実は、『新世紀エヴァンゲリオン シト新生』の試写でお目にかかっていました。午前10時の開演の30分前に到着したらすでに長蛇の列。50席ほどある座席は満杯で、通路に用意された補助椅子で見ました。試写室で立ち見という人もいたようですから、どれだけ注目を集めていたかが分かります。ちなみに少し前に同じ部屋で見た、某エルカンターレ様原作のアニメは3人でした。

 

 そんな試写に岡田斗司夫も参加していました。始まった映画は、スクリーン中央にでーんと広がる「映倫」のマークに挑戦的な印象を覚えました。後ろの方からがどははははといった笑い声も出たようです。「庵野良し!」といったところでしょうか。ところが、総集編と言われた「デス」部分が流れると、いきなりの新作シーンのオンパレードに、場内はしーんと静まり返って、そのまま一気にラストまで突っ走りました。


 セカンド・インパクトが起こった経緯だとかが描写されていたり、ロンギヌスの槍がささっていた意味が明らかにされたり。数多くの新しい情報が盛り込まれていて混乱しました。これは制作も遅れるはずです。なおかつ物語は解決されていません。そこは「リバース」部分にお任せですが、程なくして「続劇」の文字とともに始まった「リバース」は、TVシリーズの印象をすべて破壊する恐るべき展開の速射砲で、固唾を呑んで見守っていた観衆の度肝を、抜いて抜いて抜きまくったままひとまずの終幕を迎えました。


 「ついでにシンジも抜きまくったのはご愛敬としても、これ以上は難しくてとちょっと説明ができない。今はとにかく劇場で見て、そして判断してくれとしか言えない。1言だけ言わせてもらえるのなら、シンジくん、僕なら顔に出す」。当時のウェブ日記からです。衝撃的でした(笑い)。


 そんな「リバース」が終わり、エレベーターで岡田斗司夫と乗り合わせたので挨拶をさせていただきました。最近「ジャパニメーション」に関する記事を書いたんですけど、岡田さん昔から「ジャパニメーション」なんて誰も言ってないっておっしゃってましたね、それ本当ですか、と聞いたら岡田さん、初対面であるにも関わらず、数分間だけだったけど、「ジャパニメーション」という言葉を使いたがる勢力のこととか、なぜそれに村上隆が異論を差し挟まないかといった理由などを説明してくれました。1対1で話したのはそれが最初で最後だったか。今も一線で活躍し続けているバイタリティは見習いたいところです。


 この月は、3月3日にキングレコードのスターチャイルドレーベルが15周年を迎えたことを記念した謝恩会が開かれ、のぞいてきました。記念に「エヴァ」と「機動戦艦ナデシコ」の非売品テレホンカードをもらったようです。いっしょにもらった資料には、現在絶賛放映中の「機動戦艦ナデシコ」や、春から始まるTVシリーズの「スレイヤーズTRY」と「少女革命ウテナ」、OVAの「VS騎士ラムネ&40」や「宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」「ジャングルDEいこう」といった作品の簡単な設定とCD、ビデオ等の展開予定が書いてありました。DVDはまだありません。


 「少女革命ウテナ」については、「宝塚舞台のようなロマンの魅力を全面に押し出したアニメ作品」と言われていただけあって、登場するキャラクターが美男美女ばかりと感じたようです。それを「美少女戦士セーラームーンR」の幾原邦彦監督がどう動かすのか、「否が応でも期待は膨らむ」と書きました。その期待はとてつもない方向で裏切られつつ引っ張られ、爆発させられました。さすがは幾原監督。今は最新作「さらざんまい」に期待です。


 アトラクションでスターチャイルドが誇る声優&歌手による歌があったようです。まず『機動戦艦ナデシコ』の主題歌など2曲を松澤由美が唄い、それからスターチャイルド最大のアイドル、林原めぐみが登場して、オリジナルアルバムから1曲、スローバラードを唄ってくれました。もしかしたらわたしが林原めぐみの生歌を聴いたのは、これが最初で最後かもしれません。コンサート、行ってみたいです。


 渋谷の「ON AIR EAST」(今のShibuya O-EAST)でドリーム・トレイン・インターネット(DTI)の記者発表があるというので行きました。通信カラオケサービスを始めるというものがひとつで、もう1つが、4月3日から毎週木曜午後22時-24時の2時間にわたって、インターネットで「マッコウ・春菜のまるみえねっと」という生番組を放送するというもの。司会を務めたドン・マッコウと声優の池澤春菜に向かう声援に、人気の人なんだなあと思ったようです。実は池澤春菜には文化放送で会っていたことをすっかり忘れています。


 この番組にはガイナックスが協力することになっていて、イベントには取締役統括本部長の武田康廣が出席すると聞いていたのですが、司会に呼ばれて登場したのは「快傑のーてんき」でした。黄色いヘルメットにピンクのスーツ、胸(ハラか)には大きくマルに「の」の字。スクリーンから世界中の女に惚れるなと呼びかけて喝采を浴びた、80年代を代表する変身ヒーローを生で見られて驚喜しました。横に宮村優子がいたにも関わらずです。それだけSF者の憧れでしたから、ガイナックスであり武田康廣であり岡田斗司夫であり関西芸人は。10代ですり込まれたSF者の、そしてオタクの業は深い。そのことを強く感じさせられました。


 エヴァが絡むと情報量が増えますから、この月も上下に分けます。


平成9年(1997年)3月のダイジェスト・上編でした。

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